【vol.3】株式会社ダイオーズ 代表取締役社長 大久保真一さんの本棚 -書籍に後押しされた海外研修で今の「ダイオーズ」が生まれた-
2015年に提唱された「SDGs (Sustainable Development Goals )=持続可能な開発目標」。誰一人取り残さない世界を目指し17の目標と169のターゲットが掲げられ、2030年の達成目標へ向け、日本でも広がりを見せています。そのようなSDGsに積極的に取り組む企業のリーダーに、経営信念に影響を受けた書籍をお聞きする連載「社長の一冊」。 日本におけるオフィスコーヒーサービスのパイオニアである株式会社ダイオーズ。創業から50年以上一貫してBtoB事業に特化し、コーヒー、水などの飲料サービスやマット・モップなどクリーンケア、ダイオーズカバーオールを中心とした環境衛生サービスなどさまざまな事業所向けサービスを提供しています。今回は、ダイオーズを一代で築き上げた、代表取締役 大久保真一さんに心に残る書と経営について語っていただきました。
社長の一冊 『何でも見てやろう』(小田 実 著)
書籍との出会いがなければ海外研修も今のダイオーズもない
――今回選んで頂いた一冊、『何でも見てやろう』との出会いを教えてください。
この書籍は著者の小田実さんが、米・欧州、アジア22ヵ国を貧乏旅行して、そこで目にしたリアルを小田さんが感じたままに書かれています。1964年初版刊行の本ですが、当時海外へ行くことは物価的に考えて夢のまた夢でした。私も元々海外に興味があったのですが、二の足を踏んでいました。
しかし、「お金がなくてもやりようによっては世界中に行ける」と、書籍を読んで衝撃を受けたのを今でも昨日のことのように思い出します。書籍のタイトルどおり、「何でも見てやろう」と、この出会いから私は海外での研修を決意して26歳から28歳にかけて1967年から1969年までアメリカとヨーロッパで流通の勉強をするために初めて海外へ渡航しました。
――書籍がきっかけで渡航を決意されたのですね。大久保社長は単身で行かれたのですか?
当時私は結婚して妻も子どももいたのですが、実家に頼んで一人で行くことを決心しました。私の実家は東京の浅草で米屋を営んでいたのですが、帰国後に「日本一の米屋にする」と約束をして、何とか説得して行ったものです。なので、研修先では米屋をどう大きくしていくかを常に考えていましたね。
アメリカではCGCというスーパーの共同仕入れ機構で店や本部で働いて勉強していました。時には流通で有名な教授や現地の企業に訪問させて頂いたりもしましたね。また、研修中はいっさいホテルに泊まらず、全てホームステイをしていたので、生の海外の生活を身近に感じられました。この経験がなかったら今のダイオーズはないと言えるほど、沢山のビジネスの知恵やヒントを得られましたね。
「年商300億円、創業以来赤字なし」を成し遂げる極意
――海外での研修の経験を活かして帰国後に現在の「ダイオーズ」を創業されましたね。
帰国後、実家の米屋を「有限会社米屋おおくぼ」として1969年に創業しました。「米屋が米を売る」だけを商売とせずに、顧客ニーズに合わせてビジネスを変化させ発展に繋げるという研修での学びを生かし、米屋の機能である「御用聞き」と「配達」という機能を活用した「配達スーパー」を始めました。
当時、調味料や油などはガラスの一升瓶に入れていたので、重くかさばり、割れやすく買い物が大変でした。そこで「配達スーパー」でそういった、重いもの、かさばるものなどを各家庭に届けたことが好評を博しました。さらに営業エリアを拡大するため、ダスキンさんの加盟店になりました。ダスキンは当時家庭向けが中心でしたが、私はオフィスに向けた営業を開拓し全国トップの売上になりました。
この経験を活かし、次なるビジネスとして自社でフランチャイズの本部になるビジネスを模索し始めたのが、オフィスコーヒーサービスです。これが現在のダイオーズの基礎になっています。
――これまでに多くの事業を展開してこられた大久保社長の経営論について教えてください。
ダイオーズはオフィスコーヒー、ボトルウォーターなどの飲料事業と、クリーンケアやお掃除などを行う環境衛生事業の2つをビジネスの柱としています。どちらも「BtoBの継続サービス」に特化して事業を展開しています。年間契約でご利用いただくビジネスがダイオーズの特徴ですね。
創業期から利益を出し、かつバランスを取りながら成長していくことを基本にしています。ダイオーズでは「10%の成長と、売上対比10%の利益を上げましょう」ということを創業時から経営指標として掲げています。国内部門は創業以来52年間赤字を出したことは一度もありませんし、今年度もコロナで除菌衛生サービスや、高級コーヒーなどの需要の高まりなどで過去最高の売上、利益となっています。
創業から一貫してサステナビリティに取り組む
――御社が行っている「BtoBの継続サービス」は現在のSDGsに繋がっていますね。
1969年の創業当時からリサイクルやリユースをすることをビジネスの根底に据えています。SDGsが提唱される前から事業として当たり前の事として行っていましたね。
環境衛生事業のモップやマットなどの衛生用品も全て定期的に回収し工場で綺麗にして洗濯加工され、再度お客様に貸し出すことを繰り返し行っています。
ウォーターサービスでは、飲み終わったらペットボトルを捨てるのではなく、私どもはリターナブルボトルを採用、水を充填してお客様に届け、機械をメンテンスしながら、ボトルを回収し綺麗に洗浄しそれをまたリサイクル・リユースしてお届けしています。廃棄物を削減し、全てリサイクル・リユースする、環境に優しいビジネスを創業当初から積み上げています。
――SDGsに参画してからはどのような取り組みを始めたのでしょうか。
ダイオーズは海外事業も展開していますので、「Global Daiohs」として、グローバルパートナーシップの促進を図り、相互の知識や専門的知見を共有しています。
また、多様な働き方にも力を入れています。主婦の方、シニアの方が働きやすい時間体系・勤務体系・給与体系を導入し、多くの人が自分らしく働きやすいスタイルを提供しています。ペーパーレス化も積極的に導入し、伝票や帳票の電子化を進め、従業員が場所に縛られずに勤務できる体系も整えています。
2015年には公益財団法人ダイオーズ記念財団を設立(2018年3月7日に公益財団法人として認定)しました。財団を通じて国内だけではなく、海外の留学生の方に対しても返済不要の奨学金の給付をしています。国籍に関係なく世界中の方々に日本で勉強して頂く機会を与え、持続可能な教育システムを提供したいと思っています。
――様々なSDGsのお取り組みをされていますが、2030年に向けて御社の将来展望をお聞かせください。
人間が生活していく上でSDGsは欠かせないことだと思っています。その中で私たちは「BtoB継続サービス」というビジネスモデルを通して省資源化するなど環境負荷軽減に取り組むことを主軸としながら、社会課題に取り組み、持続可能な社会を作り出していかなければなりません。
ダイオーズの経営理念は「時代の新しいニーズを先取りして、 新しいマーケットを創造します」、「『最適なサービス』という商品を 最適なコストで、継続的にお届けします」「ダイオーズの利潤は、お客様の満足から生まれるもので、それをさらにお客様のために、社会のために、そして私たちのために生かします」としています。これからもSDGsの考え方を生かした経営に取り組んで、社会のために貢献できる、社会に恩返しできる企業を作っていきたいと思います。
会社概要
商号 | 株式会社ダイオーズ |
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設立 | 1969年6月 |
本社所在地 | 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-7-12 丸の内サピアタワー14階 |
代表者 | 大久保 真一 |
資本金 | 10億51百万円 |
事業の内容 |
【国内部門】
【米国部門】
【アジア部門】
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