精神科医療の再設計 沖縄から変える日本の精神科医療
書籍内容
退院の先にある社会復帰を目指して
これからの精神科医療は
患者と地域の懸け橋となることが求められる
精神科医療は今、大きな転換期を迎えています。2024年4月からは精神科病院の入院期間に6カ月という上限が設けられ、早期の社会復帰を目指す治療が求められるようになりました。しかしこの法律に基づいて、患者にどのような治療をしていくべきか医療機関の模索が続いています。
著者は患者の早期退院とその先にある社会復帰を実現するには、外来通院に加え緊急時の相談窓口や日常生活のサポートなど、包括的な支援体制が不可欠だといいます。また、患者が地域の中で実生活を送り社会に参加するためには受け入れる地域の行政や福祉サービスとの連携も重要になり、これを進めていくためには医療機関がリーダーシップを発揮して、患者と地域の懸け橋となることが必要になると述べています。
1999年から沖縄市で精神科病院を運営している著者は、早くから「精神疾患に対するいちばんの治療は早期の退院、早期の社会復帰だ」という理念を掲げてきました。2005年には、患者の6割が3カ月以内に自宅退院することなどを要件とした「スーパー救急病棟」を県内で初めて設置したほか、早期退院した患者が地域で安心して暮らせるよう、訪問支援を行うアウトリーチケアや、精神疾患に対する地域社会の理解を深めるため、医療・福祉・教育の3領域の専門家が集まり対話を行う「琉球ダイアローグプロジェクト」を立ち上げるなど、病院だけで完結させない地域との連携に基づいた精神疾患のリハビリテーション治療を行っています。
本書では、精神疾患患者の早期退院、社会復帰を実現するために精神科医療はどうあるべきかについて著者の考えを示すとともに、医師という立場から行政や地域とどのように連携し患者の社会参加を後押ししていくべきかについても、これまでの取り組みを基に具体的に解説しています。
著者はこれからの精神科医療は地域社会が一体となって行っていくべきだと訴えています。現役の精神科医、医師を志している人だけでなく、行政に携わる人やソーシャルワーカーにもぜひ読んでほしい一冊です。