DX戦記

【第1回】2018年、プロパティエージェントの社内DXの始まり…。社内業務をデジタル化することでの3つの効果とは

Column

2018年から社内業務のデジタル化に踏み切ったプロパティエージェント。社内業務をデジタル化することで会社はどう変わるだろうか。本記事では、プロパティエージェントの社内DXに取り組むまでの歩みと社内業務をデジタル化することで期待できる効果3つを解説していきます。

紙の呪縛にとらわれる不動産業界の“アナログ”からの脱出

会社設立は2004年で、当時は不動産の売買などが中心だった。その後、賃貸物件の仲介や自社ブランドでマンションの開発や管理などをしながら成長してきた。

いずれ世の中はデジタルの力で大きく変わる。仕事の仕方、サービスのあり方、日常の生活様式がデジタルによって再構築される。そういう確信めいた感覚が当時からあった。世の中を見渡すと明らかにモノ、サービス、情報の流通経路が変わっている。生活者としてデジタル化の恩恵を受けると同時に、経営者としては生き残りをかけた選択を迫られているような危機感を抱いていた。

そのような思いから、まずは自社業務をデジタル化しようと取り組み始めたのが 2018年のことだ。今となってはどの企業もテクノロジーの活用で新しい価値を創出しようと取り組んでいるが、当初はまずペーパーレス化とデジタル化による生産性向上にフォーカスした。

不動産業界は売買でも賃貸でもあらゆる業務を紙の書類と印鑑で処理する。社内の賃貸部門も、一部の不動産仲介業者とは物件の詳細などをファックスでやり取りしている。紙の呪縛にとらわれているこの業界はどこまでもアナログだ。

紙ありきのアナログな業界だからこそ、デジタル化による生産性向上の余地は大きい。デジタルを活用すれば競争優位性をもつ会社になれる。そう考えて、まずは膨大な量の書類のデータ化に着手した。

社内業務をデジタル化することで期待できる3つの効果

社内業務をデジタル化することで会社はどう変わるだろうか。期待できる効果は3つ思い浮かんだ。

①非効率な業務からの解放

1つ目は社員を非効率な業務から解放することだ。社内業務がデジタル化されれば無理や無駄が減り、仕事が効率化され生産性が高まり、よりクリエイティブな業務ができるようになる。

優秀な社員を採用しても彼らの能力を発揮できない環境であれば、業務フローの見直しや環境改善は会社の役目であり、社内業務のデジタル化がその解決策になり得る。デジタル化によって時間と手間ばかり掛かるアナログな仕事が減り、社員は悪い残業から解放されるはずだ。

社員が面倒で手間が掛かる作業から解放されれば、そこで生まれる時間と労力を別のことに使えるようになるだろう。彼らがアイデアを練るために時間と労力を使えるようになれば、新しいサービス、事業、事業モデル、 業務フローを考え出し、イノベーションと付加価値が生まれる可能性がある。

②優秀な人材の確保

社内業務のデジタル化で期待できる2つ目の効果は、優秀な人材の獲得だ。社内業務のデジタル化によって会社のあり方を変え、会社の価値を変えられると思った。

そして「企業は人なり」という言葉があるように会社の成長は人が生み出している。彼らの価値の集合体が会社の価値そのものであるため、優秀な人材が集まれば会社の価値も向上する。

社内業務のデジタル化によって働き方が変わり、自分の能力を十分に発揮できる会社になれば優秀な人材が集まり、不動産屋の業務範囲にとらわれることなく新しい価値を生み出す集団に変わっていけるだろう。

③経営体質の変革

社内業務のデジタル化で期待できる3つ目の効果は、会社の経営体質の変革だ。

現状として事業の状況は悪くない。マンション販売の進捗状況は問題なく、来期の新卒採用も計画どおりに進むだろう。今期の業績も創業以来連続の増収増益を達成できる見通しが立っている。

しかし、それは自分たちの努力だけで得た果実ではないと、僕は思っていた。

リーマンショックは「100年に1度の金融危機」といわれたが、経営の根幹を脅かすような危機は実は10年に1度くらいの頻度で起きている。僕は経営者の立場として、リーマンショック級の経済危機に見舞われても生き残れる筋肉質な経営に変わる必要性を感じていた。

経営体質を変えるために膨らみ過ぎているBSの改善を考えたり、垂れ流し状態になっているコストの管理を厳しくしたりすることは行っている。しかし、それでも不十分だと感じていた。もっとダイナミックで抜本的な変革によって、危機に耐えられる財務に変え、 厳しい環境でも利益を捻り出せる経営に変えていかなければならないと思っていたのだ。

社内業務のデジタル化は「オペレーショナルエクセレンス」の格となる

社内業務のデジタル化において、真っ先に思いついた効果は3つほどだったが、社内業務のデジタル化はほかにもさまざまなメリットを生み出しそうな予感がした。

同時に、オペレーショナルエクセレンスに結びつくとも思った。オペレーショナルエクセレンスとは、その言葉のとおり非常に優れたオペレーションを実現することを指している。具体的には、会社全体で継続的にオペレーションを改善する意識が浸透し、そのための仕組みがあり、その結果として生産性や商品の品質( Quality)、コスト(Cost )、納期 スピード(Delivery )が向上し、競合他社に対して圧倒的な競争優位性をもてる状態だ。

社内業務のデジタル化は、まさにその核となるだろう。業務を効率化し優秀な人材が存分 に能力を発揮できる環境に変われば、生産性が向上し、業界における僕たちの競争優位性がさらに高まる。

QCDの向上についても、従来は工程管理と人材教育がカギだった。トヨタのカンバン方式などがその一例で、人の育成や連携も引き続き重要だ。しかし、これから社会のデジタル化がさらに進んでいくと考えると、人を通じた改善だけでなくシステムやツールを使う自動化や自律化も重要になっていくはずだ。その点でもデジタル化は大きく貢献するだろう。

社内業務のデジタル化はきっと会社を強くする。アナログな業界だからこそ、僕らは業務のあり方と会社の存在価値を根本から変革することができる。そしてその延長線上にあるDXによって、ただのIT化ではなく、働き方の改革、ビジネス自体の変革等事業における既存の価値観や枠組みを根底から変化させることができる。僕はそう確信し、全社方針としてデジタル化を推進していくことを決めたのだった。

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