つなぐ 100年企業5代目社長の葛藤と挑戦

能作 千春[著]

2023.05.01

1760円(税込)

幻冬舎

単行本

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書籍内容

伝統産業を異業種とつなぎ
イノベーションを起こす

鋳物メーカーの5代目社長の
伝統を守り発展させるための変革とは――

伝統工芸の業界は厳しい状況に置かれています。
伝統的工芸品の生産額は1983年の5405億円をピークに、
2020年には870億円へ減少し、市場は縮小の一途を辿っています。
また伝統的工芸品の従事者は1979年の28.8万人から、
2020年には5.4万人にまで落ち込み、約40年のあいだに生産額、
従事者数ともにピーク時の5分の1以下に減少しているのです。

このような状況のなか、著者は1916年に富山県高岡市で創業した
鋳物メーカーの5代目社長に就任しました。
高岡は400年の歴史を持つ「高岡銅器」の産地で、
国内の銅器の9割以上がこの地で生産されています。
著者の会社は創業当初は高岡銅器を継承する真鍮鋳物の仏具や茶道具、
花器などの生地を納める下請け業者でしたが、その後、4代目であり、
職人としての経験と技術、卓越したデザイン力を強みにもつ父の代で変革を試みます。
2001年よりデザイン性の高い真鍮のベルや風鈴を扱う
自社ブランド「能作」の製造・販売を始め、マーケットの変化にも柔軟に対応し、
約20年間で売上を1.3億円から18億円にまで拡大させました。
一方、著者は職人としての知識や経験がなかったにもかかわらず、
入社してから5代目社長に就任するまでの12年間で
いくつもの新しい事業を始動させています。
例えば、職人の技術や伝統工芸の魅力をより多くの人に知ってもらうために、
産業観光事業を開始。本社に工場見学や鋳物製作を体験できる工房を設け、
工場への年間来場者が13万人を超える富山県の観光名所へと成長させました。また、錫の食器で提供するカフェレストランも併設し、
日本の伝統工芸を身近に感じてもらえるよう取り組みも行っています。
さらには旅行業登録をして旅行ツアーの企画・販売を開始した他、自社が扱う錫に着目し、
結婚10周年を祝う「錫婚式」のブライダル事業を生み出しました。
今の時代に沿った伝統工芸の継承方法と自社の強みを生かした社会の需要に応える
事業とは何かを常に考え、現在に至るまで、日々挑戦し続けているのです。

本書では危機的な状況にある伝統工芸の業界において
著者がどのような変革をおこなってきたのかを紹介します。
同業者だけでなく、後継者不足などさまざまな問題に悩むものづくり企業や
中小企業の経営者とその後継者にとって、問題解決の助けとなる一冊です。

目次

はじめに
第1章 100年企業4代目社長の娘として、「伝統をつなぐ」葛藤と決意
――父への尊敬と業界未経験のコンプレックス
「実はうち、鋳物屋なんです」
職人としての父の偉大さを実感
久しぶりの実家、変わらない景色
バブル経済が生んだ偏見
楽しそうな光景
3年目の決断

第2章 ものづくり未経験、知識ゼロでもできるのは「人をつなぐ」こと
――徹底した現場主義で職人との対話を繰り返し、ものづくりの価値と意義を追求
知識ゼロからのスタート
販路拡大で注文数が増加
改善を重ねて生まれたヒット商品
快適な職場環境づくりに取り組む
奥が深いから熱中できる
人は楽しくしている人の周りに集う
楽しく働くために「しない」ことを明確にする
多様な製品をつくり技術力が向上
手間をかけるから感動が生まれる
教えないから考えるようになる
挑戦意欲から錫製品が誕生
錫に特化した鋳造方法を生み出す
伝統の枠内にとらわれない
何事も「まずやってみる」
誤算が大当たりしたキャラクターとのコラボ
同業他社と戦わない
ものづくりの仕組み化を考える
仕組みの面でもゼロからイチを生み出せる
人数が増えるとコミュニケーションの量が減り質が下がる
新しい人が新しい変化を起こす

第3章 「異業種とつなぐ」ことで伝統産業にイノベーションを
――製造業にサービス業を融合させて新たな価値を創造
喪失感によって気づいた自分の思い
子育てと仕事の新たな葛藤
100%で取り組めないストレス
子育ての考え方や愛情表現は人それぞれ
頼って任せることが大事
自分が考えなければならないことに集中
ゼロから企画する新社屋
観光業との接点ができた
自分と同年代をメインターゲットに設定
カフェで自社製品を知ってもらう
職人の憩いの場をつくりたい
工場見学で子どもたちの関心が高まった
案内係の個性を活かして満足度を向上
鋳物製作体験を通じてファンをつくる
規模拡大のなかで新たな気づきを得る
安全対策は想像力が重要
職人の意識も変わった
産業観光事業の可能性
見学者の声をヒントに、新社屋で錫婚式が実現
協力会社が見つからない
見せる式から向き合う式に改善
「モノ」と「コト」を提供して人生に寄り添う
利用者の声を聞いて細かな改善を加える
錫婚式を文化にしたい
異業種との連携で錫婚式が広まり始めた

第4章 職人の技に触れる工場見学会、地元の食材を楽しむカフェ、
季節ごとのイベントで「地域とつなぐ」
――マーケットインの思考で地元のファンを拡大
五感を通じて会社を知ってもらう
立地より内容で勝負したい
原価にこだわらないから良い料理が生まれる
カフェを中心につながりが広がる
コロナ禍で来場者がゼロに
できることを探して地域のつながりを維持
ものづくりに触れる機会が増えていく
仕事はもっと楽しくできる
丁寧に接することが難しくなっていた
目的を再確認して接客の姿勢を改善
コロナ禍をきっかけに取り組みを広げる
ものづくりとの接点を万人に提供することが大事
地域の魅力の発信地になりたい
地域外から人を呼ぶ旅行プランをつくる
旅行を通じて“点”のPRを“面”のPRにする
直営店で地域と県外をつなぐ
店舗で現地のニーズを吸い上げる
プロダクトアウトとマーケットイン
店舗とオンラインの情報を組み合わせる
世界観を統一することが重要
ハードとソフトの両面で魅力を伝える

第5章 人材育成、ブランディング、DX……5代目社長として「次世代とつなぐ」
――伝統産業を経営視点でアップデート
100年の歴史をつなぎ100年後の未来へ
意志を受け継ぐ覚悟
規模に応じた組織化が必要
楽しむことを重視する育成の仕組み化
リーダーの成長が組織全体の成長をもたらす
従業員に選ばれる会社になる
失敗を恐れない意識の醸成
働き方改革に合わせた変革
多角化に向けた課題
ものづくりの先入観をなくしたい
ジェンダーフリーに向けた変革
コラボを通じて認知度をさらに高める
会社という木を大きく育てる
人にしかできない仕事に注力
効率化が向かない仕事もある
ありがとうをもらえる仕事をしたい

おわりに

著者:能作 千春

高岡市出身。神戸学院大学を卒業後、2008年に神戸市内のアパレル関連会社で通販誌の編集に携わる。2011年に家業である株式会社能作に入社。現場の知識を身につけるとともに受注業務にあたる。製造部物流課長などを経て、2016年に取締役に就任。新社屋移転を機に産業観光部長として新規事業を立ち上げる。2018年10月に専務取締役に就任し、能作の“顔”として会社のPR活動に取り組む。2023年3月20日、代表取締役に就任。

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