どうしたら会社や上司に評価されるのか。そう考えたことがある人は多いのではないでしょうか。

働き方や組織づくりに関する書籍を多数執筆してきた越川慎司氏は、「評価は運に左右される」とのこと。と語ります。では、何を目指せばいいのか。その答えが「期待される人になること」です。

新刊『会社から期待されている人の習慣』では、815社・17万3000人の調査をもとに、「期待されている人」の行動を115の習慣として言語化。なぜ評価ではなく期待に着目したのか。その背景と実践方法などについてお話を伺いました。

「期待」とは何か

多くの人は、「評価される人とはどんな人か」を気にしていると思います。今回の著書では「評価」ではなく「期待」にフォーカスされていますが、その理由を教えてください。

出世や人事評価は、正直なところ運や巡り合わせなど「環境」に左右される部分が大きいんです。たとえば70歳まで働くことを考えたとき、出世だけを目標にすると苦しくなってしまう。
一方で「期待」は、報われることや感謝されることを一つにまとめた概念です。

とはいえ、「期待」は「評価」に比べて見えにくい印象もあります。

期待には「期待する」と「期待される」の2つの側面があります。
たとえばお客様から「ありがとう」と言われるのは、相手の期待に応えられたときですよね。
つまり、期待される人とは、相手の期待を正しく捉え、それに合わせて行動できる人なんです。

信頼を積み上げて「環境」を手に入れる

「期待されている状態」は、どのように評価につながるのでしょうか。

評価されている人を見ていくと、良い上司や良い環境にいるケースが多いんです。つまり能力だけでなく、環境の影響も大きい。

上司との関係は自分だけでは変えにくい部分もありますよね

だからこそ、今いる上司や顧客との関係の中で、少しずつ信頼を積み上げていくことが大切です。それが信用に変わると、仕事を任されるようになり、「抜擢」という機会が生まれます。

僕はこれを、信頼を積み上げるゲームのようなものだと考えています。

「ゲーム」という表現はイメージしやすいですね。

環境が変わると、自然と成果も出しやすくなります。本書で伝えたかったのは、「評価されやすい環境」をつくる具体的な方法なんです。

「当たり前」を言語化する

今回の調査では何を明らかにしようとしたのでしょうか。

「期待されている人」たちが、日頃どんな行動をしているのかを徹底的に調べました。
その中で見えてきたのが、「当たり前のことを当たり前にやるのが一番難しい」という事実です。こういった当たり前のことほど、意外と誰も言語化していないんですよね。

確かに、抽象的なままだと実践しにくいですね。

そうなんです。「感じの良い人になりましょう」と言われても具体的に何をすればいいかわからない。
それをたとえば「挨拶の声が63デシベル以上」とか「エレベーターでボタンを押す」といった形で行動を言語化しました。
見える化することで、初めて実践できるようになるんです。

効果が出やすいのは中堅層

著書では、先ほど例に挙げられたような習慣行動が115個紹介されています。一見すると若手向けの内容にも感じますが、どのようなターゲット層に向けた本でしょうか。

幅広い層に読んでいただきたいですが、実は30代〜40代半ばの中堅層におすすめです。
新人の方にこの内容を見せても、あまり疑問を持たないんですよ。でも僕が求めているのは、むしろ反発や摩擦なんです。
スポンジのように何でも吸収する人よりも、コンクリートのように固まっている人のほうが、実は効果が高いんですよね。

ある程度経験を積んだ方に「挨拶をしましょう」「雑務をやりましょう」と伝えると、反発もありそうですね。

ありますね。実際に反発されたこともあります(笑)。
実際、ある企業では50代の方にタバコ部屋に呼ばれて、2時間説教されました(笑)。「努力と徹夜でやってきたのに、なんで口角を上げなきゃいけないんだ」と。
ただ、「115のうち1つでいいので試してみてください。合わなければやめていいので」とお願いしたんです。
すると翌月、また呼ばれて「意外と良かったよ」と言われました。

多くの人は、年齢を重ねるほど新しいことを取り入れることが難しくなるのではないでしょうか。

僕は50代ですが、我々のような世代は、「意識」を変えてから「行動」を変えるのは難しいんです。
逆なんですよ。まず「行動」を変えると、「意識」が後からついてきます。だからこそ「意識」ではなく「行動」から変えていく必要がある。
この本は「こうするべき」ではなく、「行動実験のネタ集」として使ってほしいんです。

期待されるリーダーとは?

期待というのは、必ずしも上司からだけ向けられるものではありませんよね。部下から期待されるリーダーになるには、どうすればいいのでしょうか。

「委任できるかどうか」だと思います。
任せると言いながら見ないのは「放任」ですが、「委任」は信頼を前提に見守ることです。

仮説を立てた上で、何ができて、どこを任せられるかを考え、任せてみてうまくいかなければサポートに入る。これが期待されるリーダーだと思います。

上に対しても下に対しても信頼を積まなければいけない中間管理職は大変な立場ですよね。

実際に調査をすると、70%以上の方が中間管理職になりたくないと答えています。でも僕はなることをおすすめしていますし、実際にやって良かったと思っています。

それはどうしてですか?

自分が成長するよりも、部下が成長したほうが嬉しいですし、チームで成果を出すことのほうが価値が大きいからです。達成感や周囲から認められる実感も得られますし、結果として期待される機会も増えていく。
そもそも管理職は、一定の信頼や評価を得た人に任されるものです。その状態までは持っていったうえで、引き受けるかどうかは自分で選べばいい。選択肢は多いほうがいいと思います。

運をつかむポイントは行動量と機嫌の良さ

ここまでお話を伺っていると、期待される人というのは、いわゆる「運が良い人」とも重なってくるように感じました。

そうなんです。冒頭でもお話ししましたが、出世や評価には運の要素も大きいんです。
アメリカの教育心理学者であるジョン・D・クランボルツ博士も、キャリアの8割は偶然の出来事で決まると言っています。

どんな人が、その運をつかむのでしょうか?

「行動量が多く機嫌が良い人」ですね。
運というのは他人が運んでくることが多いので、できるだけ機嫌良くしていたり、積極的に外に出ていろいろな人に会っている人のほうが、チャンスは増えていきます。
そして、目の前に来た運に気づいて取りにいけるかどうかも大事です。ここでもやはり、行動量がものを言うんだと思います。

「挑戦」ではなく「実験」と捉える

紹介されている115の習慣を実践してみたいという方に、何かアドバイスをいただけますか?

まず、「挑戦」しようと思わないでください。「挑戦」と考えると成功や失敗が気になってしまうので、「実験」だと思ってほしいんです。
一つ選んでやってみて、良ければ続ける。合わなければ別のものを試す。そのくらいの感覚で「実験ゲーム」として楽しんでいただければと思います。

どれから始めるといいか迷っている方は、どう選ぶといいでしょうか?

自分の直感でいいと思います。115個の中から気になるものを日替わりで試してみて、その中で効果があったものをたとえば15個くらい選び、1年間続けてみる。このやり方がおすすめです。

習慣化するコツはありますか

習慣化するためには、「意志に頼らず時間と場所を決めること」は一つです。
たとえば本を読むなら、「読めるときに読む」ではなく、「起床時と寝る前に5分」「通勤中に20分」といったように、タイミングを固定するほうが続きやすいです。

もうひとつは、「今ある習慣に組み合わせること」です。
たとえば僕は、トイレの後にスクワットを5回するという習慣が続いています。2週間ほどで、やらないと逆に気持ち悪くなるようになりました。

それも「実験」のひとつですね。

そうなんです。まずは試してみて、良ければ続ける。合わなければやめる。そのくらいの気軽さでいいと思います。

「実験」や「ゲーム」だと思うと、取り組みやすくなりそうです。最後に読者の方へメッセージをお願いします。

この本はチェックシートのような感覚で楽しんでいただければと思います。
ただ、「もっと頑張ろう」とは思わないでほしいんです。頑張る量を増やすのではなく、やり方を変える。

数分の「実験」を積み重ねることで、結果は大きく変わっていきます。

その中で「意外と良かった」と思える習慣が見つかれば、ぜひ周りにも共有してみてください。

越川慎司
越川 慎司
Shinji Koshikawa

株式会社クロスリバー代表取締役。
国内外の通信会社に勤務した後、マイクロソフトで役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者を歴任。2017年に株式会社クロスリバーを設立。世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の業務改善を支援。著書34冊、累計部数130万部、SNSフォロワー200万人。講演・講座年間300件以上。NHKやTBS、テレビ東京、PIVOTなどメディア出演多数。