DX戦記

社内DX推進における、陥りやすい3つの落とし穴

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書籍『DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー』は、プロパティエージェント株式会社が4年間取り組んできた社内DXの試みについて、多くの会社がはまりやすい落とし穴とそこから学んだ経験を詳述したものです。

書籍では合計で7つの落とし穴をあげていますが、このコラムではそのうちの3つを選んで紹介します。

社内DXの落とし穴①:現場の意見を鵜呑みにする

最初の落とし穴は「現場の意見を鵜呑みにする」です。

通常、業務改革においてはまず現場のヒアリングを行ってから課題を抽出し、解決策を考えます。このとき業務についてヒアリングするのはよいのですが「どうすれば業務がラクになりますか」と直接聞いてはいけません。

なぜならば、社内のDXについては本質的に生産性を高めることにあるということ、DXがあまり進んでいない企業の現場の人はDXリテラシーが高くない。そのため、現場から出てくるアイデアは一見面白そうに見えても、よく練られていないただの思いつきであることが多く、効果的な施策にはなりえないことが多かったのです。

たとえば、現場から出てくるDXのアイデアは、実装してみると関連業務が逆に増えてしまったり、自分たちにとっての部分最適になり過ぎていて全社的には非効率だったり、デジタル化に伴う余分な作業が膨大に発生したりで、行ってみても生産性があまり向上しないことが多々あります。

実際のオペレーションを行っている現場からのヒアリングは大事ですが、その要望を実現するのではなく、そのヒアリングをもとにいかにして全社最適かつ生産性の向上に繋げるかというプロセスがとても大事になってくるのです。

社内DXの落とし穴②:デジタル化が目的になってしまう

初期にありがちな落とし穴が「デジタル化が目的になってしまう」ことです。

デジタル化というと、システムやツールの導入のようなイメージがありますが、DXによって達成したい目標をよく考えずにシステムやツールを導入しても、思ったほどの効果が上がらないことがあります。

もちろん、どの会社もそれなりの検討を経て導入の意思決定をしているのですが、その検討が「どのツールを使うか」ではなく、「どうすれば生産性が向上するか」にきちんとフォーカスできている会社は多くありません。

これは特にDXの何たるかがわからず、とりあえず電子化すればいいだろうと思いがちな初期にはまる落とし穴です。「紙を見れば電子化」ではありませんが、なんでもデジタル化しさえすれば生産性が向上するような錯覚に陥ってしまうのです。

この落とし穴を避けるためには、やみくもなデジタル化を目的とするのではなく、きちんと生産性向上の判断軸をつくることです。

たとえばコスト工数削減が目的であれば、ツール選定においては「どれくらい工数が定量的に削減できるか」やこれらは当たり前として重要なのは「業務にかかるコストをどれだけ減らせるか」、「経営レイヤーにおけるKPIにどれだけ影響を与えられるか」などを評価すれば良いのです。

ペーパーレスにしてデータベース化すれば当初は効率が向上したように感じられますが、それが経営レイヤーのKPIにつながらなければ、経営者はあまりDXの効果を感じることができず、失敗であったとの結論になります。

定量的な効果の測定方法をあらかじめ定めておいて、気分ではなく本当に生産性向上にインパクトがあったかどうかを確認するようにしましょう。

社内DXの落とし穴③:PDCAのPDしかできていない

3つ目の落とし穴は「PDCAのPDしかできていない」です。

PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つがワンセットで完結するものですが、たいていの人はP「計画」とD「実行」ばかりが得意で、そのあとのC「評価」とA「改善」がなおざりになっています。

なぜかといえば、新しいツールを選んだり実装したりするのは楽しいので一生懸命になるのですが、せっかく選んだツールがもしかすると機能していないかもしれないと「評価」したり「改善」したりするのは気が進まないし面倒に感じられるからです。

しかし、C「評価」とA「改善」が伴わなければ、P「計画」とD「実行」には何の価値もありません。

P「計画」とD「実行」の段階で、その効果を想像すると生産性向上に貢献している気分になりますが、本当に効果があったかどうかは定量的な測定によってしかはかることはできません。

弊社では数多くのDX施策がP「計画」&D「実行」された結果、気づいたらコストばかりがかかって効果が上がっていないという事態が起きました。

そこでPD「CA」管理シートを使って、すべての施策を「評価」することにしました。その結果、効果が出ている施策と出ていない施策が明確になりました。

効果がありそうな気がしたから導入したけれども、結局別の作業が多くなって非効率だった、などの経験を積むことで現場社員のDXリテラシーが徐々に向上し、それによって現場から効果的なDXのアイデアが生まれるようになりました。

最終的には、一般社員のリテラシーが高まることがDX成功の最大のポイントになります。


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