診断治療の質を上げるペイシェント・ベイスド・メディスン

宮田 和典[著]

2022.06.27

1650円(税込)

幻冬舎

単行本

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書籍内容

患者の出身地や食生活によって、
かかりやすい病気、重症度が変わる――。

環境的要因と遺伝的要因から最適な治療を導く。
医療の質を向上させる新たな概念「PBM」とは

1990年代にカナダで提唱された
「エビデンス・ベイスド・メディスン
(Evidence-based Medicine:以下EBM)」は
エビデンスに基づく医療によって、より良い治療を目指そうという考え方です。
今日ではEBMは広く医療の場に普及し、
医師のみならずコメディカルの間でも当然の治療法として受け入れられています。
EBMの普及によって医療の質は大きく向上しましたが、
これ自体は標準化された治療方針で患者個々の出身地や遺伝情報などの背景は
考慮されていないため、EBMだけでは最適な治療法が提供できないことがあります。

著者の病院は眼科の単科病院ではありますが、
年間10万人を超す外来患者が受診しています。
著者は膨大な患者のデータから出身地や生活歴などに焦点を当てた臨床研究を行い、
その結果を利用してより良い治療を目指すという
「ペイシェント・ベイスド・メディスン(Patient Based Medicine:以下PBM)」
という考えを提唱しています。
地域包括医療で地方ごとの医療体制の強化が進む中、
その地方で起こりやすい疾病と原因を医師が患者のデータから分析するPBMが、
医療の現場で一般的に受け入れられれば、
医師は患者一人ひとりに適したより良い医療を提供できるようになるのです。
本書では、現役の眼科医が分かりやすく図版を豊富に使って、
一人ひとりの患者と向き合う
ペイシェント・ベイスド・メディスンについて解説していきます。
医師だけでなく、
医学生や眼科を専門としていない医療従事者にも読んでもらいたい一冊です。

目次

はじめに

第1章 年間10万人の患者を治療して見えてきた、
従来のエビデンスに基づく標準治療の限界
東京では15年で3件しか手術しなかった病気が、宮崎では毎日のようにやってくる?
全国の感染性角膜炎の3割が南九州に集中
盛んな畜産業でふるさと納税は全国トップクラス
先人たちが残してくれた貴重なデータ
ぶどう膜炎の原因の3割を占める3大ぶどう膜炎
眼科医の常識を覆すオリジナルの患者データ
南九州のぶどう膜炎はHTLV-1によるものが最多
生肉を食べる食文化からトキソプラズマ症も多い
食肉対策で寄生虫による病気は減少
原因が違えば、治療法も違う
同じようなことは全国でも起こっている
「おかしいな」と思ったらエビデンスを考える
症例対照研究とコホート研究
エビデンスをもとにしてガイドラインが作られる
ガイドラインには地域性や民族性は考慮されず
自分の患者のエビデンスをもとに考えるPatient-based Medicineとは
教科書だけではなく、自分の患者から出した答えを使う
数十年に及ぶ患者データの蓄積

第2章 ペイシェント・ベイスド・メディスン1環境的要因
患者の住む地域特性によりかかりやすい病気が変わる
強い日差しが特徴の九州南部の気候
紫外線が多いと翼状片が増える
環境や職業などが病気の原因に
「これまでと同じ治療ではダメだ」
手術のタイミングなど検討すべき事柄が多数
視る機能に着目した新たな分類法を考案
水晶体が濁ってしまう白内障
南九州では白内障と翼状片を併発する患者が多数
再発する翼状片に対する治療法を考案
羊膜と抗がん剤を組み合わせて治療に活用
新たな治療法で再発した翼状片の再々発率を1割未満に抑えることに成功
目の前の患者を治したいという思いが最大のモチベーション
忘れられない翼状片の再発患者
翼状片の遺伝子を解析して謎を解明
10年間で1357人に上る感染性角膜炎患者
全国サーベイランスで約3割の感染性角膜炎患者が南九州に集中
薬が効かない!? 実はとても恐ろしい薬剤耐性菌
使えば使うほど薬が効かなくなる
スーパー耐性菌による感染症で3秒に1人が死ぬ未来
風邪には効果がない抗菌薬がなぜ処方される?
水産、畜産業では人の3倍の抗菌薬を使用
眼科は他の診療科よりも抗菌薬の使用が多い
抗菌薬は治療以上に予防目的で使われている
抗菌薬のガイドラインに抗菌点眼薬が入っていないのはなぜか
万が一の感染が失明リスクにつながる眼科の特殊事情
薬剤耐性菌問題は地球温暖化と似ている
アメリカでは1週間以内の薬を日本では1カ月以上使用
抗菌薬を3週間使うと高度耐性菌が出現
日本で初めて抗菌薬の投与期間を1週間に短縮したエビデンス
数十年にわたる患者から導き出したデータがエビデンスになる
感染症の専門家ではないのに、日本眼感染症学会で特別講演
ビタミン剤と紫外線の照射で感染症を治療
緑膿菌に感染した68歳の女性
世界には実績のある治療法がある
感染症になると最終的には角膜移植が必要に
角膜に穴が開く理由は外傷が最多
穴が開いたら羊膜移植か角膜移植が一般的
医療用瞬間接着剤で角膜の穴をふさぐ
感染症による移植は、およそ10人に3人が再手術
人工角膜で10年経っても1.5の視力を保つ
激痛が起こる水疱性角膜症
クロスリンキングを行った14人全員の痛みが軽減
一人でも多くの人に光を与えるためにPBMを貫く

第3章 ペイシェント・ベイスド・メディスン2遺伝的要因
古来の民族遺伝子により病気の発症率が異なる
民族遺伝子が違えば眼の形が変わる
琉球民族は隅角が狭い眼、狭隅角が特徴
関東の北里大学と南九州の私の病院でも眼の特徴は異なる
眼の形の違いで白内障の手術にもさまざまな影響
0.1mmの違いが白内障手術後の視力に大きな影響を与える
AIを使って眼内レンズの計算式を作成
狭隅角で浅前房の人は白内障の手術が難しい
角膜上皮は少しの傷ならすぐに治ってしまう
血管のない角膜に栄養を送っている角膜内皮層
角膜内皮細胞は数が減ったら二度と増えない
眼の手術で角膜内皮細胞が減少
手術時間や超音波、前房の角度などが手術のリスク要因に
狭隅角眼の人は角膜移植の確率がアップ
白内障手術を行った2万人以上の患者データを調査
特殊な内皮細胞の配置を持つ人がいる!?
琉球民族の遺伝子を持つ人には特殊な角膜の持ち主がいる
狭隅角を治す唯一の方法は白内障の手術

第4章 一人ひとりの患者と向きあう
ペイシェント・ベイスド・メディスンで臨床の質を上げる
既成概念にとらわれず、PBMの視点があったから気づけた事実
白内障手術後にめまいや頭痛が起こるも主治医からは「気のせい」
白内障手術で挿入する眼内レンズには多様な種類
2焦点レンズを使った患者から不定愁訴の訴え
左右の眼のバランスの悪いレンズでさまざまな不調が発生
レンズを交換したら、交換しなかった方の視力も回復
眼内レンズを入れた眼の眼精疲労を測定することに成功
人工レンズでもわずかながら筋肉が動く
人工レンズによる不調が眼精疲労の薬で改善
常識にとらわれず目の前の患者から考える
患者本位で原因を究明する イソギンチャクの話
自由な研究環境を求めて東大へ
10年後ではなく、今すぐ患者を治したい
普遍的な治療法が多くの患者を救う
光学や病理、感染症など多彩な専門家を揃える
大学との共同研究が多数、分野のトップと組む研究スタイル
データ収集から治療まで、独自のPDCAサイクル
10年、20年と続くデータの蓄積でエビデンスを構築する
大学病院では限られた患者のデータしか集まらない
10年以上の長期間、患者を追跡できるのはかかりつけ医だからこそ
医療資源に乏しい地方であることも研究にはメリットに
質の高い患者データと研究体制がPBMを作った
AIの活用が進む眼科領域
日本では行われていない優れた治療法が世界中にある
ライフワークとなったハンセン病患者との関わり
すべては患者中心に考えるPBMにつながっていく
忘れられない円錐角膜の少年
本邦1例目の治療法が成功し、角膜移植をせずに視力を回復
治療効果は30年後も継続、しかし治療しなかった眼にも症状が……
手を尽くしても当時の材料が手に入らない
誰にも引き継がれることなくこの世から消えた治療法
PBMの本質 一人ひとりの患者と向き合う

おわりに

著者:宮田 和典

医療法人明和会理事長。宮田眼科病院院長。

ラ・サール高等学校、久留米大学医学部を卒業後、1984年東京大学医学部眼科入局。助手を経て、1991年、博士号を取得後、講師。講師在職中、カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。
帰国後、医療法人明和会宮田眼科病院の副院長に。
1999年に院長、2008年に理事長に就任。
1990年代前半からエキシマレーザーの基礎研究に携わり、
白内障手術・眼内レンズ・人工角膜ではエキスパートとして知られている。

・日本眼科学会監事
・日本眼科学会評議員
・日本眼科手術学会監事
・日本角膜移植学会理事
・日本角膜学会評議員
・日本白内障屈折矯正手術学会理事
・日本白内障学会評議員
・日本眼感染症学会評議員
・日本アイバンク協会評議員
・宮崎県眼科医会理事
・宮崎県アイバンク協会理事
(2022年6月現在)

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