[PR]
【著者インタビュー】趣味や仕事も諦めない 透析患者のための新たな選択「セルフ透析」の魅力
透析患者は多くの我慢を強いられています。1日4時間の透析を週に3回、年換算すると600時間以上。日々の生活が制限されるだけでなく、体調不良が常につきまとい、食事制限によって食の楽しみも奪われています。しかも、つらさに耐えたとしても生命予後は厳しいもの。透析開始からの命は60代男性で8年とも報告されています。 不安と不満を抱えながらも、多くの透析患者は「透析とはこういうもの」「仕方ない」と人生を諦めているのが現実です。 「これまでのやり方では確かに諦めざるを得ないことがたくさんあるかもしれません。しかし…」と『生命予後が劇的に改善するセルフ透析』の著書である櫻堂渉氏は語ります。患者自身が自分の体調と向き合い、透析の時間数や日数をコントロールできれば、QOL(生活の質)は飛躍的に向上すると断言するのです。 自著に込めた思い、そして「セルフ透析」の画期的な手法について語ってもらいました。
生活の質を向上する患者にとって本当に望ましい新しい透析のかたちを作りたい
――医療経営コンサルタントでありながら、透析施設をプロデュースされた思いをお聞かせください。
私は医療従事者ではなく、医療コンサルタントです。本来はクリニックや病院の利益向上を図るのが仕事ですから、透析施設で言えば「いかに患者の回転数を上げるか」「無駄なく透析設備を使用するか」をテーマに経営指南を行うのが普通でしょう。
しかし、これまで出会った透析患者とのやりとりの中で「利益重視を続けていたら、透析患者の自立は叶わない。そして透析を続けても、健康結果の低下を招いてしまう」と確信しました。
コンサルタントして私が取り組むべきは、施設の利益より、まず患者のQOLを上げるために「HDP(Hemodialysis Product)=透析量の適正さ」を上げることでした。HDPとは1週間に行う透析の回数と透析時間を数値化したもので、「HDP=(1週間の透析回数)²×(1回の透析時間)」で算出します。この値が大きいほど、患者にとって望ましい透析、つまり「元気で長生き」「生活の質が上がる」透析と言えるのです。
一般的な透析施設では、保険適用が可能となる「週3回、1回4時間」の透析が実施されていますが、HDPの計算をすると「36」と算出されます。透析量の適正さで言えばHDPは「72」以上が望ましい。つまり、ほとんどの透析患者は適正な透析の半分の恩恵しか受容できていないのです。
この事実を知った私は医療機関や国の医療管轄機関などを回り、HDPをアップさせる透析の仕組みづくりが喫緊と訴えました。しかし、現状の経営システムを崩したくないとの思いからでしょう、大きな力が動くことはありませんでした。
こうなったら仕方ない。自分たちの力で施設をプロデュースするしかないと一念発起し、患者自身が自分で透析の時間や回数を選択できる透析施設の経営に着手したのです。
好きな時間に好きなだけ。HDPを向上し、社会復帰を促す「セルフ透析」
――セルフ透析とは具体的にはどのようなものでしょうか?
自分で穿刺や透析の機器の操作をし、好きな時間に好きなだけ透析を行うことを「セルフ透析」と言います。「自分でできるのか?」と不安に思うかもしれませんが、適切なトレーニングを受ければ、回路の組み立てや機器の設定、穿刺まで、誰でもマスターできます。
セルフ透析には自宅で行うものと、施設で行うものの2種類があり、自宅で行うものは「在宅血液透析」と呼ばれます。その歴史は古く、透析そのものが始まったころから利用している人はいるのですが、自宅に透析機器を設置するスペースをつくる、水道や電気の改装工事が必要といったハードルの高さから普及しているとは言えません。
同時に、在宅ということで、医師の目を離れて透析することに不安を持つ患者も少なくありません。電話やネットをつないで医師とやりとりはできるものの、緊急時に医師がすぐ対処してくれない不安は大きいと予測できます。
そこで私が考えたのが「施設で、在宅と同様の透析をする」というアイデアでした。一般的な施設透析のように、決められた日程でしか透析できないという縛りを解き、好きな時間に好きなだけ施設での透析を可能にする。それによって仕事やプライベートの時間を優先できますし、何よりHDPが向上し、体調が圧倒的に改善されます。合併症の軽減、食事制限の緩和などもすぐに実感できるようになります。
――桜堂さんがプロデュースされている「Oasis Medicalのクリニック」ではどのように「セルフ透析」を行えるのでしょうか。
我々がプロデュースするOasis Medicalには現在、「東京新橋透析クリニック」「田端駅前クリニック」の2か所があります。ビジネスマンが利用しやすい立地を考え、駅から近い場所を選択しました。ホテルのような快適な設備を完備し、リラックスして透析を受けられるように工夫しています。TVや高速Wi-Fi、映画鑑賞が快適に行えるVOD(video on demand)のシステムの導入に加え、リモートワークやWEB会議を気兼ねなく行える個室も用意しています。
完全予約制で待ち時間は一切ありません。夜間透析(施設により終了時刻は異なる)にも対応、土曜日も営業し、HDPの向上を目指す患者の応援をしています。
透析量は自身で管理できますが、専任トレーナーが常在しているので、疑問や不安があればいつでも相談ができます。看護師、臨床技師のサポートも受けられますから、「セルフ」でありながら、安心感は十分得られると自負しています。
セルフ透析で人生が変わった透析患者たち
――「Oasis Medicalのクリニック」にはどのような患者さんが通われているのでしょうか。
現在、通われている患者はほぼ100%ビジネスマンです。トップ企業の重役の方や多方面で活躍する経営者の方も多くいらっしゃいます。リモートワークが増えていることもあり、日中、仕事をしながら、リモート会議をしながら透析をする方もいます。ビジネスで関わる周囲の人に「透析患者」であることは一切知られず、仕事をしていると話す人もいます。
仕事中に透析できることで、時間を有効に活用することができ、家族と過ごす時間ができたり、仕事帰りに映画を見ながらリラックスして透析をされるという人もいます。とはいえ、実際、利用されている患者から最も多く聞かれるのは「体調がよくなった」という声です。
――なぜ「体調がよくなった」という声が多く聞かれるのでしょうか。
HDPは1回の透析時間よりも、実施する回数のほうが体調に大きくかかわることがわかっています。「回数インパクト」と呼びますが、週に3日より4日、4日より5日と、回数が増えるほど体への好影響が期待できるのです。
一般的な施設透析のスケジュールは「月水金」または「火木土」の週3日で組まれていますから、セルフ透析で回数を増やした場合との健康結果は歴然となります。
また、週3回の透析の場合、週明けの月曜日や火曜日は体調が悪くなる傾向にあります。週3回の透析を行っているビジネスマンの方にインタビューすると「週明けは頭が働かず仕事にならない」「体調の悪さは耐えられても、集中力が欠けて困る」といった話をたびたび耳にします。
当施設を利用されている50代の企業トップの方は「週5日通っているが、週明けの頭のクリアさが以前とはまったく違う」と感想を漏らししています。血液が浄化されることで、老廃物や毒素が抜け思考力も研ぎ澄まされるのかもしれません。
――他の透析施設から転院されてくる患者さんが多いとお聞きします。
一つ例を出しますと、24年間同じ施設で透析を受けていた50代の男性患者が、私たちのクリニックに転院されてきました。彼いわく、週3回の透析は「真綿で首を絞められるようなもの」だったそうです。透析を受けて命をつないでいるのはわかるけれど、体調は確実に悪化している。この先の人生を考えると、何か別の方法があるのでは…と模索していたところ、当時の主治医から私たちの施設を紹介され、転院に至りました。
転院後の彼は、わずか2か月で明らかな体調の変化に気づきました。「今は体調が悪い日はほとんどありません。透析を始めて四半世紀経ち、初めて長生きしたいと思うようになりました。自分の健康を自分で管理できる力をつけ、親孝行できるように頑張りたいと思っています」と話しています。こうした患者の声が、私の歩む道の大きな支えになってくれています。
透析患者のセルフマネジメントを向上させるために
――櫻堂さんの今後の展望をお聞かせください。
患者を主体とした経営支援を今後も続けていきたいと考えています。患者の健康結果の控向上を常に目指し、透析の自由度をより一層引き上げ、患者のモチベーションが上がるような愛のこもった施設づくりを普及するのが使命と感じているからです。
また、患者自身にも「セルフマネジメント」の重要性を説く必要性も実感しています。自身の病気、体調と向き合い、透析についても医師任せではなく、自分に合った時間や回数について考え、施設の選択を諦めないで欲しいのです。
現在も行っている透析患者のためのニューズレターの発行に加えて、今後は透析患者のための「セルフ管理アプリ」も稼働が開始されます。透析患者が人として当たり前の心を持ち、自身の考えで治療を選択して生きていかれるように、私も全力で取り組んでいきたいと思っています。