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なぜ30代で社長を任されたのか-株式会社サンコミュニケーションズ代表・深澤哲洋氏の“リーダー力”
20~50代の正社員400人を対象にした2020年の調査で、「管理職になりたくない」と回答した人が83%にのぼったそうです。 たしかにリーダーは予算の責任を負いつつ、チームを管理しなければならないので大変そうなイメージがあります。 そのように感じている方にぜひ読んでいただきたいのが、書籍『新時代のリーダーに必要な12のチカラ』です。突然、会社を託された30代の社長は、どのようにリーダー力を身につけていったのか、著者の深澤哲洋氏にお話をうかがいました。
なぜ39歳の若さで次期社長に指名されたのか?
――39歳での社長就任はかなりお若いと感じるのですが、どのようなきっかけだったのでしょうか?
きっかけは前社長が病気で長期入院になったことです。しばらく社長不在の経営が続いていたのですが、創業者である会長の後押しで僕が社長に就任することになりました。自分よりも年上の方やスキルの高い方がいるなかでの抜擢だったので、どのようなリーダーになれるのかといろいろ考えて、最初の一年間、思いを伝えるために毎日社員向けにコラムを書きました。それが思いのほか好評だったので本にまとめることにしたのですが、結局、新たにテーマを決めて書き下ろしました。
――次期社長に指名されたということは、かなりリーダーシップを見込まれていたのですか?
リーダーシップにもいろいろなかたちがあると思いますが、僕はカリスマ性を持った、いわゆるリーダーっぽいタイプではないと自己分析していました。ただし振り返ると、子どもの頃からリーダーというか、みんなのまとめ役になることが多かったような気がします。そこで、いわゆるリーダータイプでなくてもリーダーになれるよと伝える本を作りたいと思って書いたのが『新時代のリーダーに必要な12のチカラ』です。
――子どもの頃からのリーダー遍歴について聞かせてください。
僕は1978年生まれで、今年2023年で45歳になりました。小学生の頃には少年野球のチームに所属して副キャプテン、学校では学級委員長を務めていました。中学からは陸上部部長で、学年委員長でもありました。先生から「生徒会長に立候補してくれないか」と頼まれたこともあります。目立ちたがり屋で、主役になりたがるところがあったからかもしれません。その後、高校で始めたバンド活動が楽しくなって、大学を卒業後も就職せず、そのままプロを目指して音楽を続けました。生活費はアルバイトで稼ぎましたが、そこでもバイトリーダーを務めていました。
27歳のときにバンドが解散して、当時すでに結婚していた僕はここで夢を諦めて就職することにしました。正社員経験なしのフリーターだったので面接では落とされまくったのですが、そんな僕を面白がって拾ってくれたのが、今僕が社長を務めているイベント制作会社、株式会社サンコミュニケーションズです。28歳で初めての就職でした。「不夜城」と呼ばれるほどの激務のおかげで短期間のうちに成長できて、上の人がどんどん辞めていったこともあり昇進が速く、気づいたら社長になっていました(笑)。
新時代のリーダーに必要な「12のチカラ」とは?
――著書『新時代のリーダーに必要な12のチカラ』で説明しているリーダーシップについて教えてください。
社長になったときに、どういうリーダーが望ましいのかを考え、これまでのリーダー経験で役に立ったことなどを分析して、リーダーに必要な力を12個に分類しました。詳細は書籍に譲りますが、どれも努力や気の持ちようで身につけられるものだと考えています。
特にみなさんに知ってほしいのが「いじられ力」です。一般にリーダーというと、みんなに尊敬されつつも、敬して遠ざけられるような、とっつきにくさがあると思うのですが、僕はそういうリーダーになりたいとは思いません。人に命令するのも好きではないですし、人から怖いと思われると情報が入ってこなくなるからです。
接しやすく話しやすいリーダー像とは何かと考えて出てきたのが「いじられる力」です。嫌がっている部下をいじるとパワハラになりますが、リーダーがいじられると場が和みます。いじられることを許す心の広さがリーダーにあれば、チームの空気もよくなります。人を引っ張っていかなければならないと肩ひじを張るリーダーが多いのですが、自分勝手に突き進んでも周りはついてきません。
――なるほど。理想のリーダー像はありますか?
リーダーというとすぐ決断ができてカリスマ性があるような人をイメージするのですが、今はすぐにパワハラ、セクハラと言われてしまう時代なので、自分がやりたいからで突っ走ってもうまくいかないと思います。それよりは、自分を抑えてみんなのことを考えてあげられるような、社員に寄り添うリーダーのほうが良いのではないでしょうか。自分は昔からそういうタイプでした。カリスマ性は努力で身につけられるようなものではないので、みなさんがリーダーになるときも、話を聞くタイプを目指したほうがやりやすいと思います。
――「12のチカラ」の一つにも「傾聴力」とあるように、部下の話をよく聞くリーダーがよいのですね。しかし、それだけで社長が務まるものでしょうか?
「12のチカラ」の中には「主役力」も入っています。時代に合わせたり、部下に合わせたりする柔軟性は必要なのですが、それだけでなく、自分の考えやカラーを出していくことも重要です。僕は社長になってから、今まで「会社の体質が古いなあ」と感じていたことをどんどん改革していきました。
たとえば、これまで経費精算や勤怠管理は、エクセルシートをプリントアウトしてハンコを捺して回していたのを、クラウドのシステムを導入してオンラインで完結できるようにしました。また、会計システムもクラウドにして、会計事務所と連携してDXに対応しました。オフィスの座席も固定席をやめ、コロナ禍にいち早くフリーアドレスに変えました。これらの改革が受け入れられたのは、ただ自分がやりたいだけではなくて、みんなのためになる施策だったからです。
――リーダーはただのまとめ役ではないのですね。では、経営者として大切にしていることを教えてください。
スピード感です。何かをやりたいと思ったときはまず行動して、駄目だったら止めるくらいのスピード感で仕事をしています。それだけだとワンマン経営になってしまうので、やりたいことの土台には、社員を幸せにすることをおいています。まず社員が気持ちよく働ける環境を作れば、みんなが辞めなくなって成長するようになり、それに伴って売上も業績も上がっていくと考えています。しかし、従来の仕事の効率が上がるだけだと、同じことの繰り返しになってしまうので、みんなが面白く仕事を続けていけるように、ときどき自分がやりたいこととか新しい事業とかに挑戦するようにしています。
働きやすい環境を整えれば人は定着する
――さきほど、入社された頃は激務で人がよく辞めていたという話を聞きました。今はいかがですか?
離職率はかなり下がりました。辞める人も、不満ではなく前向きな理由を口にすることが多くなっています。不満が出ないようにするには働く環境が大事だと僕は考えていて、福利厚生と職場環境の整備に力を入れています。たとえば会社をリフォームして単純に見た目をきれいにしたり、心が安らぐように緑を増やしたり、女子トイレが少ないという意見が出たので増やしたり、社内ではコーヒーやヤクルトなどを飲み放題にしたりしました。
また、イントラネットでは社員同士で感謝の印にコインを送れるようにしてあって、そのコインが溜まったら外で使えるポイントに交換できる仕組みをとりいれています。リモートワークも推奨しています。出社義務をなくしたので、今の出社率は3割くらいになってしまいました。働く環境はだいぶ自由にしています。人間は締めつけると反発するのですが、自由にやっていいよというと意外ときっちりとしてくれるのだと実感しています。
――それは先進的ですね。やはり社長が若いと考え方も新しいのでしょうか。
僕自身は昔のきつい職場もそんなに嫌ではありませんでした。激務のおかげで早く成長できたので、感謝しているくらいです。当時、うちの会社は忙しいから1年で他社の3年分成長すると言われていて、実際に28歳で初めて社会人になった僕でも、30歳の頃にはプロデューサーとして、予算が億単位の仕事を任せてもらえました。
ただ、ワークライフバランスの時代でもあるので、残業が嫌だという声にも耳を傾ける必要があります。「12のチカラ」の一つに「寄添い力」があるように、社員の声にも時代の変化にも寄り添うことが大切です。昔は、イベントの現場が終わるとベテラン社員が新人に「後片付けやっておけよ」と言って飲みに行ったりしていましたが、今は若い子に無理させると辞めてしまうので、新人は先に帰してベテラン社員が後片付けをしたりしているようです。
また、昔は退職金制度なんてなかったのですが、今は5年以上在籍した社員には退職金の積立を会社負担でするようにしました。最近では、男性の育休も1ヶ月程度取ってもらいました。やっぱり、僕自身がそういうことで妻に文句を言われてきた過去があるので、みんなの家庭も大変だろうなと思って、できる限りのことはしてあげたいと考えています。
――素晴らしいですね。最後に、これからリーダーになる方へのメッセージをお願いします。
リーダーというものを、すごく優秀な能力がなければできないものだと考えてしまう人もいると思います。実際はいろんなリーダーがいても良いと思いますし、リーダーも多様化していて、自分では気づいていないけれどもリーダーの素質がある人は多いってことを伝えたいですね。リーダーは特別なものではなく、誰でもなれるものだし、そのためのチカラは努力や気の持ちようで身につけることができるとわかれば、もっと多くの人がリーダーシップを持つようになって、世の中が元気になるのではないかと考えています。