ESG不動産投資
書籍内容
収益不動産は、ESG評価で選ぶ時代!
Environment(環境)、Social(社会)、Governance(統治)の観点から評価する
「ESG不動産投資」。
収益性、融資、資産価値などでメリットのあるESG不動産投資について解説した初の書籍!
長期的に資産価値を保つために、不動産にもESGによる評価が導入され出しています。
すでに株式投資においては、PL(損益計算書)やBS(貸借対照表)といった
財務情報だけでなく、企業経営におけるサステナビリティ(持続可能性)に着目する機運が
高まり、気候変動などを踏まえた長期的なリスクマネジメントや新たな収益機会創出への
チャレンジを評価するためE(環境)・S(社会)・G(統治)に着目した
「ESG投資」が当たり前となっています。
E(環境)では、二酸化炭素の排出量や廃棄物をどう削減するか、
大気や水の汚染対策をどうするか、原材料やエネルギーなど資源の利用方法、生物多様性への配慮などが
あげられます。
S(社会)はかなり広い概念であり、地域コミュニティからグローバルまで
さまざまなテーマがあります。
最近では、コロナ感染症対策や「人的資本経営」などが当てはまります。
G(統治)は、直接的には企業経営におけるコンプライアンス(法令遵守)や
情報公開のことです。「ESG不動産投資」とは、こうした「ESG投資」の考え方を
不動産投資の分野に適用したものです。
不動産投資においてもこれまでは、インカムゲインやキャピタルゲインというリターンを
いかに最大化するかが重要視されてきました。
しかし、近年は20年後、30年後も安定して収益を上げ、市場価値が維持される物件を
どのように選べばよいのかについて考えたときに、
E(環境)・S(社会)・G(統治)の視点が重要になると考えられているのです。
こうした動きはすでに金融機関で、融資の際の重要な評価ポイントの一つになりつつあります。
不動産投資におけるE(環境)では、建物の省エネ性がまず挙げられます。
省エネ性の高い建物は二酸化炭素の排出を抑えるだけでなく、居住環境、執務環境としても
優れています。
不動産投資におけるS(社会)では、地域コミュニティとの関わりが重要です。
例えば地域の景観への配慮や地域の伝統文化との関わりが考えられます。
不動産投資におけるG(統治)では、法令遵守は当然のこととして、
顧客をはじめ関係者への説明責任が問われます。
こうした取り組みを意識することで不確実性の高まるこれからの時代において、
不動産投資で長期的に安定したリターンを確保できるのです。
著者は京都を中心に、ワンルームマンションなどの投資用不動産を開発している
デベロッパーです。京都エリアではワンルームマンションの供給数トップを
長年維持しています。
京都は1000年以上の歴史を持つ日本の古都であり歴史の宝庫です。
また、日本一厳しい景観保護のための建築規制があります。
さらに、世界全体で取り組みが進む気候変動対策の原点となったCOP3京都議定書が締結
された環境都市でもあります。
こうした京都で活動する不動産企業として、著者はいちはやくESG不動産投資の意義と
可能性に着目してきました。具体的な物件開発にESGの視点を取り入れるとともに、
個人投資家、仲介不動産会社など関係者にESG不動産投資の重要性を伝えています。
本書はESG不動産投資の入門書となっており、ESG不動産投資とは何かから始まり、
他の不動産投資に比べてどのようなメリット・デメリットがあるのかを解説しています。
ESG不動産投資の重要性と可能性について理解を深め、長期的に安定した資産形成を
実現したい人は必読の一冊です。
目次
はじめに
第1章 一過性のブームでは終わらない
グローバルに広がる「ESG投資」のうねり
1.ESG投資とは何か
2006年の「責任投資原則」がきっかけ
ESG投資とSDGsの関係
2.ESG投資は具体的には何をするのか
ESG投資の企業評価はガバナンス重視
ESGは手段であり目的ではない
ESG投資への批判について
投資や企業経営とESGの両立
第2章 「サステナビリティ」を追求する新たな観点
不動産投資における「E」「S」「G」の定義
1.不動産分野におけるESG投資のあり方
国連の「責任不動産投資戦略」が原点
不動産とESG投資の親和性
環境負荷改善を巡る責任の堂々巡り
2.日本におけるESG不動産投資への取り組み
不動産鑑定評価もESGを考慮する方向に
住宅ではZEH(ゼッチ)がキーワード
3.ESG不動産投資における「E」「S」「G」の意味
不動産分野におけるESG投資の枠組み
ESG不動産投資におけるE(環境)の基準
ESG不動産投資におけるS(社会)の基準
ESG不動産投資におけるG(ガバナンス)の基準
第3章 金融機関の高評価、収益性の確保、環境負荷の軽減……
「ESG」が不動産投資のメリットをさらに高める
1.ESG投資の重要性
「かぼちゃの馬車事件」の教訓
ガバナンスの不備が招いたレオパレスの施工不良問題
相続税対策の落とし穴
限界が見え始めたタワマン投資
家賃保証(サブリース)こそトラブルの温床
高利回りの落とし穴
「1法人1物件方式」による無理な拡大
“イタチごっこ”が続いた消費税還付スキーム
メリットをふさがれた海外不動産の節税効果
2.ほかの投資と比較した不動産投資の特徴
10年、20年を見据えた中長期的な投資
個別性が高くリスクの判断が難しい
不動産貸付業というビジネス
投資金額が大きくレバレッジが前提
これからの不動産投資とESGの関係
社会の変化を先取りする
3.不動産投資は中長期的なスタンスが大前提
人口と世帯数の減少でこれから起こること
4.新築住宅の省エネ性はZEHが当たり前に
2050年カーボンニュートラルを目指して
「旧耐震」「新耐震」と同じ流れに
5.注目すべき借り手の意識変化
ESG/SDGsに敏感なZ世代
SDGsと学校教育
より敏感な法人需要
省エネ=お得という新常識
6.金融情勢と金融機関の変化に注意
世界的に急速な物価上昇と金利上昇
金融機関でも進むESG/SDGs対応
7.ESGと将来の賃料収入の予想
目標は長期的に安定したリターン
なぜESG不動産投資は儲かるのか?
8.ESG不動産投資のメリット
関係者それぞれのメリット
第4章 省エネ基準を満たした建物、立地環境との親和性……
ESG不動産投資を成功させるための条件
1.ESGの観点からどのような物件を選べばよいのか?
建物、立地環境、融資の視点
長期スパンの取り組みに有利なRC
新築と中古の違い
2.建物の省エネ性について
これからはZEH基準が常識
「高断熱」「省エネ」「創エネ」が鍵
マンション向けZEHも2018年からスタート
3.立地環境について
地域が有する価値とポテンシャル
都市のSDGs対応
世界レベルの「住みたい街」
大学生の人口比率は全国一
学生以外にも根強い賃貸需要
京都で物件供給数が増えない理由
忘れてはならない都市の成長戦略
不動産投資のカギを握る管理運用
投資家との距離感を大切に
4.ESGに対する金融機関の姿勢
金融分野でもESGが常識に
投資用不動産へのローンで優遇金利も
5.ESG不動産投資の具体的な物件イメージ
「日本」の美をコンセプトとして
【ケース1】歴史を感じさせる壁画 絵師とのコラボレーション
【インタビュー1】絵師 木村英輝氏 人と場との出会い、語らいと
縁から始まる壁画アート
【ケース2】現代的なエリアであえて和風を主張 朱の空間に唐紙アートを展示
【インタビュー2】 「雲母唐長」唐紙師 トトアキヒコ 氏
日本の四季の美と、安らぎの祈りを、唐紙に込めて
【ケース3】木目と和紙の温かみで日本ならではの柔らかい美を演出
【インタビュー3】和紙作家 堀木エリ子 氏
時を経てなお美しい、人の手が継いできた本物の気品を
第5章 投資家の利益を担保し社会貢献を実現する
ESG不動産投資が「当たり前」の時代に──
1.ESG不動産投資のメリットとリスク
短期的にはマイナス面も
2.コストとリスクの分担について
コスト分担の問題
「グリーンリース」の考え方
「グリーンリース料」の特約例
3.「ESG不動産投資」と「インパクト投資」
自己実現としての投資
インパクト不動産投資とは
おわりに