伝統を疑え 葬儀業界イノベーション

川野晃裕[著]

2022.10.18

1647.8円(税込)

幻冬舎

単行本

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書籍内容

予測が難しいVUCAの時代、
レガシーな業界こそ変化がチャンスにつながる

大手企業の地方進出、異業種からの参入、安価なサービスの増加……
業界を取り巻く環境の激変でディスラプトされる地方の葬儀業者——
家業の葬儀会社を継いだ3代目が、生き残りをかけて伝統産業の変革に挑む。

VUCAの時代、企業が生き残っていくためには、スピード感をもって変化に対応していく必要があります。

著者は、家業の3代目として大分にある葬儀会社を引き継ぎました。
地方の葬祭業者の多くは、長い間地域の葬祭需要だけで経営が成り立ってしまっていたことから、事業モデルやマーケティングなどの点において、ほとんど変化しない状態が続いてきました。
しかし、昨今は大手企業の地方進出や異業種からの参入などの環境変化により、シェアの低下と価格競争が起こりその未来は決して明るいとはいえません。
著者の会社も例外ではなく、ほんの数年前まで「収入源は地域の葬儀と法要のみ」という古い体質のままの状況でした。
葬祭業を進化させていく必要性を感じた著者は、「葬祭サービス」という観点で自分たちにできることを探し、変革を推し進めていきます。
生前からの葬儀の相談や相続、保険、遺品整理の相談、お墓がなくても供養ができる海洋散骨、樹木葬、宇宙葬などの新しい葬儀の形を取り入れるなど、従来の業界の概念を覆すサービスを次々と確立していったのです。

本書では、旧態依然とした地方の中小企業が業界の慣習やタブーに臆することなく変革に取り組んできた軌跡をまとめています。
葬祭業はもちろんのこと、地方の伝統産業などの要素をもつ企業が、レガシーな体質から脱却し新たな成長の一歩を踏み出すためのヒントとなる一冊です。

目次

はじめに

第1章 旧態依然
変化を避ける葬儀業界への違和感
24歳、人生の転機
地域に根ざした仕事をしてきた先代
葬儀社は昼夜関係なく忙しい
人生の転機を自然に受け入れられた
時間が止まったまままの職場
24時間体制が当たり前
属人化しすぎて正解がない
茹でガエル化の危機感
貯金を削って赤字を凌ぐ
難題だらけのなかで見えた3代目の使命

第2章 原点回帰
地域・顧客が求める葬儀の価値とは
伝統に固執した形式的過ぎる葬儀
遺族が葬儀に求めているもの
別れの場であり、癒しの場でもある
きちんとお別れできない
地域での葬儀から家族単位の葬儀へ
女性目線を欠いた葬儀の段取り
故人らしさが反映されにくい
たった2日間だけの接点
良い葬儀からより良いお別れへ
目先の売上か、将来的な成長か
同業者を訪ねてヒントをもらう
見えてきた二極化の現状
葬儀社不足が不便を生み出す
利用者0人の衝撃
一人で取り組む限界を知る
財政立て直しの3つの施策
顧客が求める会館に変える
より良い供養が求められている
故人は想い出のなかで生き続ける
船頭2人で経営が迷走
3代目社長に就任

第3章 社内改革
荒んだ職場を是正し伝統を刷新するため、分業制の精鋭組織に変革
変化を好まない社内環境
ワンマンで引っ張る経営から組織化へ
私の会社ではなく私たちの会社
ブラックな就労環境を改善
性格と価値観を重視し新卒採用に挑戦
新卒社員が新しい刺激になった
従業員全員で共有できる指針が必要
「想い」を想像して意識が変わった
三男の合流で事業が広がる
ストック型事業の構築
従業員の報酬アップを仕組み化
ESなくしてCSはない
人を巻き込む経営体制をつくる

第4章 不易流行
レガシーな業界こそ常識を疑えば新たなニーズが見えてくる
打ち手を緩めてはいけない
葬儀の前後で手伝えることを探す
サービス考案の原点は「おせっかい」
供養の多様化に注目
おひとりさま時代の「弱者」を支えたい
葬儀後も遺族に寄り添い続ける
ファンを増やし、ファンの力を借りる
ペットもきちんと送り出したい
オンラインで会葬機会をつくる
社内コミュニケーションを集約
オンライン活用で働き方改革を推進
システム導入で業務を効率化し、仕事に余裕を生み出す
成長戦略に基づくDXを考える
連絡スピードの向上でクレーム対応も改善
空に手を合わせて故人とつながる
宇宙をキーワードに世界を市場にする
幹部層を厚くして成長力を強化
幹部、リーダー、現場をすべて巻き込む
関連性があれば積極的に参入
トリプルナンバー1を目指す
ネットの台頭で葬儀費用が下落
レビューを指標に質を追求
ネットなら不特定多数に細かく周知できる
顔を出して覚えてもらう
対話できないからこそ資料が重要
現状維持は後退と同じ
相談しやすいところが良いところ

第5章 共存共栄
地域、家族、異業種……手を取り合う経営が伝統をアップデートする
さらなる飛躍を目指す組織編成
社会全体に目が向くようになった
提携を通じて馬力を上げていく
飛躍のきっかけとなった「2025年物語」
目指す姿によって組織のあり方が変わる
家と家業を守りたいという本能が働く
親への感謝を共有している
「兄弟仲良く」の根底にある大きな木の話
役割を明確にして権限移譲
意見を率直に言えるのが強み
精神的なつながりと法整備を組み合わせる
株をもつことは責任をもつこと
自ら考え、行動する力を伸ばす
経営と株主を分けて考える
年齢によって経営の考え方は変わる
想いに共感し、お互いにメリットがある提携を探す
グループ事業の広がりが利便性を高める
利益ではなく満足度を追求する
非日常の環境で夢を膨らませ、地域に還元する
正しい道を進む

おわりに

著者:川野晃裕

1982年大分県生まれ。
岩田高校、帝京大学卒業後、日新火災海上保険勤務を経て、大の葬祭へ入社。
2010年、自らの申し出により27歳で3代目として代表取締役に就任。4人兄弟の長男であり、現在では兄弟全員がグループ経営に携わっている。2022年4月、葬祭事業の社長業は末の弟に引き継ぎ、自らは「より良いお別れ、より良いご供養」の場の提供をミッションとする「大の葬祭」、ライフイベントをサポートするFP事業会社「I’s ファイナンシャルプランナーオフィス」、マネジメント機能を果たす投資会社「Heart net Holdings」、宇宙ベンチャー事業会社「INAMI space laboratory」を束ねる大の葬祭グループの代表に就任した。 旧態依然とした葬儀業界に違和感を覚え、より良いお別れに向けたワンストップサービスイノベーションを決意。
行政と提携して家族がもめないように生前からの仕組みづくりを普及する活動、葬儀関連事業におけるDXへの取り組みとしてアバターロボットを利用したオンライン会葬を取り入れた葬儀会館事業の開発、スペースポート大分を利用した宇宙葬の開発等多様なニーズに対応する供養事業などを手掛ける。2018年フォーブスジャパン「日本が誇る小さな大企業11選」に選出。

ネット書店

  • https://amzn.to/3f3Yc6Z

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