<第4回>社会のなかにひそんでいる「サイコパス」の事例<恋愛編>

サイコパスは凄惨な殺人事件などを起こす人物だけではありません。世のなかにはいろいろなタイプのサイコパスがいます。

本記事では私の経験を含め、身近に潜んでいるサイコパス的要素をもった人のさまざまなエピソードを紹介していきます。

おそらく読者の皆さんも身近に感じるエピソードがあるはずで す。またこれまでは少し嫌な人だと思っていた人が、実はサイコパスである可能性があり、ごく身近に存在しているということを知ってほしいと思います。エピソードに出てくる人物はすべて仮名です。 

結婚を約束したのに、実は自分以外に5人と付き合っていた彼〈29歳・会社員・奈津子さんのエピソード〉

会社員の奈津子さんには2年前から付き合っていた恋人Lがいました。彼は奈津子さんより5つ年上の雑貨のバイヤーです。スタイリッシュでセンスが良くて、奈津子さんとも好みが合いました。付き合い始めて半年経った頃に彼女は「結婚しよう」とLにプロポーズされました。Lはとてもモテる男だったので、奈津子さんは彼と結婚できるなんてと有頂天になっていました。ところがそれは大きな間違いでした。彼はとんでもない男だったのです。お店の先輩から噂話は少し聞いていましたが、Lは気に入った女性がいると片っ端から手をつけていたというのです。奈津子さんはその状況を信じたくありませんでした が、そうやっていろいろな女性と付き合っていたことが分かったのです。実は常に複数の女性と付き合っていたようなのです。

あとから分かったことですが、奈津子さんに、
「結婚しよう」
と言ったときにも、Lはほかに二人付き合っている人がいたようです。そんななかでなぜ奈津子さんに求婚したかというと、さばさばした性格だったため、あまり嫉妬したりしないような「都合のいい女」に見えたのかもしれません。付き合い始めた頃から、あまり不平不満も言わないし、Lの身の回りのことを甲斐甲斐しくやってもいました。

結婚することが正式に決まったとき、奈津子さんの親友にLを紹介しました。するとそれから3カ月後くらいに、なんと親友にまで手を出していました。共通の友達が二人が手をつないで歩いているのを目撃してしまったのです。奈津子さんは彼を問い詰めました。

そうすると驚くべきことにLは、

「おまえと親友だけじゃないよ。モテるんだから仕方ないじゃないか」 と開き直り、平然と言い放ったのです。 奈津子さんはもちろん親友も同様にショックを受けました。Lの女癖の悪さを目の当たりにした奈津子さんは彼を責めても無駄だと諦めたのです。

<解説>
サイコパスの男性のなかには、人当たりが良く女性にモテる人が多いというのをよく聞きます。モテるし行動力があるので、次々と女性と付き合う人もいるようです。ただし、罪悪感がなく、非情な面をもっているため、複数の女性と付き合い、トラブルが起こっても、まったく平然としているような場合があるようです。

SNSでのナンパで複数の女性と逢瀬を重ねるモラハラ旦那〈36歳・専業主婦・京子さんのエピソード〉

夫Mは高学歴で管理職についていて、非常に能力が高い人間でした。しかしプライドも 異常に高く、自分より優れた人に対して常に悪口ばかり言っています。
「あいつは、汚い手を使ったんだ」
と先に出世した同僚をけなします。Mはエリートですが、人一倍コンプレックスが強いのです。

そして京子さんに対しては二言目には、
「なんでおまえはそうバカなんだ」
と言います。京子さんがやったことや言ったことに対して、
「全然違うね」
というのも常套句です。

「俺の稼ぎで食っているくせに文句を言うな」
とも常々言います。 京子さんは夫がいちいち自分の母親と比較するのも嫌に思っていました。そして、自分がいちばん正しいと価値観を押し付けてきて、自分の非を認めないのもいつものことで す。イライラしていると家のなかにあるものに八つ当たりをして壊すこともあります。

自分の上司や先輩、友達に京子さんを紹介するときには
「ほんと、こいつはバカで浅はかなんです」
と人格否定をすることもありました。 そんなあるとき、テーブルの上に置いてある夫のスマホを何気なく見ると、SNSの画像が映っていました。そのまま置いてあるのもあまりにも無防備なのですが、それは出会い系サイトの画像でした。Mが数人とやり取りしている形跡がありました。

京子さんは、
「なんなの、これ」
とMを問い詰めました。すると彼は平然とした顔をして、
「仕事やおまえからのストレスを解消しているんだ」
と開き直ったのです。

<解説>
この男性もサイコパス的性向をもった人間だと考えます。普通は妻に女性関係を問いただされた場合、言い訳をしたり、隠そうとしたり、焦ったりすると思うのですが、彼にはそういう態度がまったく感じられません。人に迷惑をかけたり、悲しい思いをさせたりということに悪びれもせず、なんの感情も湧かないのがサイコパス的性向をもった人の特徴なのです。

交際していた女性の財力にパラサイトして金を手にした男〈30歳・不動産管理・香菜さんのエピソード〉

香菜さんの家族は、旧財閥で数々の会社を所有している名門一族です。一族には実業家、代議士、大学教授、医師、弁護士などがいて、香菜さんの父もある会社の役員です。小学校のときから私立の有名大学の付属校に進学し、そのまま大学に進学しました。

その大学のサークルで知り合ったのが、夫のOです。Oは頭脳明晰で行動力があり、 ルックスも良かったため、常に女性から人気がありました。そのさわやかな笑顔に香菜さんもひかれたのでした。そして彼女はOと約2年交際したあとカナダに留学するため、しばらくの間、遠距離で付き合っていました。夏休みなどには互いにカナダと日本を行き来したりして、交際は続きました。

大学卒業後、Oは商社に入り、香菜さんは銀行に勤めました。それから2年働いたのち二人は婚約しました。

香菜さんは自分の両親にOを会わせました。母は彼の容姿と感じの良さにすっかりOを気に入りましたが、父はどこか気に入らない様子でした。すぐに婚約は早計だと言ったそうです。男親だから娘の結婚に反対するのは仕方がない、時が解決してくれると香菜さんは考えました。

それから半年が過ぎた頃、香菜さんはOの悪い噂を父の秘書から聞かされます。実は、父はOの様子や言動に何か腑に落ちない点があったようで、調査会社に依頼して身辺調査をしていたのです。小学校時代から高校時代まで常にいじめを行っていたこと、大学時代には裕福な家庭の女性数人と付き合い、借金をしたり妊娠させてしまったことがあるなど、にわかに信じがたいことを香菜さんは聞かされました。金が手に入らなくなった瞬間、女性とは別れるというのを繰り返していたというのです。でも、Oは香菜さんに優しく尽くしてくれたため、彼女はなんとしてもOと結婚したいという気持ちが強くなりました。父は当然、猛烈に結婚には反対しています。

そんなある日、香菜さんはOから海外の大学に留学して勉強をし直したいのでついてきてくれないかともちかけられます。父が結婚に反対している現状をこのままでは打開できないと考え、駆け落ち同然で海外に行ってしまったのです。

それから半年が過ぎ、留学先でOは学生生活を送っていましたが、仕事を見つけようと もせず、大学の授業料や生活にかかる費用はすべて香菜さんに頼り切っていました。香菜さんが親から与えられていた不動産の収入でやりくりしながら暮らしていたのです。そして香菜さんが少しでも不満を口に出すと、Oは「おまえのほうが金をもってるんだから当たり前だろう。足りないなら、おまえの親からもらってこいよ」と言う始末です。香菜さんは彼への不満は溜まっていく一方でしたが、駆け落ち同然で海外に来てしまったため簡単に日本には戻れないと悩んでいるのでした。

<解説>
Oの所業はまさにサイコパスのものといえると思います。香菜さんをはじめ、裕福な家庭の女性に目をつけ、寄生して自分は楽をするということを繰り返しているのです。女性側の財力をあてにして、金が手に入らなくなれば切り捨てて次の女性にいくというまともな人間はできないようなことを平然とできてしまうのです。女性を自分が楽をして生きるためのただの道具としてしか扱わない、まさに人の痛みが分からないサイコパスなのです。

本記事では社会のなかにひそんでいる「サイコパス」の事例<恋愛編>を紹介しました。本著ではこの他に多くの事例を記しています。ぜひご覧ください。

あなたを殺すサイコパス
あなたを殺すサイコパス松井 住仁-Matsui Junin-

偽りの仮面を被り、
すぐそばであなたを狙っている――。


同僚や友人、家族……
人の心をもたないサイコパスを見極め、
身を守る方法を手に入れる


サイコパスと聞いて多くの人がイメージするのはチェーンソーなどを使い
平気で人を殺すホラー映画の登場人物や、
無差別に大量虐殺を行うような殺人鬼といった人物ではないでしょうか。
しかしサイコパスとは残虐な殺人を行う人のことだけを指しているのではありません。
彼らの特徴として「冷淡であり共感性が欠如している」
「良心に乏しく罪悪感を覚えることがない」「病的な虚言がある」などが挙げられます。
程度の差こそあれ、これらの特徴に当てはまる人は多く存在しているはずです。
さらにこれらが当てはまる人は経営者や弁護士など、
社会的地位の高いとされる人にも多いといわれているのです。
本書は著者が右腕として信頼していた人物がサイコパスだったため
被害に遭ってしまったという自らの経験から、
仮面を被り偽っている彼らにどう対処していくかを
世の中の人に伝えたいと考え執筆しました。
著者の医学的見地からサイコパスの正体に迫ることで、
同僚や友人、家族など自分自身のそばにサイコパスが潜んでいることを知ってもらい、
トラブルから身を守るための方法を学ぶことのできる一冊です。