50 年、理想の精神医療を求めて

佐藤忠宏[著]

2023.03.17

1756.7円(税込)

幻冬舎

単行本

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書籍内容

明るい精神医療の未来へ向けて。
82歳の医師が、未来を担う精神科医師に伝えたいこととは

患者と地域の理想的なかかわりを追い求めてきた50年の軌跡から、
精神医療のあるべき姿を考える――。

著者の精神科医としての人生がスタートしたのは1965年――
当時の日本の精神医療は問題が山積みでした。
たとえば、精神的な病気を発症すると精神病院に入院させて薬で症状を抑えようとし、
もし症状が悪化すれば身体を拘束、患者への虐待も珍しくなかったといいます。
また、患者が精神病院に隔離されることで一般の人との距離が遠ざかり、
偏見も広がっていました。
そのような状況のなか著者は、1979年に生まれ故郷の山形県南陽市で精神科のクリニック
を開業します。
精神科医として14年の経験を経て描き上げた
「精神障害者が一般の人と仲良く暮らせる社会」という自らの理想を実現させるため
の開業でした。

本書は、そんな著者の50年の歩みをまとめたものです。
50年のあいだに著者はさまざまなことに取り組んできました。
開業3年後には急性期の患者を受け入れる病棟を備え、早期退院を目指すと同時に、
スムーズに地域に戻るための生活訓練にも注力しました。
また、地域の人々の誤解や偏見をなくすために、クリニックの施設を開放し、
地域の人々と患者が交流する機会を設けました。
さらには患者が生活する場所を確保するため、1986年には退院後に日中を過ごせる
精神科デイケア施設、1999年にはグループホームをつくりました。
こうした取り組みを通じて徐々に患者が地域で生活しやすい環境が整備され、
患者も自分でできることが増えて自信がつき病状の安定につながっています。
新たな施策に果敢に挑戦してきた著者は、周囲の人から何度ももうやめたらどうかと
言われ、くじけそうになったことも数えきれないほどあるといいます。
しかし、そんな著者を支えたのは「退院してよかった」という患者たちの言葉でした。
精神障害者には人権を侵害されることなく、当たり前に日常生活を送ってほしい――
そう願う著者がこれからの精神医療や地域包括ケア、介護保険と障害者福祉の
共生型サービスのあり方について提言していきます。業界関係者必読の書です。

目次

はじめに

第1章 許されない地域社会での暮らし――
病院に隔離される精神障害者たち
日本の精神科医療は後れている
座敷牢から病院へ
国際世論からの批判
病棟での身体拘束や隔離の裏側
行動制限によって奪われる患者の意欲
町から隔離された精神科病院
患者への偏見、精神科医療への偏見
極端に多い日本の精神科病床数と平均在院日数
保護という名の収容主義
欧米に見る精神科医療の発展
問われる患者の人権

第2章 精神障害者を病院から開放するために
偏見を取り除き、病院の外に受け入れ場所を確保する
生まれ故郷で踏み出す理想の精神科医療への道
住宅街の真ん中に開業した診療所
入院設備を整えて新たなスタート
精神疾患への無理解が生む地域住民の偏見
夏祭りの開催が地域交流の第一歩
福利厚生のために野球部を創設
専門職による出前指導
作業療法の一環として行う入院中の院外作業
退院後の患者の居場所として精神科デイケア・ナイトケアを開設
患者の家族同士が支え合うための家族会
退院後に過ごす住居としてグループホームを開設
早期退院に向けた効果的な治療法
精神疾患の回復ケアにはマンパワーが必要不可欠
徹底した早期治療のための「スーパー救急病棟」
地域移行強化病棟の設置
早期退院支援で大切なこと
入院病床の削減により患者だけでなくスタッフも地域に移行
短期で退院した患者ほど地域に戻りやすく、症状も落ちつきやすい
退院した患者たちのいきいきとした暮らしぶり
退院後も途切れない医療との関わり
「精神障害者」は制度上の呼称

第3章 精神障害者が地域での生活を取り戻すために
地域包括ケアシステムを導入
専門外来の設置は受診のハードルを下げる
退院した患者を見守り、サポートするさまざまな施設
社会参加を目指す就労支援センター
交流活動を通じて得られる喜びや達成感
2000発の大花火大会は地域交流のシンボル
野球部の選手たちの活躍が地域を盛り上げる
地域交流のための場所と機会
災害時の協力は地域貢献ではなく人道支援
新幹線の駅に設置されている「こころのバリアフリーガイドブック」
地域包括ケアシステム実現に向けての国の歩み
南陽市の精神科医療での地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいる人に伝えたいこと

第4章 精神障害者の高齢化に対応するために
介護保険と障害者福祉の共生型サービスを普及させる
高齢の親が大人になった子どもを支える8050問題
本人と家族のための認知症ケア
認知症における地域包括ケアシステムの必要性
介護保険サービスと障害福祉サービスの隔たり
正しい支援認定がされにくい患者たち
認知症になった患者も受け入れられるグループホーム
訪問診療により、身体疾患もフォローする
家族と暮らす患者のグループホーム体験入所・短期入所
指定自立生活援助事業所を設置
共生型サービスの誕生
共生型サービスによって求められる精神保健福祉士の役割
次なる地域で目指す新しい共生型サービスのしくみ

第5章 50年、理想の精神医療を求めて¬―― 
これからの精神科医師に託すこと
超高齢社会では精神疾患は他人事ではない
新型コロナの流行によって起きた偏見
隠さず見せることが理解につながる
制度の改定に対して国や自治体に求めること
ストレスの多い社会に生きる現代の子ども
より良い医療の提供に欠かせない情報のアップデート
病院で抱え込まず、地域全体で考えるしくみ
患者の最終目標は就職と一人暮らし
スティグマ「敗者の烙印」からの解放

おわりに

著者:佐藤忠宏

精神科医、社会医療法人公徳会理事長
日本医科大学卒業。同大学医局、山形県南陽市立総合病院を経て、1979年に開業。地域移行機能強化病棟(病棟ベッド3割を削減し、1年以上入院している人を退院させるしくみの病棟)を実施し、地域と連携を取りながら退院後の患者の生活をフォローしている。また、高齢の精神障害者を看る場所(バリアフリーのグループホームなど)の設置にも取り組んでいる。さらには精神疾患の有無、介護の有無、収入差も関係なく、みんなが一生を終えるまで楽しく過ごせる場所をつくるために尽力している。

ネット書店

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