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【著者インタビュー】留学先での出会いが人生を変えた 医師が語る今をもっとラクに生きるススメ
北海道札幌市の桑園オリーブ皮膚科クリニックで院長を務める米田明弘医師は、研究者としてアメリカに留学をした際にキリスト教の教えに出合ったことで、そこから人生が大きく変わったといいます。 人は不安やストレスとは無縁ではいられませんし、また、自分で自分を認めるのも簡単なことではありません。 実際にどんな教えが心に変化をもたらす要因になったのか、そしてどんな人生へ導かれたのか。著書に込めた思いについて伺いました。
神様と出合って救われた自分がいる。大いなる存在を信じることで、実際に自分の人生が大きく変わった
――著書『夢をもたない生き方』刊行のきっかけをお聞かせください。
私は医師として大学病院に勤め、その間に約4年間の研究留学を経験し、2014年に現在のクリニックを開業しました。ずっと無我夢中でやってきましたが、振り返るとアメリカ留学中にクリスチャンとなり、信仰をもったことが自分に変化をもたらしたことに気づいたのです。
おかげさまでクリニックも順調ですが、もしあのときキリスト教と出合っていなかったら、人生がまったく違っていただろうと思うのです。何より心のあり方が変わりましたから、こうした境地に至るきっかけやそこから得られたことを多くの人に伝えたいと思うようになったのです。
ただし、必ずしもキリスト教を広めたいというわけではなく、こうした心のあり方を知ってもらいたいという気持ちです。
――キリスト教とはアメリカで出合われたのですね。どのような経緯があったのでしょうか。
そもそもアメリカへ研究留学をしたのも、私にとって憧れの人が海外でバリバリと活躍していたからです。医師として働き始めたときの上司にあたる人(教授)ですが、「その人みたいになりたい」という気持ちから海外を目指すようになりました。
もう20年前のことですが、当時の日本は国際的にも強い国でしたし、自分にも競争意識が強くありました。人に負けたくないという思いでいっぱいでしたし、そして自分ならできると思っていました。
ところが、意気揚々とアメリカに渡ってみると、そこには想像以上に厳しい現実が待っていました。その詳細は本に書きましたが、意に反して大きな挫折を味わうことになってしまったのです。
キリスト教に出合ったのはそんなときです。住んでいた家の向かいがたまたま教会だったのですが、当時の私は何の興味も抱いていませんでした。しかし、私と同じように海外生活や子育てに悩みを抱えていた妻が、先に教会の子育てサークルに参加するようになり、そこからいろんなきっかけが重なって、妻と私は同時に洗礼を受けてクリスチャンになったわけです。
――最初からキリスト教に興味がおありだったのではないのですね。
むしろ反対でした。私自身は異国の地で研究者として成果を出そうと必死に孤軍奮闘している感覚ですから、教会のもつ温かな雰囲気に嫌悪感さえ覚えていたのです。今となっては笑い話ですが、当時の私はそれだけ殺伐とした精神状況にあったといえるでしょう。
キリスト教に何の興味もなかった私が、ちょっとしたきっかけから教会に足を運ぶようになり、そこからキリスト教の世界に触れていきます。少し本質的な話にもなりますが、聖書の世界の最初にあるのが旧約聖書の第1章の「創世記」のくだりです。神が何もないところから「神は天と地を創造した」とする天地創造のストーリーです。
それを教えられたとき、私は「とても信じられません」とはっきり答えたのを今でも覚えています。一般常識として、生物の起源は進化論がベースになっていますし、私は医師であり研究者でしたから、当然といえば当然です。
進化論において、生物は「偶然できたもの」と考えられています。一方、キリスト教では、創造主、つまり神様が意志をもって「つくりたい」と考えたことで世界が生み出されたとされています。
それまでの自分はとくに疑問も抱かずに「進化論」を信じていましたから、我ながら不思議ですが、聖書の世界に触れていくにつれ偶然できたとするより、愛情深い神様が意志と目的をもって世界をつくったのだとする考えに惹かれ始め、信じてもいいかなと思うようになっていきました。
――キリスト教を信じることで、ご自身はどのように変わっていきましたか?
キリスト教との出合いは、私にとってはイエス・キリストとの出合いという感覚です。イエス・キリストの生きざまを学ぶ中で、私自身も救われた思いになり、いろんなことが楽になっていったのです。それは自分にとって驚きでした。
また、それまで仕事一辺倒だった私の頭の中には、いわば“昭和”の価値観がこびりついていました。男性は仕事を頑張り、女性は家を守るものだと決めつけ、家庭のことは妻に任せきりにしていました。
妻は来たくもないアメリカに連れてこられ、1歳と2歳の幼子を抱えて大変な思いをしていたのに、私はそれに目を向ける余裕もなかったのです。ですから夫婦関係は最悪でしたが、妻もやはり教会に救いを求めたわけで、それからは子育ても含めて家庭内のことは2人で協力し合うようになり、夫婦のあり方もすごく変わりました。
すべての人はありのままで価値がある。がんばってもいいし、がんばらなくたっていい。
――『夢をもたない生き方』というタイトルには驚かされますが、それは実際にどのような生き方なのでしょうか。
ここで伝えたかったのは、夢をもつことが悪いわけではなく、競争社会に生きていた昔の私のように目標や夢を追いかけることがすべてではないということです。
競争に明け暮れていると、人と比べて優越感に浸ったり、あるいはうまくいかずに劣等感に苛まれるかのどちらかです。それはいずれも幸せとは程遠い状況です。
著書の冒頭でも紹介していますが、聖書に「わたしの目には、あなたは高価で貴い。わたしはあなたを愛している」(イザヤ書)という一節があります。すべての人に価値があり、皆が神様から愛されているということです。
私自身、競争社会の中で走り続けてきたわけですが、ずっと勝ち続けられるわけではありません。そんな状態で自分に価値を見いだすのはとても難しいことです。人に対しても勝ち負けで評価を下してしまいます。
でも、そこで少し意識を変えて神様の言葉に耳を傾けると、「そんなにがんばらなくたっていいよ」ということなのです。まさに肩の荷が下りるような気持ちになるでしょう。
――勝ち負けで人の価値が決まるわけではないということですね。そのように考えると、たしかに不安やストレスから解放されそうです。
そうだと思います。そこで私の経験の中から「誰かと比べない」「心配しすぎない」などの具体的な項目に分け、聖書の一節とともに解説しています。
とくに重要な項目として「目的を意識して生きること」「感謝の心をもつこと」「すべての人に価値があると知ること」などを挙げています。「目的をもつ」というのは、自分がやるべきことをはっきりさせることです。
また「感謝の心をもつ」のは一見当たり前のことのようですが、意外と難しいものです。たとえば、反対に感謝のない状態を考えてみると、すべてを自分で成し遂げたと思うような一種傲慢なあり方です。
そうではなく何事も神様のおかげだと思うことで、あらゆる自分のあり方がかわってきますし、楽になれるはずです。ときには自分が思うよりももっと大きな恵みを得られることもあるのです。
私がこうしてキリスト教や神様のことばかりをいうと、それに縛られているのではないかと思う人がいるかもしれません。でも、実際は信じることで解放されて、自由になれるのです。それは自分でもとても不思議なことでした。
クリニックを経営していると、いろんな出来事があり、責任者として決断を迫られることもあります。そんなときに信仰のおかげで、すべてにおいて神様が必要なものを与えて下さるのだから、とんでもないことにはならないと安心していられます。
これは親子の関係に似ています。私の父親はいつも愛情を注いでくれ、安心感を与えてくれます。自分にとって絶対的な“父なる神”の存在を信じることで、不安にとらわれず、傲慢にもならずに安心して自分の力を発揮できるのです。それは信仰をもったことで感じた大きな変化です。
大切なのはひたすら感謝すること。勇気をもってチャレンジし、“自分がしてもらいたいこと”に徹する
――そうした境地は日々の治療やクリニックの経営においても生かされているということですね。医師として大切にしていることはどのようなことでしょうか。
医師の役割は病気を治すことです。医療技術は日進月歩ですから、常に新しい知識に触れる必要がありますし、日々努力するしかありません。常に真摯に、そして誠実に向き合っていきたいと感じます。
しかし、誤解を恐れずにいえば、医師は神様ではありません。人間ですから限界があります。でも、だからこそ人として、医師として、最善を尽くしたいのです。
信仰を持つ前は、治療しても改善しない人がいると、処方した薬をちゃんと使っていないのではないか? などと疑ってしまうこともありました。でも、今ならあらゆる状況を想定し、ある種の謙虚さをもってできる限りの努力をします。
変化の時代にあって、知識を得るだけでなく、それを実践することには勇気がいるものです。すべてのことに自分が責任をもって取り組まなければいけません。しかし信仰のおかげで最後には神様が守ってくれると思えますから、恐れずにチャレンジもできるのです。
――ご自身とクリニックの今後の展望をお聞かせ下さい。
医療機関といっても知識や技術だけではなく、他者への思いやりやホスピタリティをもつことも大切です。大勢のスタッフがいますから、皆で心を1つにしてやっていきたいと思いますし、スタッフに対しては、ストレスの少ない職場、働きやすい環境にしていきたいと思っています。
また、私どものクリニックでは予約制を始めたのも早かったと自負しています。効率的なしくみを取り入れて待ち時間を少なくし、会計の手間を減らすなど、さまざまな工夫をしています。実のところこれらは新型コロナの問題が起こる前からやっていたことでしたが、常に危機を想定しておくことも大事なことです。その上で、治療においては最大限、悩みを抱えた患者の皆様の心に寄り添いたいと思っています。
――今回の著書では心のあり方を説いていらっしゃいますが、不安と不満を感じている多くの人の支えになりそうです。
現代はストレスの多い時代であることを実感しますが、多くの問題は人間関係に端を発しているのではないかと思います。
仕事としてサービスを提供する立場にある人が、逆の立場になると必要以上に愚痴や不満をぶつけたりすることがあります。そういう事実を知ると、日頃どれだけのストレスを抱えているのか、そして愛に飢えているのではないか、などと思ってしまいます。
冒頭で神様の言葉を紹介したように、自分は「愛されている」「そのままで価値がある存在である」ということを真に理解できれば、人にも優しく接することができますし、何より不安やストレスから解放されていくと思うのです。
他者に対しては「自分がしてもらいたいことをする」という一言につきます。人が何を求めているのかを想像すること、そこから一歩踏み込んで、ときに余計なおせっかいであったとしても他者への愛情をあらわすことが必要なのではないでしょうか。
効率ばかりを求めていたらできないことですが、遠回りにみえても結果的に物事がうまく回り出すことにもなるはずです。それは私自身が体験してきました。かつての高飛車な自分のままだったら、経営がうまくいったとしても不安は消えなかったでしょう。
生き方が少し変わることで、現実が大きく変わることを体感し、それを多くの人に共有したいと思います。不安定な時代だからこそ、愛と祝福にあふれた人生を手にしてほしいと思うばかりです。