【第7回】実践編!ビジネスに活きる「謙虚力」①クレーム対応&営業マン編

「謙虚力」は、仕事上のさまざまな悩みを突破する上でも役に立ちます。

第7回・第8回はそのヒントを、セリフで表したり、具体事例で紹介したりしていきます。

今回は「謙虚力」を活かしたクレーム対応のコツと、したたかに我を通す営業マンのトークを見ていきます。

「謙虚力」を活かしたクレーム対応のコツ

基本的に、クレームには真摯に対応することが求められますが、相手が決してクレーマーではないとしても、感情的になっている場合が多いために、高飛車な対応をされたり、会話が堂々巡りになってしまうなど、埒が明かない状況になってしまうことも少なくありません。

そんなときにはどうしたらいいのでしょうか。例えば、こんな場合です。

あなた:「はい、〇〇化粧品です」

顧客:「どうなっているのよ、まったく!」

あなた:「はい? すみませんが、どのようなご用件でしょうか」

顧客:「どうもこうもないわよ。お宅が発売している乳液、〇〇を購入した者です」

あなた:「それは、ありがとうございます」

顧客:「3日使って、見事に肌が赤く腫れたんです!」

あなた:「えっ! それはたいへん申し訳ありません。私では分かりかねますので、今、分かる者に代わります」

顧客:「そうやって逃げる気?」

あなた:「いえ、決してそのようなことはありません」

顧客:「いいから、あなたが対応してよ。そうじゃないと、どうせたらい回しにするのでしょう?」

あなた:「そんなことは決して……」

顧客:「とにかく、こちらは使用法をしっかり守って使っていたのよ。今までこんな風になったことなどないわ。コマーシャルを見て、良さそうだから買ったのに! どうしてくれるの?」

あなた:「はい」

顧客:「何、はいって? 何か言いなさいよ」

あなた:「お客さん、冷静になってください!」

顧客:「何、声を荒らげてるのよ!」

あなた:「いえ……」

こうした場合、かなりのベテランの方でもない限り、話の持っていき方に困るものです。このやり取りのすべてが悪い例というわけではないのですが、相手の圧に押されてつい声を荒らげて反論したり、絶句してしまったりするとお客様に失礼ですし、自分で自分を追い込んでしまいます。そんな場合は、あくまで冷静に対応することが大切です。

謙虚になることには、冷静になれる、相手がよく見えるようになる、という効用もあるのです。

あなた:「たいへん申し訳ありませんが、私ではお客さまに適切な質問もできませんし、どうすればいいのかという専門知識も足りません。なので、専門の人間に代わらせていただけないでしょうか」

謙虚力を説いていますが、僕には流儀があることは先にお伝えしました。

まったく意見が相容れない場合、相手にこちらを理解しようといった気構えがまったく見受けられないとき、スタッフを守るためなど、必要であればなんらかの方法で戦います。といっても、それは必ずしも相手を降参させるための戦いではないので、落としどころを探る交渉を継続するというやり方が多くなります。

そして逆に、マイナスの影響が少ない場合は意見を極力受け入れてしまいます。それ以外の場合は、一目散に退散するようにしています。

逃げるが勝ちです。

もちろん、文字通り逃げて、そのまま付き合わないという選択もあるわけですが、一般的に企業のクレーム処理はそうもいかないでしょう。ましてや担当者の一存では無理です。

そのため、いったんはそこでのやり取りをなんらかの約束によって終わらせて、そのうえで、時間を空ける、場所を変える、担当者を代える(同僚や上司、専門家など)、といった策を取るのがいいとされます。こちらには体制を整える時間ができますし、相手も冷静になれるというわけです。

不毛な言い合いを避け、お互いに頭を冷やし、矛先を変え、またその先の議論のための準備をする時間を空けるというのが主目的です。いってみれば体制を整えて再度迎え撃つための名誉ある撤退です。もちろん、「撤退」とか「退散」は比喩ですが、いずれにしても、これは重要な戦略です。

したたかに我を通す「謙虚力営業

取引先のクライアントにしたたかに売り込み、気に入られるためにはどうしたらいいのでしょうか。例えば値引きを迫られても、もういっぱいいっぱいでその要望には応えられない。それでも嫌われないための処世術はあるのでしょうか。謙虚さによって得られるしたたかさもあります。

自分:「いかがでしょうか? 良い商品だと思うのですが」

クライアント:「確かに、これならば使えるね。ただちょっとお高いな。もう少し、なんとかならないのかな?」

自分:「すみませんが、すでにこれで精いっぱいなのです。いつもご贔屓にしていただいている山本様なので、ここまでのお値段を出させていただいたのです」

クライアント:「そうは言うだろうけど、そこをなんとか考えてみてくれないか?」

自分:「申し訳ありませんが、ご勘弁ください」

これではまとまる話もまとまりません。たとえ本当にその値段が精いっぱいでも、謙虚力で柔軟に対応し、相手に嫌な思いをさせない知恵を持ち、もう一度、考えてみる。社内で交渉してみる。できなくても再度頑張ることが大切なのではないでしょうか。

自分:「分かりました。ただこの場では決められませんので、一度社に戻って、上司に精いっぱい交渉いたします。少しだけ、お時間をちょうだいできますか?」

クライアント:「そうか、頑張ってみてくれるか。よろしく頼むよ!」

それで少しでも値が下げられればいいですが、できないかもしれません。それでも誠意を示すことが大切なのです。また、前出のクレームのケースと同じで、時間を空けるのが有効ということもあります。

こうしたきめ細やかな対応は、たとえ最初の時点で「絶対にもう無理」と分かっていても必要です。その場で断るのではだめなのです。たとえ検討や交渉をしないとしても、時間をおいて再度出掛けるだけだとしても、「嘘も方便」です。

これは、相手の気持ちを和らげることができる、いわばホワイトライであるわけです。 それでこの商談は成立するかもしれませんし、たとえだめでも、相手の気分を害しさえしなければ、良好な関係は維持できるはずです。

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