工場・倉庫建設は契約までが9割 完璧な事前準備と最適なパートナー選びでつくる理想の工場・倉庫
書籍内容
目的、立地、スケジュール、コスト……
契約前の事前準備が建設プロジェクトの成否を分ける!
「使い手」と「つくり手」が手を取り合って進める、理想の建設計画とは――
生産性の向上、業務の効率化やコストダウン、機械化・自動化……。
新たに誕生する工場・倉庫の価値は、成長への原動力となり、
企業価値をさらに高めていくチャンスとなる。(「はじめに」より抜粋)
新しい工場・倉庫の建設は企業にとって社運を賭ける一大事業である。
建設目的に見合った建物をつくるには、
設計・施工を専門としている建設会社などとうまくパートナーシップを組み、
その技術やノウハウを活かすことが望ましい。
しかし、建設という世界においては設計・施工以外にもさまざまなパートナーがいて、
建設手法やスキームも多様化しており、施主にとっては誰と組むか、
どのようにつくるかといった選択肢が多く悩ましいのが実情である。
また、工場・倉庫の建設は、専門的な知識と経験が必要となることから、
本当にこのパートナーで間違いがないか、実績の有無や費用、工期の妥当性を
慎重に見極めなければならない。
これまで多くの工場・倉庫・事務所ビルの建設に携わってきた筆者は、
理想の工場・倉庫づくりに最も大切なのは、
「一緒に考え、つくり上げていく」パートナー選びだと考えている。
施主と建設会社、使い手とつくり手が、
パートナーとして一緒に何をどうすれば「理想の工場・倉庫」に近づくのかを、
本書では成功、失敗した事例を数多く使いながら紹介していく。
目次
はじめに
序章 工場・倉庫建設に潜む落とし穴
――準備不足や思い込みが失敗を招く
・工場・倉庫の建設は企業の一大プロジェクト
<ケースA> 馴染みの工務店に依頼した結果……
落とし穴1:建設会社=あらゆる建設に対応できるという思い込み
落とし穴2:既存工場だけをベースに設計が考えられていた
・従来の経験に基づく思い込みを捨てる
<ケースB> 自動化の導入で作業効率と事業拡大アップを実現
成功ポイント:自動倉庫に対するネガティブな固定観念に固執せず、
提案を素直に聞いてチャレンジしたこと
・成功のためには「正しい知識」を身につけることが重要
第1章 自社工場・倉庫の建設は、超難関プロジェクト
~住宅・商業オフィス建設とはこんなに違う~
・そもそも分かりにくい。「建築」という特殊なものづくり
オーダーメイドでゼロからつくる「一品受注生産」
建てる場所でつくる「現地生産」
プロジェクトにかかる費用が巨額になる
設計と施工が分離している
施主にとっては専門外。「情報の非対称性」が起こりやすい
・より高度な専門性が求められる工場・倉庫建設の特徴
初めて、あるいは何十年ぶりという「非日常的」な仕事
プロジェクトに関わる人の数が多い
意思決定が複雑になりがち
関連する法的規制が多い
現場の業務効率を考慮することで要件が膨大になりがち
限られた予算内での優先順位付けが難しい
現実的ではない過剰なスペックを追求しがちになる
求める要件に対してどんな建物が最適なのかが分かりづらい
パートナーに専門的な知識やノウハウが求められる
・工場・倉庫建設を得意とするパートナー選びが大切
第2章 工場・倉庫建設プロジェクトは
契約前の事前準備が重要
――最初に押さえておくべき5つのポイント
・工場・倉庫建設プロジェクトを5つの論点で整理する
【1】 目的(WHY・WHAT)
工場や倉庫は「機能」が最も大事
「何をするための建設」「どういう建物」をつくりたいかを明確にする
耐震性能をどう考えるか
【2】 メンバー(WHO)
社内外の関係者を洗い出して役割分担や意思決定フローを確認しておく
施主=「建設を依頼する人」
設計者=「建物を設計する人」
工事監理者=「図面どおりに施工されているか確認する人」
施工者=設計図に基づいて実際に建物を建てる人
コンサルタント、コンストラクションマネジメント会社
機械メーカー、生産設備会社
【3】 立地(WHERE)
土地の特性と将来性を見据えて選択する
目的に合った土地を選ぶ
立地で注意したい土地の特性
移転に伴う従業員の通勤問題をどう考えるか
【4】 スケジュール(WHEN)
契約から竣工までのスケジュールについて
(~最も一般的とされる設計・施工分離方式による流れ~)
【5】 コスト(HOW MUCH)
工場・倉庫の建設にかかる費用を押さえる
ランニングコストも含めて適正価格を判断する
極端な安値には要注意
第3章 設計と施工は分けるべきか?
――工場・倉庫建設に最適な建設スキーム
・工場・倉庫建設はまず「スキーム」を押さえる
・工場・倉庫建設におけるさまざまな建設スキーム
設計と施工を別の会社に依頼する「設計施工分離方式」
設計も施工も1社に依頼する「設計施工一貫方式/デザインビルド(DB)方式」
多義的な「CM(コンストラクション・マネジメント)方式」
施工会社の知見を取り入れる「アーリー・コントラクター・インボルブメント(ECI)方式」
すべてを任せる「フルターンキー」
・なぜ建設プロジェクトにはさまざまなスキームが存在するのか?
・工場・倉庫建設における依頼者とプレーヤーの役割について押さえる
設計者の役割
施工者の役割
・設計と施工は、分離方式より一貫方式のほうがいい
<一貫方式のメリット1> 一貫した履行保証
<一貫方式のメリット2> スケジュールが分離方式よりも短い
<一貫方式のメリット3> 早い段階で総工事費を想定しやすい
<一貫方式のメリット4> 設計費は設計施工分離方式よりも安くなる
<一貫方式のメリット5> 建築設計の知見は施工者にこそ集まる
<一貫方式のメリット6> 設計者の作品志向が優先されない
<一貫方式のメリット7> 設計変更に対応しやすい
・工場・倉庫建設における最良スキームは設計施工一貫方式
第4章 設計施工一貫方式での最適なパートナー選び
・そもそも工場・倉庫建設のパートナー選定にはどのような方法があるのか?
1プロポーザル方式(総合評価方式)
2コンペ方式(設計案比較方式)
3入札方式(金額比較方式)
4特命方式(決め打ち方式)
・設計施工一貫方式を前提とした場合、どの方法を取るべきなのか?
プロポーザル方式がなぜ最適なのか?
コンペ方式よりもプロポーザル方式が適している理由
入札方式が適さない理由
特命は絶対にダメなのか?
取引コスト諭から見た選定方法
・プロポーザル方式による最適な1社を選ぶまでのプロセス
候補者の選定方法
良い提案をもらうために押さえておくべき要件のインプット方法
パートナー選びで失敗しないために、評価で気をつけるべきポイント
提示価格で施主側が見るべきポイント
決定後の契約面での確認事項、注意点
第5章 完璧な事前準備とパートナー選定で、
高い安全性や生産効率を改善した
工場・倉庫
・設計施工一貫方式だからこそできた成功事例
<事例1> 断熱パネルの提案で大幅なコストダウンを実現(温度管理倉庫の例)
<事例2> 消防法による制限を熟知し、効率化を実現(危険物倉庫の事例)
<事例3> 主力商品の北米輸出を目指してHACCP認証を獲得(食品工場の事例)
「永く愛される工場」をコンセプトに
無理・無駄のない工場はおのずとHACCP対応となる
2020年以降、食品メーカーはHACCP導入が必須に
<事例4> 危険物の取り扱いで注意すべき土地の条件(危険物倉庫の事例)
指定数量の倍数をあらかじめ算出しておく
国内のニーズの増加で新設が進む危険物倉庫
「危険物」では分類と取り扱う量が大切
取り扱っているものが「危険物」と知らない場合も
行政の手続きは実績のある担当者に
<事例5> 一部自動化による作業効率の向上(電動工具製造工場の事例)
<事例6> パートナー選定の決め手は寄り添ってくれる「人」(食品工場の事例)
各社のプレゼンに大きな差がなかったら……
第6章 工場・倉庫の改修も、パートナー選びが9割
・工場・倉庫における改修工事の問題点
・改修工事を安易に考えてはいけない理由
・改修工事のポイントは事前の検証にある
・改修工事は新築以上に経験がものをいう
・どのようなパートナーを選ぶべきか
・<事例>長年の増築および改修で法不適合となった事例
・計画的な維持管理に役立つファシリティ・マネジメント
おわりに
あえて難関である工場・倉庫建設に挑み続ける
工場倉庫建設の今後はどうなるのか
参考資料