歯科医療後進国日本

土屋 嘉都彦[著]

2023.03.23

1760円(税込)

幻冬舎

単行本

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書籍内容

歯科医療のさらなる発展のために、
日本の歯科業界が取り組むべき課題とは――

アメリカで歯科診療を学んだ医師が
日本の保険制度や歯学教育に潜む問題へ切り込む

高性能な治療機器をそろえた歯科クリニックが街のあちこちに並び、
誰でも安価に治療を受けることができる日本は、歯科医療先進国のように見えます。
しかし、日本の歯科医療にはさまざまな問題が潜んでいるのです。
日本では国民皆保険制度が導入されており、誰しもが少ない負担額で治療を受ける
ことができるようになっています。
一方で歯科医師は診療報酬が低額であるために、1日に何十人もの患者を診なければ
経営が成り立たず、結果として一人ひとりの患者に割ける時間が限られてしまいます。
患者側も安価に治療が受けられるため痛くなれば治療をすればよいと考え、
歯を大切にするという予防意識が定着しにくくなっているのです。
また日本の歯学教育においては、実習は模型やマネキンを使ったものが主で、
歯学生が実際に患者の口の中を診る機会は限られています。

国民皆保険制度がないアメリカでは、歯科治療費は医師が自分の技量に合わせて
設定しています。日本のように薄利多売にならなくとも経営を成り立たせることが
できるため、歯科医師は一人ひとりの患者に十分な時間を割くことができるのです。
そして虫歯や歯周病になると高額な治療費が掛かることから、患者は予防歯科に注力し、
日々のオーラルケアに多くの時間を掛けるのが常識となっています。
また歯学生は歯科医師免許を取得するまでに、実際に患者を治療しながら
徹底して実技をたたき込まれます。

著者は2002年に歯科医師免許を取得し、その後アメリカで歯科診療を学び、
アメリカのボード認定専門医の資格を取得しました。
本書では日米双方の歯科医療を最前線で見てきた著者が、医療制度や教育、
歯科経営の観点から、日本の歯科医療の問題点とそれに対する解決策をまとめています。
日本の歯科医療を発展させるために今なすべきことは何か、そのヒントを示す一冊です。

目次

はじめに

第1章 歯科治療に強い関心をもつアメリカ人
治療は医師に任せきりの日本人
虫歯になってから歯科クリニックへ駆け込む日本人、メンテナンスのために通う欧米人
アメリカの歯科治療を学ぶため留学を決意
アメリカ人の口腔の健康に対する意識
国民皆保険制度に潜む問題
日本とアメリカの教育制度の違い
日本の歯科医療の現場は疲弊している
国民全体が当事者意識をもたなければ、日本の歯科の未来は変わらない

第2章 保険制度に隠された弊害
自費診療なくして、適切な歯科治療を行うことはできない
国民皆保険制度と歯科診療報酬
歯科医師の技術を安売りする日本
最低賃金を下回りそうな予防歯科の保険点数
保険診療では歯を削らないと報酬がもらえない
歯科医療現場で起きているジレンマ
虫歯の治療は初めが肝心
保険診療による薄利多売は現場の疲弊を招いている
医療費が高額なアメリカ
各国のかかりつけ医事情
オーラルケアに自信のある欧米人と自信のない日本人
広まりつつある予防歯科の重要性
医療者の自己犠牲で成り立つ日本の医療
しわ寄せを受けるコメディカル
新人もベテランもすべてが一律の治療費である日本
保険診療には現実に即さないルールも多数存在
ルールは医療の質を向上させるためにあるべきもの
アメリカでは定期健診を受けていないと保険が使えないことも
保険診療では世界標準の治療を提供することは難しい
保険診療と自費診療の違いは材料のみにあらず
症状がある場所だけではなく口の中全体を診る重要性
「歯を抜く歯科医師は悪い」という誤解
歯科医療従事者と患者双方のために、保険制度の改革が必要

第3章 表面的な教育制度と専門医制度
教育制度の改革なくして、日本の歯科医療の質の向上はあり得ない
虫歯を1本も治療しないで歯科医師になれる日本
アメリカでは学生が患者を治療、実践を通して学ぶ仕組みが確立
自身でクリニックも経営し、臨床経験豊富なアメリカの大学教授
巨大な国家試験予備校化する大学教育
ペーパーテストだけではなく級友や患者からの評価も成績に影響する
学生が教授や大学を評価する仕組み
教授に忖度しないアメリカの大学教育
医師と患者がフラットな関係性を築く
決まった答えを求める日本、答えのない問題を議論するアメリカ
日本では専門医の数が少なく認知度も低い
専門医でもそうでない医師でも治療費が同じ日本
大学が専門医を育成するアメリカ
知識の幹が育たない日本の専門医教育
日本の医療が海外で通用しなくなる!? 2023年問題

第4章 求められる経営リテラシー
強固な経営基盤なくして、患者に最適な医療は提供できない
日米における歯科クリニックの収入や歯科医師の働き方の違い
歯科医師の仕事が正当に評価されない日本
本当にやりたい治療をするために、自費診療を貫く
正しいことを正しくやるというスタンスを貫く
予約時に診療方針を伝える
自費診療と保険診療の両方をするべきではない
自費診療に力を入れるとスタッフもやりがいを感じられる
方針の共有や治療記録の作成は、患者に最適な治療を提供するため
歯科技工士の重要性
減少を続ける歯科技工士数
自費診療に対するマイナスイメージ
自費診療に神の手はいらない
自費診療に必要なものは覚悟
治療計画を立てることが重要
歯科衛生士を担当制にし患者との信頼関係の構築を図る
患者の口全体を診る診療
自費診療の唯一のデメリット
自分が納得いく治療をとことんできる

第5章 常識や制度に疑問を抱け
歯科医師一人ひとりが変われば、歯科医療の未来が変わる
今こそ医療保険制度を見直すべき
保険制度を変えることで社会保障費の抑制にもつながる
国民一人ひとりがもっと口の健康に関心をもてる社会に
コメディカルの地位の向上を
日本とアメリカのどちらにも一長一短がある
歯科医師をもっと夢のある職業に
国民の健康のため、より良い歯科治療を追求する
保険制度に負けずにまずは一歩を踏み出す勇気をもつ

おわりに

著者:土屋 嘉都彦

土屋デンタルクリニック 大分オフィス院長
1977 年生まれ。2002 年福岡歯科大学卒業、歯科医師免許取得。2008 年にアメリカ・インディアナ大学補綴科大学院修了。同年に米国歯科補綴ボード認定専門医を取得。2011 年に福岡歯科大学臨床教授(補綴科)に着任。現在に至る。

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