もしものためのペット専門医療

中村 泰治[著]

2021.11.01

990円(税込)

幻冬舎メディアコンサルティング

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書籍内容

飼い主の意識×医療従事者の意識×治療技術
3つが掛け合わされて初めて、動物医療は進歩する

日本獣医師会の発表によると、1980年の犬猫の平均寿命は3~4歳でした。
1990年頃には約10歳、現在では13~14歳と40年の間に10歳を寿命が延びています。
ペットが長生きし、大事に飼われるのは喜ばしいことですが、
高齢化による病気のリスクは高まりました。
「がん」や「認知症」、「心臓病」、「関節疾患」など、
高齢になるとかかりやすい、人間と同じような病気がペットにも起こるからです。
(「はじめに」より抜粋)

飼い主のペットに対する健康志向が高まるにつれて、
動物医療に対して求められることは多様化し、専門的な知識が必要とされてきています。
内科、外科、耳鼻科、眼科……と細かく診療科が分かれている人間の病院に対し、
動物病院は多くの場合、1人の医師が全身すべての病気を診る
「1人総合病院」状態が一般的でした。
しかし、そこから脱却し、高度医療を担う施設や専門分野に特化した病院の増加、
施設間で連携し紹介しあう体制づくりなど、人間のような医療体制が求められています。
動物にも高度で専門的な知識を提供できれば、
今まで救えなかった命を救うことができるからです。
本書では、グループ病院全体で年間3000件を超える手術を行うなど、
動物の高度医療を目指す獣医師が、診断や治療の最前線を紹介し、
ペットの「こんなとき、どうする?」という悩みにも、
症状別に分かりやすく解説しています。

目次

はじめに

第1章 がん、認知症、生活習慣病……
高齢化で、ペットの病気が増えている
・愛玩動物からコンパニオンアニマルへ
・犬猫の頭数は子どもの数をはるかに上回る
・大きく変わる飼育環境
・ワクチンが普及し、感染症による疾患も減少
・多様化するペットの食事
・病気療養に使用する療法食も充実
・法改正で動物殺害が厳罰化
・ペット関連市場は1兆6000億円に拡大
・犬は14・48歳、猫は15・45歳、ペットの寿命が大幅に延びた
・高齢化で過去にはなかった病気が増加
・死因第1位はがん
・人間同様に起こる認知症
・豊かな食生活と運動不足が引き起こす生活習慣病
・軟骨がすり減る関節疾患も増加
・過去にはなかった病気を発見できる時代に

第2章 専門家の治療にたどりつきにくい動物医療の現状
・人間と動物の医療にある違いとは
・動物病院には「〇〇診療科」がない!
・人間の医療は特定の診療科に絞る
・エキゾチックアニマルなどは専門分化の傾向に
・「1人総合病院」状態が当たり前
・ペットの寿命が短かった時代の医療は通用しない
・そのてんかん、本当にてんかんですか?
・糖尿病だとしてもインスリンを打てばいいわけではないことも
・1人の獣医がカバーするには限界が
・「徹底的に治したい」、飼い主のニーズにも変化
・一次診療と二次診療の役割が明確な人間の医療
・専門医療への紹介体制が不十分
・少しの時間のロスが命取り
・猫に多い尿路結石
・症状を訴えることができない犬や猫たち
・専門医へのスピーディなアクセスがペットの命を救う
・人間の医療では専門医制度が確立
・まだまだ発展途上の獣医の専門・認定医制度
・高度医療にアクセスできる体制づくりが急務

第3章 「高度・専門医療」 がペットを救う
・ペットも一次診療と二次診療を使い分ける時代に
・専門医療はペットの健康寿命を延ばす
・一次診療の設備とは
・体内を3Dで撮影できるCT
・脳や脊髄をあらゆる角度から画像にするMRI
・検査から治療までタイムリーに行える二次診療
・内視鏡手術なら手術当日の帰宅も可能に
・かかりつけ医と専門医療を使い分けることが大切
・かかりつけ医との良好なコミュニケーションのメリット
・飼い主のリテラシーがペットの命を救う

第4章 循環器科、整形外科、脳神経科……
ペットを救う高度・専門医療の実際
1循環器科・心臓外科
・咳がサイン! 命に関わる心臓の病気
・血液が逆流して起こる僧帽弁閉鎖不全症
・小型犬に多く、犬の心臓病の9割を占める
・発症初期には無症状のケースも
・肺水腫になると溺れるような苦痛を感じる
・聴診器で心雑音を確認して診断
・かかりつけ医に紹介状を書いてもらう
・アメリカ獣医内科学会のステージ分類
・病気の初期は内服薬の投与で経過を観察
・手術で内服しなくてすむように
・人工心肺装置を使った手術
・内科的治療では一生涯、薬が必要に
・外科的治療は大きく症状を改善させることも可能
・手術と内服薬の選択はケースバイケース
・手術が成功すれば寿命が3倍以上になることも
・血流に異常が起こる動脈管開存症
・症状が進むとチアノーゼなどが出現
・カテーテル治療で手術の翌日に元気になることも
・肺動脈の弁が狭くなる先天性の心臓病、肺動脈狭窄症
・初期には無症状で、進行すると心不全などを引き起こす
・弁を広げるバルーン治療が有効
2整形外科
・小型犬や超小型犬に多い骨折の治療
・骨折の大半は「家の中」で起きている
・いつもと違う歩き方をしていたら要注意
・1度のレントゲン検査で分からなければ再度の検査を
・レントゲン検査では発見しにくい成長板骨折とは
・骨折の治療は早いほど回復も早くなる
・骨折の初期に強力に固定できる「プレート固定法」
・開放骨折に使用可能な「創外固定法」
・さまざまな術式を組み合わせて手術方法を選択
・早期のリハビリテーションで術後の回復を早める
・CT検査で骨折の状態を把握できる
・Cアームで手術時間を短縮
・3Dプリンターを使って骨のモデルを作成
・高齢になると増える関節疾患
・関節疾患で最も多い膝蓋骨脱臼とは
・生まれつきの体質などで決まることが多い関節疾患
・症状が現れず、気づかないケースも
・脱臼の程度や症状の強さで4つのグレードに分けられる
・触診・レントゲン・CT検査などによる脱臼の状態評価が重要
・日常生活では体重管理や滑らない環境づくりが大切に
・完治を目指すなら早期の手術がベスト
3脳神経科・リハビリテーション科
・脳の代表的な病気「てんかん」
・100匹いれば5匹はてんかんを発症する
・けいれん発作や発狂、虫を噛む動作フライバイト
・5分以上続く発作には要注意
・てんかん発作は、ほかに原因がないかを確かめる
・MRI検査や脳脊髄液検査が有効に
・確定診断には脳波検査が重要
・症状をコントロールすればQOLの向上につながる
・抗てんかん薬は生涯飲み続けなければならない
・先進医療では手術でてんかんを治療する試みもスタート
・てんかんを疑って受診したら腫瘍が見つかることも
・MRI検査で腫瘍や浮腫を特定できる
・小型犬に多い水頭症
・子犬の頃から異変が起こるのが特徴
・高齢化とともに増える認知機能障害症候群
・チェックリストで認知症の診断を
・リハビリテーションは認知症の進行予防に効果大
・激しい痛みや麻痺がおこる椎間板ヘルニア
・ヘルニアになりやすい犬種
・術後の機能回復にはリハビリテーションが効果的
4人工透析科
・尿に異常が現れる腎臓の病気
・数時間~数日間で急激に悪化する急性腎不全
・猫はユリの花、犬はぶどうで深刻な中毒を引き起こす
・猫に多い尿管結石・尿道閉塞
・内視鏡を使った膀胱結石摘出手術
・腎臓の悪化だけでは無症状のケースも
・急性腎不全のペットを救う血液透析とは?
・1年後の生存率は犬で3割、猫で5割
・慢性腎不全は進行に気づかない
・特に気をつけるべきは「脱水」
5内視鏡手術
・体に優しい内視鏡手術でここまで治療ができる
・潜在精巣を気づかずに放っておくと腫瘍化のリスク大
・わずか1センチ未満の小さな穴から手術を実施
・内視鏡手術は手術後の回復が早い
・避妊手術・去勢手術で生殖器に関係する病気を予防
・重症化すれば死のリスクもある胆のうの病気
・初期は無症状、進行すると黄疸なども
・胆のう摘出手術を内視鏡下で行うことも
・大型犬に多く発症する胃の捻転
・内視鏡を使った予防手術をすれば発症を防げる

第5章 ペットの存在がますます人々を支える時代へ――
・東日本大震災をきっかけに高度医療へ舵を切る
・日本はペット飼育の後進国
・適切なしつけを学べる仕組みが必要
・海外では動物税がある
・あらゆる年代の人がペットを飼育できる社会を
・ペットの飼育がもたらすさまざまな効果
・子どもの思考力、理解力、判断力などがアップ
・高齢者の健康寿命延伸や認知機能が向上
・アニマルセラピー
・動物と触れ合うことで「幸せホルモン」が活発に

おわりに

著者:中村 泰治

1995年日本大学卒業。獣医師。
得意とする科目は、一般外科、腎泌尿器科、脳神経科。
師匠の教えである「見る・触る・聞く」の初心を忘れずに
「異変にいち早く気づく」姿勢と大学病院のような高度な検査や治療を両立することで
「少しでも助けられる命を増やしたい」を信念としている。

ネット書店

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