精神科訪問看護で実践する 家族“まるごと”支援

寺田 悦子[著]

2026.09.28

1760円(税込)

幻冬舎

単行本

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書籍内容

精神疾患の支援は、「本人だけ」で十分なのか――

精神科訪問看護の現場から見えてきた
家族を“まるごと”支えるという視点


近年、うつ病や統合失調症をはじめとした精神疾患の治療は、昔のように入院して病院で行うのではなく、在宅、つまり患者は自宅で日常生活を送りながら治療を行うのが主流となっています。
病室という閉じられた空間ではなく、住み慣れた場所で暮らしを続け、社会と関わり続けるなかで精神疾患を治療することには意義があります。しかし一方で、これまで見えにくかった精神疾患特有の問題も浮かび上がっています。それは、精神疾患の患者を本当に治療するのであれば、その家族についてもケアが必要だということです。
精神疾患患者は日々の暮らしのなかで、特に家族に対して多くの負担を強いてしまっていることが少なくありません。配偶者やきょうだい、年老いた親、そして子どもたち――こうした家族は、本人の回復を支える欠かせない存在であるにもかかわらず、治療中は患者によって傷つけられたり、苦しめられたりしてしまうことがほとんどです。
しかし治療中、家族が医療や行政からの支援を受けられることは少なく、多くの家庭が患者とともに病に苦しめられています。
例えば、精神疾患を患う一人親の子どもが、誰にも頼ることができず、親とともにつらい毎日を送っていれば、その状況そのものが患者に悪影響を及ぼし、病状はますます悪くなります。反対に子どもが笑顔になれる時間が増えれば、それは治療にプラスになります。つまり、家族をケアすることが患者の治療につながる、というのが精神疾患特有の問題なのです。
そこで著者が取り組んできたのが、本人だけでなく、その家族もまるごと支えるケアでした。
本書の著者は、20年以上にわたり精神科訪問看護の現場に立ち続けてきた看護師です。診察室にいるだけでは決して見えてこない、家庭のなかの現実を数え切れないほど目にしてきました。数多くの家庭を看るなかで、著者がとりわけ支援の必要性を強く感じてきたのが、精神疾患を抱えながら子どもを育てる母親と、その子どもたちでした。
本書では、精神疾患を抱える母親がいる家庭で実際に何が起きているのかを、具体的な事例とともに紹介します。さらに、親と子を同時に支えるグループワーク「PCG(Parent Child Group)」や、子どもの育ちを中心に家族全体を見つめる「LTC(Let’s Talk About Children)」など、家族への具体的な支援のあり方についても取り上げます。
病気を抱える本人だけでなく、その周囲にいる家族にも必要な支援を届けるために、何ができるのか。精神科医療や訪問看護、児童福祉、教育、行政に携わる人はもちろん、家族のことで悩みを抱える人にとっても、「家族をまるごと支える」とはどういうことかを考えるきっかけとなる一冊です。

目次

はじめに

序章
精神科訪問看護師が見てきた現実
~玄関の向こうで、静かに崩れていく生活~

第1章
利用者の困難は周囲に連鎖していく――
個人に向けられた支援が見落とす、家族の現実
精神疾患は、いまや誰もがかかり得る病になった
入院から地域へ、変わりつつある精神科医療
急速に広がる精神科訪問看護
「利用者」だけを見ても、問題は解決しない
家庭で起きているのは、「病気」ではなく「生活の破綻」
親が不調になると、子どもは「子ども」でいられなくなる
子どもが不調になると、親はさらに追い詰められていく
制度は、「親」と「子」を分けてしまう
問題は「支援がないこと」ではなく、「支援の単位がずれていること」

第2章
個人から家族へ、支援の単位を見直す
家族を“まるごと”支えるという視点
支える対象を「症状」にすると、見えなくなるものがある
問題は「親子関係」ではなく、「役割の固定化」である
「家族をまるごと支える」とは、何をすることなのか
支援の目的は、「正しい方向へ導くこと」ではない
「支援する側/される側」という構図が、関係を壊す
支えるのは、人ではなく「関係」である

第3章
衣食住の乱れや服薬困難――自宅でしか見えない現実に向き合う
利用者と看護師の役割を超え、生活から立て直す精神科訪問看護
暮らし全体を支える精神科訪問看護
身体をみることができなければ、精神もみることはできない
利用者の小さな変化を見逃さない
利用者を孤立させないことも訪問看護の役割
閉ざされた世界に風穴を開ける訪問看護
一方的に支えるのではなく「関係性を築く」
「丸」でも「バツ」でもなく「三角」という支援
人は変わることができると教えてくれたGさんのケース

第4章
親子を同時に支える仕組み
横のつながりから生まれるグループワーク“PCG”
親子を支えるために生まれたPCG
グループワークがもたらす効果とは
きめ細かなミーティングがPCGを支える
グループワークで語られる親たちの思い
訪問看護とPCGの相乗効果
参加者同士の支え合いが生み出す力
「子どもを産んでよかった」と思えるように
PCGは支援者もエンパワメントされる
親子に笑顔を取り戻したPCG
不満や不安より未来を語るようになったJさんのケース
自らの力で人生を切り拓いたKさんのケース
私たちがPCGを続ける理由

第5章
親が自分らしい子育てを取り戻すために
子どもの強みと課題を整理し、親の行動につなげる新たな取り組み“LTC”
見落とされていた子どもの視点
子どもを中心に据えた支援「LTC」
「できないこと」ではなく「できていること」に目を向ける
LTCが変えた親子の関係
問題を見つける支援から、強みを活かす支援へ
LTCが切り拓く子ども支援の未来

第6章
精神科訪問看護の再設計
支える単位を変えた先にあるもの
LTCを広げるための学術的取り組み
子どもの声が私たちに教えてくれたこと
未来へつなぐ家族支援

おわりに

著者:寺田 悦子

寺田悦子(てらだ えつこ)
1951年埼玉県生まれ。1972年国立埼玉病院附属高等看護学院卒業。看護師・精神保健福祉士・介護支援専門員。国立病院・民間精神科病院で十数年間看護師として勤務後、1987年に友人たちと「共同作業所棕櫚亭(しゅろてい)」を開設。1997年に、社会福祉法人多摩棕櫚亭協会を設立し社会就労センターピアス勤務、その後1999年より地域生活支援センターなびぃ勤務。2005年にNPO法人多摩在宅支援センター円を立ち上げ、2012年2月には株式会社円グループを設立。現在、東京都立川市、八王子市、新宿区等で訪問看護ステーションや地域活動支援センター、相談支援事業所、居宅介護支援事業所などを運営している。

ネット書店

  • https://amzn.to/3f3Yc6Z

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