教えて三輪先生！ひざ治療のポイントや注意すべきリスク

Q：Ｏ脚なのですが、将来、膝へどのような影響が出るのでしょうか？そもそもＯ脚は治せますか？

O脚やX脚の人は生まれつきひざが痛くなりやすく、変形性膝関節症になりやすいとされています。O脚はクワガタの角のようにひざが外側に変形して◇状になっています。X脚はひざが内側に曲がってX状になっています。

股関節の大腿骨頭中心から足関節(足首)の中央を結んだ線をミクリッツラインといい、これは下肢の荷重線を示しています。このまっすぐな線よりひざの中央が外側にずれているとO脚、内側にずれているとX脚に分類されます。

日本人(黄色人種)はスネが弯曲している人が多く、ひざの内側に荷重が集中するため、内側の軟骨がすり減りやすい構造になっています。さらにO脚が進んで、その結果、変形性膝関節症になるのです。

O脚はストレッチや運動だけでは治りません。骨の形を治せるのは手術だけです。変形性膝関節症の手術としては主に「①関節鏡手術(クリーニング手術)」「②高位脛骨骨切り術(HTO)」「③単顆型人工膝関節置換術(UKA) 」「④人工膝関節置換術(TKA)」の4つの方法があります。各手術については書籍第4章で解説していますのでご覧ください。

※P43・47＿122第2・4章より抜粋 

Q：20代で半月板・前十字靭帯を傷めてしまったのですが、将来どうなるのでしょうか？

前十字靭帯や半月板を断裂したことがある人は将来、膝の痛みがきわめて出やすいです。靭帯を損傷すると、関節の緩みが生じます。抜けるような不安定な感覚があり、異常な動きとずれを繰り返すため、早期に関節軟骨がすり減るのです。半月板が断裂すると、靴の中にガラス片があるように引っかかり、軟骨が削れてしまいます。

※P43第2章より抜粋

Q：どうして膝に水がたまるのでしょうか？

まず膝に水が溜まる原因についてお話しします。

関節は関節包という膜に包まれた閉鎖空間(密室)で ヌルヌルした関節液があります。関節液は関節包内面の滑膜が作り、栄養を送る役割と摩擦を防ぐ役割を果たしています。通常はごく少量ですが、軟骨がすり減ると軟骨の破片が関節包を刺激し炎症を起こします。滑膜が炎症を起こすと関節液(滑液)をたくさん作ります。このときの関節液は数10cc溜まり、サラサラで機能を果たさず、関節包がパンパンに腫れて痛みを伴います。この状態を関節水腫といいます。

パンパンに腫れたら、注射器で水を抜く必要があります。水を抜くと癖になるのではないか、水を抜くことでかえって水が溜まるのではないかと相談されることもありますが、痛みを取るには水を抜くしかありません。ただし、水を抜くと痛みは軽減しますが、水が溜まる原因が改善されていないので再び水が溜まって痛みが生じます。

また、注射器を使用することは細菌感染の危険があるので、よく消毒する必要があります。万一感染すると、リウマチや変形性関節症と同様に関節表面は溶けてなくなり、痛みで歩けないどころか、治癒しない限りひざの破壊は急速に進行します。水が溜まり続ける場合、炎症の原因である異常を根本的に治さない限り、関節水腫はなくならないのです。

※P89第3章より抜粋

Q：ひざ疾患を予防するため大切なポイントを教えてください。

ひざの疾患を予防するために大切なポイントが5つあります。

ポイント①：ウォーキング
ウォーキングで関節を動 かすことで軟骨が萎縮して薄くなることを防ぎます。ウォーキングを 毎日の習慣にすることで、軟骨に栄養を送り、最低限の筋力と骨の強化、歩行能力の維持が期待できます。

ポイント②：大腿四頭筋を鍛えること
太ももの前半分の筋肉でひざを伸ばす働きをします。足上げやスクワット、座って蹴る運動などで鍛えられます。

ポイント③：ストレッチ
まずマッサージをして温めてからひざを伸ばして10秒静止、しっかりと曲げて10 秒静止という動作を繰り返します。風呂上がりや就寝前に行うことを続ければいつのまにか習慣になるはずです。

ポイント④：O脚対策
O脚を軽減し内側に掛かる荷重を減らすには、足底板(外側を厚くした靴の中敷き)が最も効果的です。足底板は靴に入れるタイプと足に巻くタイプがあり、整形外科を受診すると足の裏の形を取ってオーダーメイドで作ってもらえます。
このほかにも和式トイレを避ける、ひざを冷やさない、あぐらをかかない、横座りをしないなどひざに負担 を掛けない工夫も必要です。

ポイント⑤：体重管理
歩行時は体重の5倍の負荷がひざにかかるともいわれています。体重が10kg 増えればひざには 50kg、20kg 増えれば100kgの負荷が増えることになります。食事のコントロールや運動ですぐに調整できるはずです。毎日、体重を計測することはひざのリスク回避にもつながります。

それぞれのポイントの詳細は書籍の第3章にありますのでぜひご覧ください。

※P82第3章より抜粋

 Q：今、85歳で膝が悪いのですが、80代90代など高齢でも手術できるのでしょうか？

高齢の方でも手術はできます。心肺機能が良好なこと。心臓の先生にかかっていただき評価をしてもらいます。90 歳以上で腰や人工関節をした方もおります。当院の手術患者さんは50%以上が80 歳以上です。

※P294第6章より抜粋

Q：ペースメーカーやステントなど心臓に病気があるのですが手術できるのでしょうか？

ペースメーカーでも手術はできます。業者に来てもらい電気メスが使えるモードに変えます。なんら問題はありません。最近は下肢の手術はモードを変えなくてもOKというペースメーカーが多いです。ペースメーカーが入っていると MRIが撮れません。MRI を撮らないと手術できないのは腰だけです。

またステントを入れてから半年は、サラサラ薬を止められないので、少なくとも半年間手術はできません。その後はサラサラを止めて点滴し手術をします(点滴しないこともあります)。不整脈・心筋梗塞などでサラサラの薬を飲んでいる場合も同様です。

※P293第6章より抜粋 

Q：現在透析をしていますが、それでも手術できるのでしょうか？

透析をしていても手術はできます。透析のできる病院の整形外科を探しましょう。透析をしている病院であればなんら問題ありません。透析しているから治せないと諦めている人が多いと思います。透析センターのある、手術をしている整形外科は実際には、ほとんどないのが現状です。

※P292第6章より抜粋

 Q：糖尿病でインシュリン注射をしているのですが、膝の手術はできるのでしょうか？

糖尿病でも手術はできます。糖が高ければ教育入院し、インシュリンで無理矢理下げてしまいます。糖が高いと感染しやすいのと血行が悪いので注意。手術の際はA1cを6台に、術直後は血糖値を100〜200にキープし、その後は A1cを8未満に保ちましょう。

※P292第6章より抜粋

 Q：人工関節はどのくらいもつの？

完璧に行われた人工関節はどこまでもつのか？感染もグラつきも骨折もなければ、最後はどうなるのか？最後はひざの寿命が軟骨の寿命であるように、人工関節の寿命は人工軟骨の寿命、つまりすり減りです。人工軟骨が擦り切れたら再手術です。TKAをして、いくら良くなったからといって毎日長時間のジョギングをしたり、一日中歩くのはすり減りを早め、TKA の寿命を短くします。肥満もダメです。

※P 212第5章より抜粋

ひざを治して人生を楽しもう。理想はピンピンコロリ

ぜひ、痛むひざ、曲がったひざ、伸びないひざ、曲がらないひざ、歩けないひざを治してください。そして自立して家族を頼らず生活をしてください。自分のことが自分でできる、それが本人や家族の幸せにつながります。ただ最低限の生活を目指すのではなく、「治して日本中を旅行したい、孫とお出かけしたい、買い物に行きたい、おしゃれがしたい、美味しいものを食べに行きたい」、その一つひとつの夢を叶えてください。

歳だからで諦めない! その痛み、一人で悩まないで! 一人で抱え込まないで! ひざはどんなレベルであっても治せます。治せる医者をぜひ頼ってください。そしてゲートボールやグランドゴルフ、フラダンス、大正琴、カラオケなど習い事をしてください。毎日散歩してください。 毎日出掛けてください。引きこもりにならないでください。社会とのつながりを持ち続けてください。

スタスタとまっすぐなひざで歩き続けられる自分を、おしゃれをして楽しんで、多くの人にその幸せを分け与えてください。不幸は伝染します。1 人の不愉快な態度により多くの人が不愉快な思いをします。明るい人は周囲の人を明るくします。幸せも伝染するのです。ピンピンコロリが 理想です。ぜひ治して人生を楽しみましょう。

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