日本酒で“KANPAI” 岩手から海外進出を果たした『南部美人』革新の軌跡
書籍内容
品質一筋の信念が世界を虜にした――
世界最高峰のワインコンテスト
「インターナショナルワインチャレンジ(IWC)2017」で
「世界一の日本酒」の称号を獲得。
老舗酒蔵の五代目蔵元は、いかにして日本酒文化を世界に普及させられたのか。
創業120年、
岩手の老舗酒蔵「南部美人」が
グローバルブランドへと成長するまでの苦悩の軌跡
岩手・二戸の南部美人は、創業120年の歴史を誇る老舗酒蔵。
五代目として蔵元を引き継いだ著者は「世界の南部美人」にしたい
という強い思いを抱き、1990年代後半からほかの酒蔵に先駆けて海外市場へ進出。
当時、海外では中国で製造された酒が日本酒として出回っていたり、
日本で造られた酒があったとしても適切な温度管理がされず
劣化した状態で売られていたりしたことで、
日本酒はおいしくないというイメージをもたれていた。
そのようななかで、海外の文化に合わせて料理との組み合わせ方や飲み方、
管理のポイントなどをプレゼンテーションし、海外の販路開拓を推し進めていく。
本書では、創業120年の老舗酒造がいかにして
世界で勝負できるブランドに成長したのかをつづっている。
グローバルに自社ブランドの確立を目指す人や、
伝統産業の変革を求める人にとって参考となる一冊である。
目次
はじめに
第1章 1902年創業
明治時代から受け継がれてきた「家業」と「伝統」
現在の発展は「伝統」の賜物、「家業」の勝利
二戸の地に南部美人の礎を築く
昭和から平成の厳しい局面を乗り越えてきた
昭和26年、三代目秀雄が「南部美人」と命名
大手との合併話を断ってイバラの道を歩む
山口杜氏から受け継いだ心と技術は大切な宝
久慈家にとって特別な「野球」と「東京農業大学」
四代目の浩が首都圏から全国へと販路を拡大
五代目浩介の転機となったアメリカ留学での出来事
東京の居酒屋で厚遇されて父のすごさを知る
過疎化していく小さな町の明るい希望に!
第2章 1990年代
「品質一筋」で新たな日本酒造りと海外への販路開拓
自分で酒造りをやっていいんだと気づく
自分が正しいと思う酒造りに邁進する
ブレーキ役の父がいたからアクセル全開で進めた
ターニングポイントになった若手への切り替え
新しい麴室で造った酒で2年連続「首席」
自身を成長させてくれた山形での悔しい経験
「日本酒輸出協会」に参加して海外進出に着手
日本酒の未来を見せてくれたニューヨークのバー
単独でも現地に乗り込んで突破口を開く
海外向けの愛称は「サザンビューティー」
有志の蔵元たちがワイン業界にアプローチ
日本酒の復権を目指す反骨精神が原動力に
デコボコ道が高速道路になった2010年代
若いときの失敗から学んだ日本酒のプレゼン方法
コーシャ、ヴィーガン、Non-GMOの認証取得
日本酒の価値を高めることなら何でもやる!
売上2倍の製造量を可能にした「馬仙峡蔵」
第3章 2011年東日本大震災
被災して気づかされた、全国の日本酒ファンの存在
そのとき、東京に向かう新幹線に乗っていた
売上の半分がなくなる事態に直面
打つ手なしで座して死を待つ心境に陥る
亡くなった友人の父親の言葉に奮い立つ
SNSで発信した「被災地からのお願い」が大反響
自粛ムードを一気に覆した「ハナサケニッポン」
東北の酒蔵が協力し合ったことで大きな成果
誰もが無理なく続けられる応援消費
酒は世の中に必要なものであることを実感
復興のお手伝いにもつながった「北限のゆず」
第4章 『糖類無添加梅酒』『スーパーフローズン』『あわさけ スパークリング』
──日本酒の未知なる可能性へ挑んだ新たな商品開発
目的と手段は別であることを再認識した
3つのメリットに着目して「梅酒」に決定
消費者と酒販店の声を参考に梅酒造りを開始
「All Koji」を使う名案がひらめく
社員のファインプレーで完成に大きく近づく
「南部美人、工業団地へ」と岩手日報の一面に載る
驚きのピンク色も差別化になった
地元農家を救うことにもなったイチゴとの出会い
梅酒を入口にして日本酒の扉も開けてもらう
生酒の課題をクリアした「スーパーフローズン」
食品へのダメージを最小限に抑える急速冷凍技術
世界中においしい日本酒が届く未来が見えた
最近の料理の潮流もフレッシュな日本酒に追い風
日本酒を商品ではなく「作品」としても残せる
参画する酒蔵を増やして世界のスタンダードに
第5章 小さな酒蔵が世界の酒蔵へ──
究極のテロワールを誇る特別純米酒で世界一
チャンピオンサケの獲得は二戸市全体の喜び
自分が一から手掛けた酒での快挙達成に感無量
実はプレッシャーがすごかったIWC2017
コンペティション2018で2年連続&2部門
テロワールを語れる日本酒が必要だった
首の皮一枚つながった2回目の試験で認定
チャンピオンサケの造り方をさらに改良
二戸の食を丸ごとPRする「二戸型テロワール」
第6章 世界が日本酒でKANPAIするために
革新を続ける酒造り魂を未来に伝える
消毒用アルコールの製造からドラマが始まった
なんとかして困っている人を助けられないかと相談を受けて
策をひねり出して酒蔵が動き始めた
厚労省と国税庁が画期的な特例を認める
絶対やるべきだという決断
医療的ケア児の母親に造り続けると約束
経験が人を育ててきたから対応できた
起死回生の切り札となった補助金の活用
ジンとウオッカに岩手が日本一の漆と木炭
廃棄の危機にあった酒米を有効活用した
蔵元たちの心が一つになった「蔵元酒脳会談」
海外で実感したスパークリングの必要性
透明な色と高ガス圧を両立した画期的な製法
男気に惚れて「世界の乾杯酒」をともに目指す
「AWA SAKE」はドサージュ・ゼロも魅力
恩を次の世代に送る、恩を次の世代に返す
365日24時間、南部美人の久慈浩介
究極の中継ぎを目指して全力を尽くす
おわりに