<第2回>プーチンは「サイコパス」か?古今東西世界のサイコパス

サイコパスのなかには、表の顔の性質を活かし、世のため人のために働き、社会に利益をもたらす人がいます。ところが、そういう人のなかには、権力を握った途端に表の顔から裏の顔へと豹変し、独裁者として君臨するケースが世界の歴史上では散見されます。

自分と考えの合わない人や自分の地位を脅かすような優秀な人材を潰したり殺したりしてのさばるのです。最初は国家のため、国民のためと力強く言い放ち、実際、有能に働きますが、最初からすべては自分のためでしかないので要注意です。

本記事ではサイコパス的性向を持つ歴史的な独裁者の事例を紹介していきます。

権謀術数を重ねて、権力を握るようになったロシア・プーチン大統領

現在ウクライナへの侵攻で権勢を振るうロシアのプーチン大統領はその典型のように思います。

2022年(令和4年)3月17日の朝日新聞デジタルの記事によると、ロシア国営ノーボスチ通信が動画サイト「RUTUBE」で配信した動画のなかでプーチンは「ロシア民衆は真の愛国者たちと裏切り者を区別できる。たまたま口の中に入ったハエのように、奴ら(裏切り者)を吐き出すだけだ」と同年3月16日に参加したテレビ会議で言い放ちました。

私はこの言葉をニュース映像で見たときには戦慄しました。まさに常軌を逸したサイコパスの言動ではないかと感じたのです。このように一国を掌握してやりたい放題やることが、悪のサイコパスの到達点であるようにも思えてきます。

サイコパスは相手の気持ちを理解することができません。そのため勝つためならば手段を選ばずなんでもする傾向があります。たびたびニュースにもなっていますが、プーチンが核兵器を使用する可能性は大いにあり得ると考えています。

サイコパス的性向を発揮して出世した世界の歴史上の権力者たち

紀元前3000年頃からはエジプト、メソポタミア、黄河、インダスの4大文明が繁栄するのに端を発し、さまざまな文明が派生していきます。そのあと、民族の移動が至るところで起こったため、ほかの土地に住む人たちへの侵略や戦争が起こり、それを指揮する指導者が登場し続けたのは当然といえます。

サイコパス的性向のプラス要素を発揮し、民衆から支持される勇敢な戦士がいた反面、彼らとは反対に、マイナスのサイコパス的性向を出す「王位継承者」が存在しました。

この地位は基本的には世襲ですから、特に何の苦労もせずに代々、権力の座につくことができます。もちろん他国と戦争を起こし、勝てば勢力を拡大し、負ければ処刑されることもあるわけですが、歴史の始まりの頃は、そんな王族同士の争いが絶え間なく行われ、そこには数々の暴君が存在しました。本書では、サイコパスな王位継承者である「5代目皇帝ネロ」と「ルイ14世」について解説しています。

11世紀にはサイコパスが重んじる「共同体への帰属心、忠誠心」や「権威への尊重」、「神聖さ清純さを大切に思う信仰」を発揮して勇躍、戦いに挑んだ「十字軍」、13世紀には民族愛、家族愛がある一方で、戦乱では大量虐殺も行った、モンゴル帝国を作り上げた「チンギス・ハーン」、中世以降のヨーロッパでは4万人が犠牲となった「魔女裁判」なども行われていました。

近代初期(15世紀)の戦乱の世のなかは好戦的なサイコパスたちが暗躍していた時代だといえます。君主たちは自分の威信や自己中心的な都合のための中央集権を実現しようと借金をしたり、教会の財産を没収したり、直轄領を処分したりなど、非情なことをして戦費を調達したといいます。

15世紀末から16世紀、大西洋を経由して海外へ進出するヨーロッパの国々が増え始めます。先住民を虐殺するという残酷なサイコパス的性向をもった人たちもいました。さらに17世紀初めにはヨーロッパとアジアとの直接貿易はさらに進展し、植民地活動も活発化しました。植民地活動を指揮したのもサイコパス的戦士の遺伝子をもっていた人であるはずです。

20世紀に入ると帝国主義を剥き出しにした世界中の列強国は勢力を拡大。植民地や従属地域を支配下にしていくという帝国主義に見られる行為は、まさにサイコパス的性向だといえます。そして結果的にサイコパスの権力欲がぶつかり合い、2つの大きな世界戦争が繰り広げられることとなります。

ごく最近では、社会的影響力、恐れを知らない度合い、ストレス耐性、自己中心性、感情移入をしない度合い、服従しない力、無責任さ、冷酷さではドナルド・トランプ前アメリカ大統領のサイコパス度が高く、近年に登場した指導者のなかでは、過激な発言やパフォーマンスが目立ち、サイコパス的性向をもっている印象を受けます。

こうした世界の歴史的サイコパスの事例を本書では詳しく解説しています。

日本建国から現在までのサイコパス

日本にもサイコパスだと推察される権力者は多く存在しています。

ただ、日本の場合は応仁の乱、戊辰戦争など大きな戦争が国内でさまざまあったものの、国際社会に巻き込まれる以前は、大量殺戮があったという事実は聞いたことがなく、残虐な行為を行うサイコパスが存在していたかどうかは定かではありません。

卑弥呼の邪馬台国の時代から、古墳を権力の象徴にしていた大王の時代、そして豪族の時代と時が流れていくなかで、良きにつけ悪しきにつけサイコパス的性向をもった人々が指導者として跋扈していたと思います。時代の変わり目、権力の移り変わる時期には、サイコパスが出現した可能性があります。

鎌倉時代の源義経は自己顕示欲が強く、人の心に配慮できない自己中心的な人物であり、室町幕府時代の6代将軍、足利義教はサイコパスの呼び声が高い人でした。また、戦国時代の織田信長は彼の性格を言い表した「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」という歌はそのサイコパス性がよく表現されています。その部下である豊臣秀吉も、権力者のサイコパスにありがちなマイナスの行動です。

明治時代への架け橋となった数々の幕末の志士たちもサイコパス的性向をプラスに発揮していたのだと思います。討幕に向かって血気盛んで危険を顧みずに行動できた幕末の志士たちは、まさに戦士の遺伝子をもつサイコパスが多かったはずです。

時の権力者たちは、古今東西、革命やクーデターなどをきっかけに名声を高め、英雄として国民から絶大な支持を受けるものの、その多くは結局、独裁者となり大量殺戮や戦争に走り、国家と国民、他国と他国民に大きな損害を与えます。好戦的な国家を操る独裁者サイコパスを許してはならないのです。

あなたを殺すサイコパス
あなたを殺すサイコパス松井 住仁-Matsui Junin-

偽りの仮面を被り、
すぐそばであなたを狙っている――。


同僚や友人、家族……
人の心をもたないサイコパスを見極め、
身を守る方法を手に入れる


サイコパスと聞いて多くの人がイメージするのはチェーンソーなどを使い
平気で人を殺すホラー映画の登場人物や、
無差別に大量虐殺を行うような殺人鬼といった人物ではないでしょうか。
しかしサイコパスとは残虐な殺人を行う人のことだけを指しているのではありません。
彼らの特徴として「冷淡であり共感性が欠如している」
「良心に乏しく罪悪感を覚えることがない」「病的な虚言がある」などが挙げられます。
程度の差こそあれ、これらの特徴に当てはまる人は多く存在しているはずです。
さらにこれらが当てはまる人は経営者や弁護士など、
社会的地位の高いとされる人にも多いといわれているのです。
本書は著者が右腕として信頼していた人物がサイコパスだったため
被害に遭ってしまったという自らの経験から、
仮面を被り偽っている彼らにどう対処していくかを
世の中の人に伝えたいと考え執筆しました。
著者の医学的見地からサイコパスの正体に迫ることで、
同僚や友人、家族など自分自身のそばにサイコパスが潜んでいることを知ってもらい、
トラブルから身を守るための方法を学ぶことのできる一冊です。