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【著者インタビュー】災害大国の日本、個人住宅にもっとRC造を
東日本大震災のときもそうでしたが、いったん大きな災害すると、個人住宅にも大きな被害が及びます。ところがいまなお、日本では個人住宅といえば木造が圧倒的に多数を占めています。 理由としてよく挙げられるのが「日本人は木の温もりが好き」ということ。しかし、内装に木をとりいれれば同じはず。一方、耐震性や耐火性、耐久性などを考えれば、マンションと同じように個人住宅においてもRC造(鉄筋コンクリート造)のほうが優れます。問題は、個人住宅でRC造を得意とする工務店がそれほど多くはないこと。 こうした状況に風穴を開けるべく、志を同じくする同業者とネットワークを組みながら挑戦しているのが、株式会社RC design代表取締役社長・井上功一氏です。井上社長がRC造の個人住宅にかける思いについて伺いました。
災害に耐えられる、安心・安全な家=RC住宅
―― 今回、『安心・安全な家を建てるなら、RC住宅を選びなさい。』を刊行されたきっかけをお聞かせください。
日本ではRC造(鉄筋コンクリート造)の住宅というと、マンションではごく普通ですが、個人住宅ではあまり普及が進んでいません。統計上、新設着工数(国内で新築された建物の総数)の約6割を木造が占め、特に個人住宅に限ればいまなお9割ほどが木造です。
しかし、木造というのは本当に日本の気候風土に合ったベストな建築構造なのかというと、私は疑問に思っています。なぜなら、日本は地震、大雨、台風など世界的な災害大国です。
気候変動による異常気象が相次ぎ、日本列島は地震や火山の活動期に入ったとも言われます。しかも、大都市圏は河川の下流域や埋立地で地盤が軟弱なため、例えば地震保険の料率は千葉、東都、神奈川が全国でもっとも高くなっています。
いまこそ、安心・安全な家を建てるなら、RC住宅に目を向けていただきたいと思っているのです。
―― RC住宅の一番の魅力・メリットはどのような点でしょうか。
RCとは、Reinforced Concreteの略で、鉄筋で補強したコンクリートのことです。コンクリートは重たくて圧縮に強い材料ですが、引っ張りには弱い性質があります。そこで引っ張りに強い鉄筋を入れて補強するとともに、火に弱く錆びやすい鉄筋をコンクリートで覆い、耐震性、耐火性、耐久性、遮音性などに高い性能を発揮します。
RC造とは、RCを柱や梁、床スラブなど建物全体を支える主要部に用いた構造という意味です。 RC造は特に、大地震での被害を抑えるために有効です。大地震による死者の多くは、建物の倒壊と火災によるものであり、地震が多い日本においてRC造は最も安心・安全な構造だと言えます。
そのほか、RC造は水害や土砂災害においても簡単に流されたりはしませんし、木のように腐ったり、シロアリの被害を受けることもなく、メンテナンスをきちんと行えば寿命(耐用年数)は木造などに比べてはるかに長くなります。
国が定める法定耐用年数(住宅用)においても、木造は24年、軽量鉄骨造は19年また27年なのに対し、RC造は47年とされています。
欧米では50年以上、中には100年以上住み続けられている個人住宅がたくさんあるのに、日本では平均30年くらいしか使われていません。これには様々な要因が関係していますが、やはり雨が多く、湿度が高い日本の風土において、木造という構造の問題が大きいと思います。
こういうと、京都や奈良には何百年も前に建てられた木造の寺院などがあるといった反論を受けますが、そうした木造建築物は水はけのよい土地に建てられ、丁寧にメンテナンスされてきたからであり、むしろ例外です。
鎌倉時代末期に書かれたとされる吉田兼好の『徒然草』には、「家の作りやうは、夏をむねとすべし」(家を建てるなら湿潤な夏を基準にすべき)とあるように、昔から日本では家をつくる際、風通しよくすることが大事とされてきました。それは、木が湿気によって腐ったり、シロアリにやられたりしないようにする知恵だったのです。
独自の工法や自社職人による自社施工で高品質のRC住宅を適切なコストで提供
―― RC住宅を設計・建築する際にどのような点を大切にしているのでしょうか。
日本では個人住宅にもっとRC造を導入すべきだというのが私の考えですが、すべての人がRCを受け入れるのは難しいのも事実です。
大事なのは、家を建てようという人の住まい方、暮らし方に対するニーズや希望です。住宅の構造はそれを実現するための手段にすぎません。
ただ、これまでの経験上、家を建てようと考えたとき、何を大事にして、どんな空間にしたいのか、明確なイメージが固まっていない方が意外に多いように感じます。
まず土地だけ確保し、残りの予算で建物を検討すると、構造などにあまりコストを掛けられなくなってしまいがちです。
私としては、施主が家に求めている本当のニーズや希望についてじっくりお聞きし、それを実現するための提案を心がけています。
家とはそもそも、家族が暮らす居住空間としては建物がメインであるはず。土地も大事なのですが、バランスを意識していただきたいですね。
災害大国の日本、夏は湿度の高い日本において、100年3世代住み続けられる家をつくるには、RC(鉄筋コンクリート)がお勧めだと私は確信しています。
30年ごとに自宅を建て替えていたのでは、収入の多くを建築費などに注ぎ込まなければならなくなり、その他の生活を切り詰めざるを得ません。寿命の長い住宅は、ライフサイクルコストに優れ、豊かな生活のベースとなります。
一方、RC造にはこれまで、コストが高いという印象がありました。確かに、木造や軽量鉄骨造と比べ材料費がかかり、工程が長いので人件費もかさみます。
しかし、この点について当社では、コンクリートの打設にあたってFRP製の型枠パネルを使うことでコストダウンと施工精度の向上を可能にする合理的な工法を採用しています。
―― RC designが他のハウスメーカーや大手工務店と差別化できるポイント(強み)はどのようなことでしょうか。
現在、ハウスメーカーや大手工務店は、自社で工事に携わる職人をほとんど抱えていません。必要に応じて下請けを集め、大量発注した建築資材や設備機器を各現場に配送して工事を行う住宅商社のような存在になっています。それでは「ものづくり」のノウハウや経験値が蓄積されないのではないでしょうか。
それに対して当社はもともと、RC造の専門工事業者としてスタートしました。いまも社員の半数はRCを専門とする大工などの職人です。
そして、当社は自社の職人による自社施工を基本としています。なぜなら、RC造の“肝”であるコンクリートの質にこだわっているからです。RC造ではセメントに水、砂、砂利などを混ぜ合わせた生コンを、鉄筋を囲った型枠に流し込み、現場において一体的に固めます。
そのため気温や湿度、天候の影響を受けやすく、生コンの配合や調整、流し込みのタイミング、流し込んだ後の養生(保護)が極めて重要です。コンクリートの質は、将来のメンテナンスのコストや寿命にも関わってきます。
―― 現在は居住用だけではなく、投資用物件の建設にも力を入れているとお聞きしました。
投資用物件といっても、ほとんどはRC造の賃貸併用住宅です。具体的には、東京23区内など地価が高い土地において、木造2階建ての個人住宅にするかRC造で4階建て(階数は立地による)の賃貸併用住宅にするか迷っている、といったご相談をいただくケースが増えています。
RC造の賃貸併用住宅のほうが当然、建築コストはアップしますが、建物の一部を賃貸住宅として貸し出すことで、安定した賃料収入が得られ、ローンの返済なども十分カバーできます。また、RC造は遮音性が高いので、自宅と賃貸住宅を組み合わせてもプライバシーが確保しやすく、将来にわたって収益を生み続ける資産となるのです。
現在、受注ベースでは、専用住宅と賃貸併用住宅が半々くらいにまでなっています。
―― 実際にRC designで建てられた施主のみなさんはどんなふうにおっしゃっていますか。
これまでずっと木造の家に住んでいた方は、遮音性の高さや地震の際の揺れの少なさに驚かれることが多いですね。
また、RC造は建物全体が一体にできているので気密性が高く、空調が効きやすいという特徴があります。冬暖かく夏涼しいことと共に冷暖房光熱費の低さに驚かれる人も少なくありません。
「個人住宅をRC造で建てる」を、家選びの選択肢のひとつにしてほしい
―― 井上さんが考えるRC住宅の今後の可能性はどのようなことでしょうか。
都市部ではごく普通の住まいであるマンションはほとんどがRC造です。個人住宅についてもRC造に関心を持っている人は決して少ないわけではないと思います。今後、個人住宅においても選択肢のひとつになっていくことは間違いありません。
なぜそう言えるかというと、いま個人住宅でRC造は全国的には10%程度のシェアに過ぎませんが、沖縄では個人住宅の90%がRC造です。戦前は沖縄でもほとんどが木造でした。しかし、沖縄では最大瞬間風速が50mに達するような台風が毎年のようにやってきます。そのため、RC造がメインになったのです。
気候変動の影響で巨大台風や大雨が頻発するようになれば、RC造が注目されるのは自然な流れではないでしょうか。また、首都直下地震や東南海地震などの巨大地震のリスクも高まってきています。
ただ、これまでは個人住宅をRC造で建てたいと思っても、きちんと対応できる工務店が少ないという問題がありました。私としては、RC造の合理的な工法を採用している他の工務店と連携しながら、その受け皿になっていきたいと思っています。
―― 最後に、個人住宅や賃貸併用住宅を建てたいと考えている皆さんへメッセージをお願いします。
繰り返しになりますが、家を建てる場合、一定の予算枠があるはずです。それをどう上手に使うのか、よく考えていただければと思います。土地と建物のバランスのほか、建物についてはどこに頼むかがポイントです。
多くの方はまず、総合展示場へ行ってみるのではないでしょうか。そこには、大手のハウスメーカーやハウスビルダーの豪華なモデルハウスが並んでいます。そうした会社は知名度が高く、安心感もありますが、一方でモデルハウスは1棟で年間1億円以上の維持費がかかると言われますし、派手なCMや立派な本社、各地の営業所などのコストが結局、建築費に反映されてきます。
実際、私のところには大手ハウスメーカーで見積もりを取ってみたところ、「意外に高いので驚いた」という方が相談にこられたりします。ハウスメーカーの場合、内装や設備でどんどん高級志向を強めていることもコストアップの要因になっているようです。
木造についても、最近はアフターコロナで「ウッドショック」といわれるほど木材の価格が高騰し、40坪程度の個人住宅で工事費が坪単価100万円近くなってきています。
当社では40坪程度のRC造が坪単価120万円程度から建てられるので、木造との差はかなり縮まってきているのが現状です。
なお、こだわりの家をつくりたいという方の中には、設計事務所(建築家)に相談されるケースもあります。建築家は設計へのこだわりやセンスが特徴ですが、建築費についての相場観が不足している点には注意が必要です。
ここ2~3年で個人住宅に限らず建築費は大幅にアップしています。そのため、設計事務所(建築家)でRC造のプランをつくり、知り合いの工務店に見積をとると予定の1.5倍から中には2倍になることも。そうなると、予算オーバーでとても建てられません。
その後、当社に相談に来られる方もいて、その場合、同じ設計プランのままではやはり無理ですが、似たようなイメージで、当社が提案する合理的な工法を使うと、なんとか予算に収まることもあります。デザイン優先の設計は、予算面のリスクがあることをよく理解しておくべきでしょう。
もちろん、最終的にどの会社を選ぶか、どの構造で建てるかはお客様次第ですが、限られた予算で、災害に強く、安心・快適な住まいをつくるという点や、孫の代に資産を残すという視点でもぜひ、RC造に目を向けていただきたいと思います。