「最近どう?」という何気ない問いかけや、良かれと思ってかけた言葉が、部下のモチベーションに影響を与えているとしたらどうでしょうか。
成果を出し続け、周囲から信頼を集めるリーダーたちは、多くの人が無意識に行っているコミュニケーションとは異なる「型」を持っています。
本記事では、期待されるリーダーたちの行動に共通するマネジメントの習慣を、データに基づいて整理していきます。
※本記事は『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』より一部抜粋・編集しています。
「褒める」よりも「認める」ことで、部下は自走し始める
部下への声かけ一つで、行動の質や意欲は大きく変わります。
「褒める」と「認める」の違い
期待されているリーダーの58%は、「褒める」と「認める」を使い分けています。
- 褒める: 成果や能力を称える(「すごいね」「優秀だね」)
- 認める: 行動やプロセスに価値を見出す(「助かったよ」「あの時の対応、良かったよ」)
多くのリーダーが「部下を褒めて伸ばそう」と努力していますが、実は落とし穴があります。調査によると、称賛されるよりも「行動を認められる」方が、社員の満足度は34%も高いという結果が出ているのです。
行動を認めることで意欲が高まる
成果だけでなく日々の行動を認めることで、部下は「見てもらえている」という感覚を持ちます。
実際に、行動を認められたと感じた社員は、会議での発言数が20%以上増え、顧客への提案件数も15%向上するなど、明らかな変化を見せているのです。
「リーダーの「沈黙」が部下の発言を41%増やす
話すことだけでなく、「話さないこと」も重要なマネジメントです。
話しすぎが機会を奪う
期待されているリーダーの86%は、自分の発言量を意識的に振り返っています。
「会議で部下から意見が出ない」と嘆くリーダーほど、実は自分自身が話しすぎている傾向にあります。
上司が話し続ける会議では、参加者の発言数は34%も減少するというシビアなデータが存在します。
「待つ」ことで対話が生まれる
また、彼らが大切にしているのが以下のような「待つ」技術です。
- 質問後に10秒待つ(相手が考える時間を尊重する)
- 相手の発言後に1秒置く
これだけで、部下の発言量は68%も増加します。リーダーにとっては短い沈黙でも、部下にとっては「自分の言葉を待ってくれている」という信頼の証になるのです。
1on1の質を上げる具体的な問いかけ
曖昧な問いは、対話の質を下げてしまいます。
「最近どう?」が機能しない理由
1on1(個人面談)の冒頭で「最近どう?」と聞いていませんか? 実はこれ、若手社員が最も「モチベーションを下げる言葉」の1位です。
1on1の場での曖昧な質問は、部下にとって意図が分かりにくく、対話が深まりにくくなります。
具体的な問いが対話を変える
デキるリーダーは曖昧な質問を避け、以下のように徹底した「事前確認」と「具体的質問」を行います。
事前に議題を確認する: 「話したいこと」「相談したいこと」をあらかじめチャット等で聞いておく
具体的な出来事に基づいて質問する: 「あの会議の発言、良かったね。その後どうなった?」と、観察に基づいた質問を投げる
「あなたに興味がある」というメッセージを具体的な問いに込めることで、部下は初めて心を開き、対話は格段に濃いものへと変わります。
「悪い報告」に感謝し、「なぜ」ではなく「いつ」を問う
トラブルが発生した際、リーダーの第一声がチームの運命を左右します。
初動の言葉が環境をつくる
期待されているリーダーの63%は、問題報告に対してまず受け止める姿勢を示しています。これは一般リーダーにおける比率の4.8倍です。
責められないと確信できる環境では、報告の初動が早まります。結果として、トラブル対応時間は74%も短縮されるのです。
「なぜ」ではなく「事実」を問う
また、状況を確認する際にもコツがあります。 「なぜ(Why)」と聞くと、部下は責められていると感じ、言い訳(解釈)を探し始めます。
一方、「いつ(When)」「何が(What)」といった事実ベースの問いに変えることで、建設的な確認が可能になります。
「やりたい人」を募り、強みを言語化する
仕事の任せ方によって、チームの動き方は変わります。
自発性を引き出す任せ方
仕事を割り振る際、「誰がやるか」ではなく「誰がやりたいか」を軸にすることで、主体的な行動が生まれます。
自発的に手を挙げた業務は、指名された業務に比べて期限遵守率1.3倍も高くなるからです。
強みを具体的に伝える
さらに、期待されるリーダーは部下本人よりも、その人の「強み」を具体的に語ることができます。 「〇〇さんは真面目だね」といった抽象的な表現ではなく、「複雑な情報を構造化して説明するのが得意だね」と、行動レベルで言語化して伝えます。
自分の強みを正しく認識し、それを活かせる仕事を任された部下は、働きがいが1.3倍に向上し、離職率も低下することが分かっています。
「未来への「期待」を込めたフィードバックの力
フィードバックは、過去だけでなく未来に向けて行われます。
ポジティブと改善のバランス
期待されているリーダーは、部下へのフィードバックのうち、ポジティブなものが66%、ネガティブなもの(改善)が34%であることがわかりました。
一般のリーダーが懸念する「期待がプレッシャーになる」という不安とは裏腹に、期待を伝えた方が提案件数は38%も向上するという結果が出ています。
行動と影響をセットで伝える
「行動」と「その結果」をセットで伝えることで、部下は自分の役割や影響を理解しやすくなります。
「あなたが会議で最初に発言してくれたことで(行動)、他のメンバーも意見を言いやすくなったよ(影響)。次も期待しているね」
これにより部下は自分の行動の意味を理解し、自発的に改善へ動くようになります。
「頑張れ」といった抽象的な言葉を避け、具体的な行動レベルでアドバイスを贈る。この未来志向の関わりが、部下の自己効力感を高め、組織の成果を最大化させるのです。
「失敗をさらけ出し、手柄を譲る「覚悟」
完璧なリーダーを目指す必要はありません。むしろ、自分の失敗談を「失敗図鑑」のように社内で公開しているリーダーほど、部下からの信頼は厚くなります。
失敗を許容する環境をつくる
上司が自らの失敗を共有することで、部下も「挑戦して失敗してもいいんだ」という心理的安全性を感じることができるのです。
また、期待されているリーダーの 89%が、部下たちの失敗を自分の責任として引き受けた経験があることがわかりました。これは一般リーダーにおける比率の1.6倍です。
責任と成果の扱い方
仕事を丸投げする「放置」ではなく、成果を明確にして伴走する「委任」を徹底し、成功の手柄は部下に譲ります。この姿勢は部下からの評価を1.5倍に高めるだけでなく、管理職志望者を増やすほどの影響力を持ちます。
失敗を責めると部下は挑戦しなくなるが、失敗を引き受ければ部下は安心して挑戦できる。覚悟をもったリーダーたちが、部下たちの可能性を広げていたのです。

