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「アウトサイダー文学コンテスト」大賞受賞 『魂業石』著者・水谷恵子氏インタビュー

「アウトサイダー文学コンテスト」大賞を受賞された水谷恵子氏にトロフィーと賞状の授与を行い、制作への意気込みや作品に込めた思い、小説家を夢見る人たちへのメッセージなどをお伺いしました。
■アウトサイダー文学コンテストとは
幻冬舎の自費出版ブランド幻冬舎ルネッサンスが実施した、初の商業出版コンテスト。「現実では罪に問われてしまうことも、想像の世界ではすべてが自由」をコンセプトに、犯罪・特殊性癖・メンヘラなど刺激的なテーマの作品を募集した。200以上の作品の中から、大賞に水谷恵子氏の「魂業石」、優秀賞に木村さつき氏「綻び糸を手繰り寄せ」と大西猛史氏「高校生SM」が選ばれ、2024年冬に電子書籍刊行予定。
詳しくは、公式ホームページに掲載。
■「魂業石」あらすじ
容姿端麗な雪子は、小さい頃から自分がほしいと思ったものは手に入れないと気が済まない性格で、そのためなら手段は厭わない。外面の良さでこれまで疑われることはなかったが、次なにかを欲せば、自分は身を滅ぼすのではないかという予感がしていた。
そしてある時、夫とテレビを見ていた時に知った「ダイヤモンド葬」に目を奪われた雪子は、ついに人を殺してダイヤモンドを作る計画を立てる……。
■インタビュー
――この度は、大賞授賞おめでとうございます。まずは、自己紹介をお願いします。
水谷恵子、37歳です。仕事は公務員をしています。
作品について
――本作を書いたきっかけは何かありますか。
ダイヤモンド葬っていうのは、だいぶ前に何かの番組で見て印象に残っていたんですが、いつか題材にしたいなと思いつつできていなかったんですね。それで今回、このアウトサイダー文学コンテストの募集を見て、ダイヤモンド欲しさに人を殺すっていう発想だったら面白いかなと思って書かせていただきました。本当は亡くなった方の遺骨からつくる、供養のためのものなんですけど。
――では、コンテストの存在を知ってから書き始めたのですね。制作期間はどのぐらいですか。
下書きのようなものは前からあって、それを今回しっかり作品という形に整えたので、だいたい2ヶ月とかですかね。
――タイトルに込めた意味や思いはありますか。
「こんごうせき」(金剛石)ってダイヤモンドのことですけど、それをまずタイトルに入れたくて、でもそのままだと面白くないので、犠牲になった人の魂と、殺人を犯す雪子の業っていうのを合わせて「魂業石」っていうタイトルにしました。
――主人公の雪子などに誰かモデルはいますか。
モデルは特にいないですね。
――殺人のターゲットになる人物についてはいかがですか。
なんというか、犯罪というほどではないけど人に迷惑をかけていて、でも自分は気づいてない人を想像して、大げさに描きました。一部の人は読んだらスカッとするかもしれないです。
――作品の中で力を入れたところはありますか。
力を入れたのは、やっぱり殺人シーンですね。いろいろなバリエーションを出して、ここまで残酷なことを人ができるのかというところを描くのに気を遣いました。あと主人公のセリフでも、この人は普通の人と感覚が違うんだなとわかってもらえるように、さりげなく書けたらなと思っていました。
コンテストについて
――このコンテストを最初に知った時に、どう思われましたか。
すごく面白そうなコンテストだなと思いました。これは書くしかないなと。
――これは挑戦できそうだなという感じ?
こういうジャンルの話って、書くと「この人、人格大丈夫かな」って疑われることもあると思うので、なかなか書きづらいんですよ。それを、「作品の中なら発想はなんでも自由」ということを謳った上で、あえてテーマとして打ち出したというのがすごく挑戦的だなと感じました。
――大賞受賞を知った時、どのようなことを感じましたか。
聞いた時は、何かの間違いじゃないかと、すごくびっくりしました。聞いた後は、とりあえず妹に電話しました。
――(ご同席されていた妹さまに対し、)報告を受けた時どう思われましたか?
驚きはしましたが、ずっと他の作品も読んでいて「いつかはなにかの賞を獲れるだろうな」とは思っていたので、やっとだなという感じでした。
――他のご家族にはご報告しましたか?
何も言ってないです。
今日以降だったら言ってもいいかな。とりあえずなかなかまだ現実味がなかったので、もうちょっと現実味が出てからなのかなと思っていました。
創作活動について
――影響を受けている作品や好きな作家さんはいらっしゃいますか。
恒川光太郎さん、朱川湊人さん、道尾秀介さんですね。あと貴志祐介さんも好きです。人間の醜いところも躊躇なく、しかも結構鮮明に書いておられるので、そういったところが魅力的で尊敬しています。
――これまでにもいくつか小説は書かれていたということですが、好きなジャンルとか、よく書いていらっしゃるジャンルはありますか。
基本ホラーが多いです。生霊が出てくる話とか。小学校ぐらいの時から怖い本が好きで、その頃も絵本とか、子供が書くちょっとした話を作っていました。
――では、本格的に小説を書きはじめたのはいつ頃からですか。
小説と言えるようなものを書き始めたのは、大体8年前ぐらいですかね。
大学進学を機に小説を書く夢は現実的じゃないなと諦めて、実用的な学部に進学して企業に就職しました。だけどその仕事が合わなくて、思い切って転職して公務員になったんですね。公務員になるのも最初は無理かなと思っていたんですが、勉強したら実際になれて。じゃあ、小説も書けるんじゃないかと思って、書きだしました。
――今書いていらっしゃる作品はありますか。
架空の都市に住んでいる男の子の話を書きたいなと思っています。日本だけど日本じゃない、端から見ると理想の都市なんですけど、外から入ってきた人から見ると、なんか変だなっていう。元々そこが普通だと思ってる子が、外の人と会って、おかしいなって気づくような話を書きたいなと。
――今執筆をしているコンテストチャレンジャーや小説家を目指す方々に向けて、何かメッセージがあればお願いします。
子どもの頃は小説家になりたかったけど、やっぱり才能ないから無理だよね、とその気持ちに蓋をしました。だけど、さっきも言ったような経緯で、もっと本気でやってから諦めてもいいんじゃないかなと思うようになりました。そこからは心を入れ替えて、小説の書き方も自己流で学んだりして書き始めて。それで、今回受賞させていただけたので、諦めなければいつかはなんとかなる日が来ると思っていただきたいです。
――貴重なお話を聞かせていただきました。本作の刊行と次回作も楽しみにしております!