自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一[著]

2022.07.04

987.8円(税込)

幻冬舎

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書籍内容

最期まで充実して「生きる」ために
超高齢社会における在宅医療の
新たな可能性を説く――

在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療”ではない。
患者が活き活きと自宅で過ごし、
外来と変わらない高度な医療を受けられる。
新しい在宅医療のロールモデルについて徹底解説。

在宅医療は、
在宅医が寝たきりの高齢者やがん末期患者を対象に訪問診療を行うもので、
先端技術を駆使する病院の治す医療とは対極にあるという認識が一般的です。
そのため在宅医療の最終目的は自宅での看取りであり、
消極的に“ただ死ぬのを待つだけの医療”だと思われがちですが、
自宅で幅広い診療科の高度医療を受けることができれば、
患者は趣味や人との交流を楽しみながら過ごすことができ、
死ぬのを待つのではなく充実して生きるための医療となります。
本書では、自宅で死を待つだけの在宅医療が抱える問題に一石を投じ、
家にいても高度な医療が受けられる取り組みを、
超高齢社会における新しい在宅医療のロールモデルとして解説します。

目次

はじめに

第1章
高まる在宅医療へのニーズ
自宅での生活を望む老人たち
在宅医療の利用者は100万人規模になると推計
在宅医療が求められる理由1 大都市圏を中心に75歳以上の人口が増加
在宅医療が求められる理由2 病院中心の医療から、自宅で支える医療に
病院と連携した在宅医療で、高齢者を「切れ目なく支える」
在宅医療が求められる理由3 高齢者の6割は、「自宅で療養したい」
近年、高齢者向け住宅での在宅医療が増えている
在宅医療が求められる理由4 国が推進する「病院から在宅へ」の流れ
各地域の未来の姿から逆算した「地域医療構想」
必要な人が在宅医療を受けられる体制整備が喫緊の課題

第2章
“ただ看取るだけ”が目的となってしまった
在宅医療の問題点
行政が期待するほど、進んでいない在宅医療
〈課題1〉 在宅医療の担い手の不足
最もネックになるのが「24時間対応」
在宅医療を担っているのは、町の開業医が中心
在宅医は「1人」が7割以上で、医師の年齢は50代以上が約8割
私も経験した24時間体制の往診
小規模クリニックの経営を左右する医師の雇用
在宅医療に携わりたい医師ばかりではない
〈課題2〉 在宅医療の診療内容のばらつき
在宅医療のガイドライン等はなく、現場の医師任せ
専門外の診療に自信をもてない医師も多い
寝たきり高齢者に対し、何をすればいいか分からない医師
在宅だからと、治療を諦めている患者
〈課題3〉 医師同士や多職種との連携の難しさ
地域により病院の後方支援体制は異なる
医師同士の連携も、なかなかうまくいかない
情報化がものすごく遅れている日本の医療界
〈課題4〉 在宅看取りばかりを重視する風潮
自宅での看取りは、家族の負担が大きいことも
在宅看取りを行う診療所は、わずか約5%
次々に死にゆく患者を診ながら、医療スタッフも疲弊
看取りは結果。それまでに、家でどれだけ幸せな時間を過ごすか
コラム 災害時・非常時に強みを発揮する「在宅医療」

第3章
外来と変わらない高度な医療の提供へ
「生きる」ための在宅医療に必要なこと
「家で生きるための在宅医療」を実現するには
医療の質が向上し、医師も働きやすい持続可能なスタイル
〈解決策1〉在宅医療クリニックの大規模化で、24時間完全対応
常勤医師は夜勤なしで女性医師も活躍
非常勤は勤務医でも負担なく働ける体制に
〈解決策2〉専門医×最新医療機器で、「高度医療化」
高額の医療機器も、積極的に設備投資
主治医を決め、必要に応じて専門医と連携
高齢者のQOLに関わる「眼科」
嚥下の機能も評価する「耳鼻咽喉科」
自宅でできる腹膜透析を扱う「腎臓内科」
関節リウマチの治療に対応する「整形外科」
高齢者に多い認知症、うつ病を診る「精神科」
がんの緩和ケアのスペシャリスト「緩和ケア科」
高い専門性が求められる「小児科」
〈解決策3〉柔軟な対応を叶える医療ネットワークの築き方
多職種の連携に便利なコミュニケーションツール
地域の病院、個人クリニックの医師とも良い関係を築く
〈解決策4〉看取りの場所は必要に応じ、選択できる体制に
看取りに特化した在支診との役割分担も検討
命の終わりも見据えながら、「生きるための支援」を
コラム 国が進めるデータヘルスと、医療の未来のかたち

第4章
脳梗塞、末期がん、認知症……
「生きる」ための在宅医療を選択した6人の患者たち
在宅医療で診療している患者・利用者のプロフィール
・事例1
頸椎症などで歩行が困難になった一人暮らしの女性
糖尿病の合併症予防のために眼科専門医が訪問し、通院負担が減少
・事例2
高齢の母親のうつ病で本人だけでなく娘も疲弊
内科医、精神科専門医、薬剤師らが、チームで療養を支える
・事例3
入院をきっかけに経口での食事摂取ができなくなり胃ろうを造設
在宅では耳鼻咽喉科専門医の支援で、口からの食事摂取に挑戦中
・事例4
両膝痛のため歩行困難になった90代女性
関節リウマチの治療を行い室内歩行が可能になり介護負担が軽減
・事例5
がんの終末期で在宅医療に移行した40代男性
看取り直前に「妻とドライブに行きたい」という希望を実現できないか、模索
・事例6
腎不全と認知症が進み、手の施しようがないといわれた高齢男性
在宅医が関わることで少しずつ尊厳を取り戻し、在宅看取りへ

おわりに

著者:大城 堅一

医療法人社団 星の砂 理事長
ねりま西クリニック 院長
1966年生まれ。沖縄県出身。
大学卒業後、大学病院や関連病院で研鑽を積み、離島にて無医村での診療を経験。
2005年より在宅医療に携わる。
その後、医療・介護の融合をめざし、2011年にねりま西クリニックを開業。
離島医療や在宅医療での経験を活かし、患者一人ひとりの希望に合わせた総合的な医療を提供している。

ネット書店

  • https://amzn.to/3f3Yc6Z

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