笑って、食べて、愛されて 南房総、在宅看取り奮闘記

松永平太[著]

2023.06.12

1650円(税込)

幻冬舎

単行本

ネットで買う

書籍内容

「高齢者が最期まで、明るく笑って生きられる町をつくりたい」

医療・介護・福祉を通じて患者の最期に寄り添う
高齢化率50%を超える南房総・千倉で
在宅医療に取り組む医師が考える町医者としての使命とは

 高齢者が笑顔で生き、自宅で人生の最期を迎えられる地域医療を実現させたい――。
この思いを胸に、著者は25年以上、地元の地域医療充実に奔走してきました。
著者が医師になった1990年代、高齢者が最期を迎える際には、長期入院の末に
延命処置が行われ、家族が病室から出されたまま亡くなることが珍しくありませんでした。
それから30年以上たった現在、延命処置のあり方など見直されてきた面もありますが、
住み慣れた自宅に帰ることが叶わず病院で人生の最期を迎える患者はまだたくさんいます。
 著者はもともと東京の民間病院で働いていましたが、診療所を経営していた父親が
病に倒れ、困っていた地域の人たちの助けとなるために地元、千倉に戻ってきました。
この町の医師として高齢者と関わり、患者の最期を見送る立場となってから、
著者は地域医療の重要性について考えを深めていきます。そして、高齢者が最期まで
自分らしく生き切り、地域で家族や友人とともに笑顔で最期を迎えられるような
地域医療を実現することが町医者としての使命だと考えるようになりました。
 そこで著者は、在宅医療を中心とした医療に介護や福祉を連携し、高齢者が自宅で
安心して暮らしていける環境づくりを始めます。
外来診療から在宅看取りまで対応した診療所を拠点に、訪問看護ステーションや
老人保健施設などを整備していったのです。

 本書では、人口減少や高齢化が進んだ千倉で、著者が日々何を感じ、どのような
地域医療を実践しているのかを語っています。
高齢社会の日本において理想的な最期はどのようなものなのか、そしてそれを
実現するための地域医療とはどうあるべきなのかを考えるヒントになる内容です。
医療従事者だけでなく、高齢者やその家族にも読んでもらいたい一冊です。

目次

はじめに

第1章 南房総は医療・介護の問題が山積み
不本意な思いを抱き最期を迎えるお年寄りたち
南房総の先端で取り組む地域医療
高齢化率50%の千倉は、日本の未来図
厳しかった医師の父、献身的な看護師の母
薬学部の落ちこぼれが、医師になる
父が倒れて、3年ぶりに千倉に戻る
寂しそうに生き、やがて地域から消えていくお年寄り
人として、とても受け入れられない終末期の姿
入院するから、体や心が壊れていく
自由を奪っても治療をするのが病院
家族や周りの拒否で、家に帰れない高齢者
介護保険も、お年寄りを元気にはしない
認知症高齢者を病院や施設に入れて、一件落着?
介護保険が施行されても、在宅死は減少
がんや事故で亡くならなければ、90過ぎまで人生が続く
地域の命を支える仕組みを自分でつくる

第2章 北欧の高福祉国から学んだ「Trust, Respect & Smile」
地域全体で支え合う医療のかたち
私の地域医療を方向づけた貴重な出会い
地域医療のメッカ、佐久総合病院と長野モデル
「私の命を先生に任せたよ」と言われる医師に
看護師に育てられた医師
日本の高齢者医療に足りないケアの視点
世界一幸せな国、デンマークへ
Trust(信頼)& Respect(尊敬)
寝たきり老人がいない国
デンマークの高齢者福祉の3原則
地域医療とは「優しく地域に突き返す」こと

第3章 ターミナルケアに必要なのは治すことではない
医療、介護、福祉を通して患者の最期に寄り添うこと
目の前の患者の笑顔と、10年未来の命を守る
生の三徴候「笑う、食べる、愛される」にこだわる
①診療所 いつでも気軽に受診できる「命のコンビニエンスストア」
“もったいないがん”で死なないための検診・検査
医師が禁句とする「大丈夫」の効用
②デイサービスセンター 年を取った仲間たちとまた出会える場所
おいしい食事で怒る人はいない
入浴は機械浴ではなく、ひのき風呂も
独自の施設内通貨で希望のサービスを購入
➂老人保護施設 元気になって、家に帰ろう
リハビリとともに、「寝食分離」「日中離床」を徹底する
在宅生活を続けるための支援も
④認知症専用デイサービスセンター 認知症の人は「夢人さん」
他施設で断られた人も、穏やかに暮らせる
かけがえのない人生を知ると、ケアが優しくなる
⑤訪問看護ステーション 自宅で生活する人を支える在宅医療
気持ちのいい、そよかぜのように
これからの在宅看取り支援の強化のために
「無色透明のごちゃまぜケア」を目指して

第4章 患者が本当に望む最期とは何か?
大好きな場所で笑って旅立ったお年寄りたち
患者本人が希望する「いき方=生き方=逝き方」を考える
①人生の最期をどこで過ごしたいですか。そして、どこで死にたいですか?
②容態が急変したときに侵襲性の高い治療を望みますか?
③人生の最期、食べられなくなったら経管栄養法を希望しますか?
満足死を追求し、最後の1%にこだわる
「死んでも心のなかに生き続ける」見送り方を
満足死ケース①
満足死ケース②
満足死ケース③
満足死ケース例④
満足死ケース例⑤
満足死ケース例⑥

第5章 笑って、食べて、愛されて 幸せな死を迎えるために必要なこと
本当の幸せに気づくことの大切さ
都会にはない、田舎の豊かさ
高齢社会を支えるのは、地域のつながり
千倉町平舘(へだて)地区の「区民の茶の間」の取り組み
「区民の茶の間」が、先端事例として表彰される
アジアの先端コミュニティとしても注目される
人生の先輩であるお年寄りを大切にする文化
「高齢者の医療費で国が滅ぶ」は間違い
医療・介護・福祉は、第4次産業
千倉を世界最先端の地域創生モデルに
命に優しい地域医療が、未来を拓く

おわりに

著者:松永平太

1983年3月、東京理科大学薬学部卒業。その後1986年4月に東京医科歯科大学へ入学し直し、卒業後1992年4月に民間病院へ入職。そこで医者が医療を、看護師が医療ケアを行うため医師と看護師は対等であることを教えられ、この時の経験が今の理念を生むルーツとなっている。3年後父親が倒れたことにより1997年11月松永医院を継ぎ院長となる。医療、介護、福祉を通じて社会貢献をすることを使命とし、「“いのち”を助け、“いのち”を元気にし、“いのち”を輝かせる」ことを経営理念として掲げている。今の命を助けるのは医療者として当たり前であると考え、患者の未来の笑顔を守ることを使命とし、多職種協働を図っている。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医学会、日本認知症学会所属。

ネット書店

  • https://amzn.to/3f3Yc6Z

オススメ書籍

世界的な脊椎外科医が教える やってはいけない「脊柱管狭窄症」の治し方

世界的な脊椎外科医が教える やってはいけない「脊柱管狭窄症」の治し方

白石建

知られざる日本漢方のチカラ

菅原健

命を託せる病院選び41の心得

上野 正勝

新型コロナ発症した人 しなかった人

栢 孝文