衰退産業の勝算

井上 善海[著]

2022.03.23

1650円(税込)

幻冬舎

単行本

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書籍内容

数々の逆境を乗り越え新たな市場を開拓した
岡山県の小さなストローメーカーの軌跡

安価な輸入品の席捲や廃プラ運動などにより衰退の一途をたどる国内ストロー業界。
そんななか、経営を立て直し再び成長する道を切り拓いたシバセ工業。
多品種小ロット生産、オープンイノベーション、外径検査装置の開発……。
V字回復を遂げた中小企業に見る、衰退産業の生き残り戦略とは。

1970年から外食産業の発展とともに成長してきた日本のストロー業界はバブル崩壊後、
安価な輸入品への置き換えや小口取引の減少などにより衰退し、
ストローメーカーは相次いで倒産や廃業に追い込まれていきました。
大手乳業メーカーのストローの下請け企業であったシバセ工業にも、
業界を取り巻く状況に対応できず生き残りに苦戦したという過去があります。
2002年には売上が最盛期の8割減にまで落ち込み、
さらにその後もプラスチックストローが環境に悪いという風潮が
同社を追い込んでいきました。
この窮地を抜け出すきっかけとなったのが、
既存商材である「飲料用ストロー」の見直しです。
「ストローは飲み物を飲むためのもの」という固定観念から離れ
「工業用ストロー」という新しい市場を確立したのです。
シバセ工業はそのほかにも
多品種小ロット生産への挑戦やM&Aによる製品ラインナップの拡充、
事業の多角化などさまざまな取り組みを行い、経営再生への道を切り拓きました。

業界を衰退させる出来事はいつ、どこで起こるか分かりません。
技術革新、ライフスタイルや価値観の急変など
あらゆることが業界存続の脅威となります。
しかし、ビジネスモデルの転換や技術の研鑽によって新たな市場を創出すれば、
業界の成長期と同様またはそれ以上の成長を実現することができるのです。
本書は、シバセ工業の復活と成長の記録を綴った一冊です。
新規市場の創出をはじめとした同社の取り組みについて解説し、
衰退産業に身をおく中小企業に活路を示します。

目次

はじめに

序章 価格競争、人材不足、消費者ニーズの多様化
――追い詰められる中小企業
中小企業は日本経済の屋台骨
耐えるお金、伸びるためのお金が足りない
働き手が足らず後継者が見つからない
変化への対応が遅れてしまう
衰退産業に身をおく中小企業は次の一手を打たなければならない
衰退の波からどうやって脱出するか

第1章 安価な輸入品の流入、大量生産、廃プラ運動の高まり
――吹き荒れる逆風で苦境に立たされるストロー業界
ストローの始まりは麦の茎の有効活用
日本のストロー業界の発展と衰退
突然の逆風となったウミガメ問題
素麺事業からストロー事業へ
パートナーとの出会い
売上6億円からの衰退

第2章 いかなる逆境でもぶれない企業理念が軸となる
――社員の幸せの追求なくして会社は成り立たない
ぶれない経営の鍵は企業理念
企業理念に触れる機会を増やす
社名を変えて企業理念を確立
マルチタスク化で会社の力を底上げ
企業理念の浸透がM&Aの成功につながる

第3章 V字回復の第一歩は既存商材の地盤固め
――多品種小ロット短納期を強みに国産市場で勝ち残れ
グローバル化で市場シェアが変化
独自性を生む経営方針と営業方針
技術の限界で大口の注文が消えた
後追いはせず自立の道を選択
ブルーオーシャンで着実に稼ぐ
自社企画を作るのは難しい
技術研鑽から生まれたタピオカ用ストロー
営業体制をゼロから構築
社内にない知見は社外から調達
M&Aで製品ラインナップを拡充
ノウハウが分からなければ真似されない

第4章 “オープンイノベーション”で新たな販路を切り拓く
――ストローに見いだした「薄肉パイプ」という価値
ホームページが新たな案を呼び込んだ
会社と事業を周知するためにホームページを開設
オープンイノベーション
イノベーションがない産業は消滅する
顧客がいないと事業にならない
ヒントを与えてアイデアを出しやすくする
1を100にする営業方法を展開
社員を巻き込んで営業施策を考える

第5章 新たな市場は自社技術の向上で守り抜く
――0.1㎜の誤差も出さない外径検査装置の開発
検査技術で事業を多角化
多角化で経営リスクを分散する
多角化がもたらしたチャンス
明日、明後日に向かう戦略を踏まえる
工業用、医療用は高度な技術が求められる
変化を即座に感知する検査装置を開発
多角化によってコロナ禍の影響を抑えた

第6章 社員のスキルを最大限に発揮する環境を整えよ
――清掃の徹底から着手した社内整備
社員満足を第一に考える
トイレ掃除は社長が責任者
タバコを吸わなければ手当がもらえる
感謝を伝えて居心地よい職場づくり
独自の休暇制度で社員の満足度を高める
BCPの準備がコロナ禍で役立った
資金不足の問題を解消
無借金経営のデメリット
非常時ほど情報開示が大切
社内教育の充実で時間を有効活用
ESを通じて負けない組織をつくる

第7章 衰退産業にも勝算あり
――既存事業をイノベーションし、新たな市場を切り拓け
衰退産業にも活路はある
何を、どう組み合わせるかが大事
5つの視点で変革を考える
持続的なイノベーションが持続的な成長を生む
事業承継とイノベーションの承継は別のもの

写真でみるシバセ工業

おわりに

著者:井上 善海

1954年生まれ。
企業経営者から経営コンサルタントを経て、現在は法政大学教授、博士(商学)。
理論と実践の融合をモットーに、
長年にわたって多角的な視点から企業経営に関わってきた。
人を大切にする経営学会副会長、
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞実行委員会副委員長。
主な著書に、『7つのステップで考える戦略のトータルバランス』(中央経済社)、
『ベンチャー企業の成長と戦略』(中央経済社)などがある。

ネット書店

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