【第9回】女性社会こそ、他人に気配りのできる謙虚な社会

勝ち負けに重きが置かれる男性社会は謙虚な社会とはいえません。一方で女性社会は、他人に気配りのできる謙虚な社会ではないかと思います。

腕力よりもコミュニケーションが重視される現代は、ある意味では女性の時代なのです。

今回は、男性が女性から学ぶべきことについて考えていきます。

コミュニケーション重視の現代は女性の時代

現代は、性別議論がタブーになってきたような気がします。LGBTQ+という長いイニシャルの羅列が示すように、性別を決してひと括りにできない、いわば過渡期です。今まで常識という重しにおさえつけられていたさまざまな違和感が一気に噴き出したかのようです。

それはいいことだと思いますが、ここでこの議論に踏み込む気はありません。ただ、少しだけ生物学的なことを話せば、そもそも脳には男性脳と女性脳というものがあるといわれます。

男性はその昔、長い間狩りをして家族や村の生活を守ってきました。狩りですから当然、無言を貫かなくてはいけません。その間、家を守る女性たちは子どもをあやしながら、家事をしたり木の実などを集めたりしながら、ずっと会話をしていたのです。それが井戸端会議などにつながります。

そうなれば当然、コミュニケーションの能力は女性のほうが上になります。現在の学説では、人類が地球に登場したのは約700万年前とされていますから、それだけ長い年月、そうした男女の役割分担が続いてきたわけです。その代わり、簡単にいえば男性には腕力が備わりました。運動能力も高まりました。

ところが現代は、基本的にはもはや腕力のいらない時代です。

だからこそ、ある意味では女性の時代なのだともいえます。コミュニケーション重視の時代だからです。頭が良いのも、ある意味では女性のほうとさえいえるわけです。医学部に合格する割合を見ても、女性の比率がどんどん上がっています。発想も豊かですし、暗記力も上のようです。

男性の腕力は、家族を外敵から守るためのものでしたが、今ではややもすると家族を殴るために使っている人も増えてしまいました。嘆かわしい事態です。

話を戻しますが、女性脳は男性脳に比べて左脳と右脳をつなぐ脳梁が太いので、左脳と右脳の間の情報交換が早く、そのために視野が広い。一つのことにこだわらずにさまざまなことに関心を持つ。女子会の会話を男性が聞くと、あまりに話が飛ぶのでついていけないということがあるそうですが、その理由も脳梁の太さの違いによるのではないでしょうか。

日本の女性活躍はまだまだ過渡期

今、求められているのは、そうした女性が引っ張る社会なのかもしれません。僕も男ですが、最近、つくづく男はだめだと思ってしまいます。

これは法律上の男か女ではなく、女性性の問題です。その面で日本が遅れているのは明らかでしょう。もちろん、すでに多くの女性が社会のさまざまな場面で活躍しています。しかし、その数は諸外国に比べてまだ圧倒的に少ない。

しかも、それこそ政策で女性を抜擢しているだけで、彼女たちにあまり期待はしていないという企業も少なくないようです。

さらに、誤解を恐れずにいえば、女性としての良い部分を抑えて男性社会で求められる女性像を前面に出すか、あるいはいわゆる男勝りに装い強く出るか、どちらかの女性管理職が少なくありません。女性の男性化です。

それは違う。それも男性社会で活躍するための手段なのかもしれませんが、それでは女性の長所がなくなってしまうと僕には思えてなりません。それでは社会は良くならない。女性の社会進出の意味がなくなってしまいます。

もっと女性らしい、しなやかな発想と行動を皆にしてほしいのです。

女性ならではの「謙虚力」で、気配りのあるリーダーシップを発揮していただきたいのです。そうすれば、多くの男性も素直にそのリーダーについていくはずです。「男だ、女だ」とつまらないことは言わなくなると思います。

だから、女性活躍はまだ過渡期です。昨今の演説などを見ても、政治家など、女性のほうが過激で戦いを求めているようにすら思えることがあります。こう書くと、女性蔑視だと思う人もいるのかもしれませんが、そうではありません。女性が生来持っている母性本能などの強みを、最大限活かしていただきたいという願いなのです。

誤解してほしくないのは、僕は女性を批判しているのではなく、そんなふうな女性しか認めようとしない男性社会の権化たちに一考してほしいと思っているのです。

かつて、ダライ・ラマ氏が日本医師会で話をされたことがありました。終わったあとに、ある女性の役員から、「花瓶の一つも飾ってないのがだめだ」と指摘されました。確かにそうだと思いました。そういうところに男性は気づかないのです。気配りが足りないわけです。

だから、男性は大いに女性から学ぶべきなのです。政治にしても企業経営にしても、チームのリーダーシップにしても、理解できない存在だと思うかもしれない女性ならではの考えから、行動原理を一所懸命に学び、それを活かしていく。 そしてそのあとに、本物の男女平等、というよりも、性別がまったく関係のない世界を築きたいと思っています。

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