【第2回】なぜ、謙虚なリーダーが率いる組織は強いのか

第1回の記事で見たように、成功を収めたリーダーがおしなべて謙虚であったことは疑いようがありません。

僕が思うに、リーダーにとって重要なのはまず「真摯に人の意見を聞く」姿勢です。

本稿では組織のリーダーに求められる謙虚さに焦点を当て、その具体的な振る舞いについて見ていきます。

リーダーが裸の王さまになれば組織は必ず滅びる

どんなに優れたリーダーであっても、常に正しく判断し、決断できるかといえば、それは無理な話です。誰だって迷うこともあれば、間違うこともあります。

さらに、加齢によりエゴイズムが強く表れてしまうことも少なくありません。

ではフラットな組織がいいかというと、一概に否定はできないかもしれませんが、僕はそれを良しとは思いません。トップはトップらしく、覚悟と責任を持って最終判断をする責務がある。そうやって組織を動かしていくほうが、時代の変遷にも機敏に対応できると思っています。

ただし、常に人の意見を聞いて、良い意見を取り入れ、自分の判断を修正していけることが前提です。それが謙虚さだと思います。

リーダーが傲慢になり裸の王さまになれば、組織は早晩、必ず滅びます。滅びるのはオーバーだとしても、じり貧になることは間違いないでしょう。どんなに素晴らしい才覚を持った経営者であっても、個人の力には限界があります。

それを理解せず謙虚さを忘れて突き進むタイプの人は、物事がうまく行かなくなればなるほど傲慢になります。こうなると、ますます他人の意見を聞かず、理性を忘れ、感情的になって孤立していきます。

そして最後には潮流を見失い、深みにはまり、敵も味方も分からないような状態になってしまいます。

上司と部下は同じ目的に向かって走るパートナー

そんなリーダーが頑張れば頑張るほど、旗を振れば振るほど、組織は動けなくなります。思考停止に陥ったり、離脱が起こったりし始めます。逆にリーダーが謙虚で、適材適所に部下を配置し、その意見をよく聞き、任せるべきは任せ、禅譲すべきは禅譲していると、柔軟な組織になります。

臨機応変で、チームワークも良く、時代のうねりにも正しく対応できて結束も固まり、リーダーを中心に和気あいあいと頑張る組織になるものです。

劉邦がそうだったように、そういう組織は強くなります。環境適応の能力も高いはずです。組織もまた謙虚になるからこそ、環境の激変にも柔軟に対応できるのです。

そのためにも真摯に周りの人、組織において自分よりも下の立場の人の意見にも真剣に耳を傾けるべきなのですが、それだけではなく、そうした自分や自社の協力者、特にスタッフに対して感謝を忘れないということもたいへん重要なことだと僕は思っています。

感謝する心があるからこそ、素直に謙虚になれるのだと思います。

僕は組織論の権威でもなんでもありませんので、「強い組織のつくり方」などを語るのはおこがましく感じています。しかし、せっかくなので、僕なりの意見をお伝えさせていただきたいと思います。

「強い組織」とは、組織そのものが、つまりは組織を構成する一人ひとりが自律している組織だと思います。もちろん、命令系統がなければ組織はまとまりませんし、そのためにヒエラルキーは必要です。

しかし、上司と部下を考えた場合、そこにあるのは単なる上下関係なのでしょうか。否、違うと思います。上司と部下は同じ目的に向かって走るチームのメンバーであり、パートナーなのです。

そのメンバー一人ひとりが自律して考え、行動する。そのうえで、一つの目的に向かって協力していく。そのためにワンボイスや役割分担が必要になるわけです。

リーダーとしての魅力や物言いが周囲を触発する

組織を動かすのに、目的や目標は重要です。その根本は経営理念、行動指針、クレドなどです。そして組織をまとめるのには、さらにもう一つの力が必要です。チームの和です。その和を生むための信頼関係。チームメンバー間の引力ですが、それを束ねるリーダーの力が特に大切です。

では、リーダーがメンバーを目的に沿って動かすために必要なパワーの源泉はなんでしょうか。肩書でしょうか。専門知識でしょうか。

否、いちばん重要なのは、リーダーに対する信頼感やリーダーの魅力だと思います。この人の言うことは信頼できる、この人にならついていけるといったものです。

そうメンバーに思ってもらううえで、確かに部長だとか課長といった肩書も、これまでの経験や蓄積してきた専門知識も、必要でないとまでは言いません。

しかし、そうしたものも包含したリーダーとしての魅力や物言いが、周囲を触発していくものだと思います。

その魅力はどうやってつくられるのか。 一概にはいえませんが、一つ重要なのは、やはり謙虚であるということだと思います。

ネット書店